裁きは折れず
ー 裁きは折れず ー
地球・某所 神軍総合病院。
最上階の特別霊療室。
窓の外には、青い空。
その下に広がる都市。
白い包帯が胸元に巻かれたまま、
大神官エンマは静かに立っていた。
視線は空へ。
遠く、かすかに感じる地の国の霊脈。
拳がわずかに震える。
「……背後からとはな」
低い声。
悔しさが滲む。
「未熟だ」
己への怒り。
その瞬間、空がわずかに揺らぐ。
重厚な気配が二つ。
病院の結界を震わせながら、廊下に足音が響く。
扉が開く。
金のマントを翻す男。
金星の王―神帝キング。
その隣には、蒼と紫を纏う木星皇女――神帝ジュウ。
キングが先に口を開く。
「心配したぞ」
低く、だが柔らかい声。
ジュウも続く。
「裁きの柱が揺らいだと聞いた時は、肝が冷えた」
エンマは振り返らない。
「……来る必要はなかった」
キングが鼻で笑う。
「嘘をつけ」
数秒の沈黙。
エンマがゆっくり振り返る。
その目は、すでに燃えていた。
「傷は浅い」
包帯に手を当てる。
「この程度、なんともない」
空気が変わる。
室内の霊圧が一段上がる。
床のタイルがわずかに軋む。
ジュウの目が細まる。
エンマの背後に、巨大な裁きの幻影が立ち上がる。
「我が直接―」
その声は静かだが、震えない。
「ガランに裁きを与える」
覇気が爆ぜる。
窓ガラスが共鳴し、カーテンが大きく揺れる。
廊下にいた医官達が思わず足を止める。
だがキングは、ただ笑った。
「その顔だ」
ジュウも小さく頷く。
「折れてはいないな」
エンマはまっすぐ二人を見る。
「裏切りは許さぬ」
「裁きは、必ず下る」
その言葉に迷いはない。
キングが肩を叩く。
「無理はするな」
「だが、復帰したら呼べ」
ジュウも静かに言う。
「次は正面からだ」
エンマの口元がわずかに上がる。
「当然だ」
青空の下。
裁きの柱は、折れていなかった。
それを確認し、
金星王と木星皇女は静かに安堵する。
戦いはまだ終わらない。
だが――
地球の裁きは、生きている。
四章・完
五章へと続く




