届いた報せ
ー 届いた報せ ー
海王星宙域。
神々の集いは閉幕したが、神帝達はまだ撤収準備の最中だった。
ノア艦橋。
ヒメナが各地域との通信整理をしている。
その時―
「緊急回線、地の国より!」
オペレーターの声が響く。
シャルルが振り向く。
「繋げ」
ホログラムに映るのは、損壊した人工惑星“地の国”。
煙が上がり、外殻の一部が崩壊、次の瞬間自爆する…
「…これは」
ヒメナの声が低くなる。
通信士が報告する。
「大神官エンマ、背後から刺突を受け重傷。現在は一命を取り留め、集中治療中」
艦橋が凍りつく。
「刺された……?」
キングが眉をひそめる。
続報が入る。
「内部暴動発生。複数の凶悪犯が脱獄」
「脱出艦は外宇宙へワープ。追跡不能」
タカヤの拳がゆっくりと握られる。
「首謀者は」
数秒の沈黙。
「映像送信します」
ホログラムが切り替わる。
一人目。
副官、地の国No.2 ガラン。
無機質な瞳。
そして二人目。
長い黒髪、鋭い視線。
軍学校時代の記録写真。
ユーイ・ロン。
艦橋の空気が止まる。
タカヤの視線が固まる。
「……ユーイ……?」
ヒメナも言葉を失う。
「あの……ユーイ?」
軍学校主席。
常にタカヤと並び、競い合った存在。
「確認済みです」
通信士が淡々と告げる。
「ガランと共に脱出。ダヴィンチ派と合流の可能性大」
アイズが低く言う。
「完全に向こう側だな」
タカヤは何も言わない。
ホログラムの中で、ユーイは冷静な表情をしている。
あの頃と同じ、迷いのない目。
ヒメナが静かにタカヤを見る。
「……知ってた?」
「いや、卒業後、政府軍に入隊したという事までしか…」
短い答え。
だがその声はわずかに重い。
ルシファーが後方から呟く。
「ほう。因縁か」
誰も返さない。
艦橋に沈黙が落ちる。
地の国崩落。
大神官エンマ重傷。
脱獄。
そしてユーイ・ロンの離反。
ヒメナが静かに指示を出す。
「全データ解析。ダヴィンチ派の進路予測を再計算」
タカヤはまだ映像を見つめている。
過去と現在が交差する。
ユーイの最後の言葉が脳裏をよぎる。
――「あなたは選ばない」
タカヤはゆっくりと目を閉じる。
そして開いた。
「神格再編機関を追うか…」
短く。
艦橋の空気が変わる。
ヒメナが即座に応じる。
「座標算出開始」
外宇宙へ続く航路が浮かび上がる。
戦いは、完全に個人的な因縁も帯び始めた。
(続)




