金星の誓い、土星の迎え
ー 金星の誓い、土星の迎え ー
黄金の大気を裂き、傷ついた艦隊が降下していく。
数千艦を誇ったキング艦隊。
そのうち五百艦は帰らなかった。
軌道上には、喪章を灯した護衛艦が整列する。
金星全土の都市が照明を落とし、空へ光を向ける。
それは星葬ではない。
“星へ還す光”。
ー 追悼式典
金色の雲海を背に、神帝キングが立つ。
玉座ではない。
装飾もない。
ただ、一人の王として。
「お前達…よく戦った…よく帰った、ありがとう…」
低く、重い声。
「そして、帰れなかった者たちへ―」
空へ掲げられる剣。
同時に、軌道上から光柱が放たれる。
金星全土の民が黙祷する。
戦死者約三千。
名が、一つ一つ読み上げられる。
キングは目を閉じない。
最後まで聞き届ける。
王は珍しく涙を流す。
やがて、キングは前を向く。
「我が艦隊は壊れた。だが、折れてはいない…」
静まり返る大地。
「船は造れる。
武器も、時間も、金もどうとでもなる」
拳を握る。
「だが、お前たちは二度と戻らぬ、ゆえに誓う」
声が金星全土へ響く。
「我はキング艦隊を再建するぞ!ただの数ではない
“守れる艦隊”としてだ!」
民衆から、静かな、しかし力強い声が上がる。
王は背を向けない。
最後までそこに立ち続ける。
ー 土星 ― 帰還
環をくぐり、傷ついたサターン艦隊が母星へ入る。
失われた六十艦。
死傷者約一千。
規模は違えど、その重みは同じ。
王宮前の広場。
整列した兵士たちの前に、神帝ジュウが立つ。
そこへ現れるのは――
土星王
年老いているが、威厳は衰えない。
王はゆっくりと階段を降りる。
「帰ったか、我が可愛い娘よ…」
ジュウは膝をつく。
「父上…大きな被害を出しました…」
王は首を振る。
「違う…止めたのだ。宙帝を…帝神を」
一瞬、沈黙。
「よくやった…」
土星王は優しく娘の頭を撫でる。
王はジュウの肩に手を置く。
「無理をしたな…」
ジュウは視線を落とす。
「初めて押されました。ムーン様がいなければ…今頃私は…」
王は静かに言う。
「借りは返せばよい。だが、生きていなければ返せぬ」
ジュウは小さく頷く。
「はい」
王は環を見上げる。
「また次期来るであろう…宙帝も、帝神も―」
ジュウの瞳が鋭くなる。
「今度は、押し返します!」
王はわずかに笑う。
「それでこそ我が娘だ…」
それぞれの夜
金星では再建計画が始動する。
土星では艦隊整備と戦術再編が進む。
そして宇宙のどこかで
断界と星葬が傷を癒している。
戦いは終わらない。
だが今は、弔いの時間。
(続)




