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ノア・アーク ― 神々と人が生きる方舟 ―  作者: ヤノチャン
四章 神格境界

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裁きは折れず


ー 裁きは折れず ー


地球・某所 神軍総合病院。


最上階の特別霊療室。


窓の外には、青い空。


その下に広がる都市。


白い包帯が胸元に巻かれたまま、

大神官エンマは静かに立っていた。


視線は空へ。


遠く、かすかに感じる地の国の霊脈。


拳がわずかに震える。


「……背後からとはな」


低い声。


悔しさが滲む。


「未熟だ」


己への怒り。


その瞬間、空がわずかに揺らぐ。


重厚な気配が二つ。


病院の結界を震わせながら、廊下に足音が響く。


扉が開く。


金のマントを翻す男。


金星の王―神帝キング。


その隣には、蒼と紫を纏う木星皇女――神帝ジュウ。


キングが先に口を開く。


「心配したぞ」


低く、だが柔らかい声。


ジュウも続く。


「裁きの柱が揺らいだと聞いた時は、肝が冷えた」


エンマは振り返らない。


「……来る必要はなかった」


キングが鼻で笑う。


「嘘をつけ」


数秒の沈黙。


エンマがゆっくり振り返る。


その目は、すでに燃えていた。


「傷は浅い」


包帯に手を当てる。


「この程度、なんともない」


空気が変わる。


室内の霊圧が一段上がる。


床のタイルがわずかに軋む。


ジュウの目が細まる。


エンマの背後に、巨大な裁きの幻影が立ち上がる。


「我が直接―」


その声は静かだが、震えない。


「ガランに裁きを与える」


覇気が爆ぜる。


窓ガラスが共鳴し、カーテンが大きく揺れる。


廊下にいた医官達が思わず足を止める。


だがキングは、ただ笑った。


「その顔だ」


ジュウも小さく頷く。


「折れてはいないな」


エンマはまっすぐ二人を見る。


「裏切りは許さぬ」


「裁きは、必ず下る」


その言葉に迷いはない。


キングが肩を叩く。


「無理はするな」


「だが、復帰したら呼べ」


ジュウも静かに言う。


「次は正面からだ」


エンマの口元がわずかに上がる。


「当然だ」


青空の下。


裁きの柱は、折れていなかった。


それを確認し、

金星王と木星皇女は静かに安堵する。


戦いはまだ終わらない。


だが――


地球の裁きは、生きている。


四章・完

五章へと続く



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