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ノア・アーク ― 神々と人が生きる方舟 ―  作者: ヤノチャン
五章 三極対峙

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書きかけの宇宙


ー 書きかけの宇宙 ー


今日は生誕祭。


ノアも各コロニーも祝賀の灯りに包まれている。

そして珍しく、神帝にも休みが与えられていた。


だが、神帝アイズは祝祭の輪にいなかった。


自室の静かな机に向かい、ただペンを走らせている。


彼の趣味は、小説を書くこと。


誰にも見せない、売り出しもしない、評価も求めない。


ただただ書き留めるだけ。


主役"宇宙空母ノア"


だがそれは、現実のノアとは少し違う。


戦いの記録ではないし神帝たちの武勇伝でもない。


もっと静かで、もっともっーと深い物語…


星と星のあいだで揺れる感情、選ばれた者の孤独、守ることの意味…などなど


まぁどうでもいい…


その内容は、彼だけの秘密。


アイズは一文を書き終え、ふと手を止める。


「……もしも」


小さく呟く。


もしも違う選択をしていたら、もしも神帝でなかったなら…


ペン先が止まる。


「んー、どーしよ…」


そこへ、静かなノック。


「アイズ様。大神官チルドでございます」


凛とした女性の声。


「開いてるよ!」


扉が開く。


大神官チルド。

常に冷静で、常に忠実。

アイズに仕える剣であり盾でもある存在。


「休日申し訳ありませんがお手合わせをお願いしたく…」


迷いのない眼差し。


アイズはペンを置く。


「……今日は休みだよ〜、はぁ、どーしようかな?」


「承知しております。ですが…」


一瞬、柔らかく微笑む。


「アイズ様は、悩みが深まると筆が止まりますので…」


図星だった。


アイズは小さく息を吐き、立ち上がる。


「思考読まれてるね…(笑)まぁ、いいよ!やろうか…」


ー 訓練場


人工重力がわずかに上げられ、空間が張り詰める。


アイズの構えは静かで無駄がない。


チルドの踏み込みは鋭い。


金属音が響く、祝祭の裏で、刃が交わる。


だがそれは敵意ではなく信頼の応酬。


何十合か打ち合い、最後はアイズの刃がチルドの喉元で止まる。


「んっ……参りました」


チルドは膝をつく。


アイズは手を差し出す。


「チルドちゃん腕を上げたね…」


「アイズ様…まだまだでございます…」


アイズは自室へ戻り再び机へ。


ペンを握る、今度は迷わない。


先ほどまで書けなかった一文が、自然と流れ出す。


― ノアは進む。

誰にも知られぬ想いを、その艦体に抱えながら。


アイズは静かに微笑む。


外では祭りの歓声が響いている。


だが彼にとっての生誕祭は、ここにあった。


刃を交え、心を整え、そしてまた、物語を書く。


神帝でありながら、ひとりの書き手でもある男。


今日もまた、誰にも知られぬ物語が一ページ進んだ。


(続)


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公開情報


・レイン・チルド 二十歳 女性 from水星

 神帝アイズに遣える大神官

 ギフト"神意同調シンクロ・ディヴァイン"



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