創造神の考え
― 創造神の考え ―
― 神格再編機関本部・移動要塞ポイント・ゼロ ―
広大な宇宙空間を、一隻の巨大な要塞が静かに航行していた。移動要塞ポイント・ゼロ。
神格再編機関その中枢。
艦内には無数の区画が存在している。
一つの都市にも匹敵する巨大な要塞。
その最深部、神格再編機関・司令区画。
薄暗い部屋の中央に一人の男が座っていた。
創造神レオナルド・ダヴィンチ。
黒と金の義手を組み、目を閉じている。
部屋にはほとんど音がない。
ただ、遠くから要塞の機関音だけが響いている。
ゴォォォォ……。
ダヴィンチは動かない。
まるで眠っているかのように、静かに座っていた。
その時。バンッ!!
扉が勢いよく開いた。
一人の士官が息を切らしながら駆け込んでくる。
「報告します!」
ダヴィンチは目を開けない。
「何だ?」
「サーディン艦隊……」
士官が息を整える。
「サーディン艦隊……全滅しました。」
数秒の沈黙の末にダヴィンチはゆっくりと目を開いた。
「……あぁ。」
そして。
「そうか……。」
驚きは、ほとんどなかった。
「流石に予想外だ……。」
士官は恐る恐る続ける。
「確認された敵勢力は、宇宙空母ノア。そして金星王キング率いるキング艦隊。さらにサターン艦隊も戦闘に参加していた模様です。」
「……ノアを沈める為の完璧な陣形だった筈だ…」
「はい。」
「被害は?」
「サーディン艦隊は全艦喪失。生存艦は確認されていません。」
「ノア側は?」
「正確な被害は不明ですが、艦体に多数の損傷。護衛艦にも相当な被害が出ているようです。」
ダヴィンチは静かに笑った。
「……なるほど。」
立ち上がる。
黒と金の義手が、照明の下で鈍く光った。
「サーディンは、数で押し潰すつもりだった。」
「はい。」
「だがそれを上回る数に潰された…キング艦隊は最強の大艦隊だからな…」
ダヴィンチは正面の巨大なスクリーンを見る。
そこには戦況図が表示されていた。
無数の赤い艦艇マーカーそのほとんどが、すでに消えている。
「数が多ければ勝てる……というものでもない。」
士官は黙っている。
ダヴィンチは戦況図を眺めながら呟く。
「…将神サーディンが言っていた。弱い兵隊も数を増やせば最強になると…
彼は確か…スイミーと言っていたかな?俺も小さい頃に読んだ事はあるよ…」
サーディンが最後まで信じていた思想。
一匹では弱いだから群れる。
巨大な魚を群れで倒す。
「思想としては悪くない。」
ダヴィンチは言った。
「だがな。群れには限界がある。」
その声には怒りはなく冷静に分析を始める。
「結局一匹一匹が弱ければ……巨大な敵を囲んだところで、撃ち抜かれるだけだ。そこをどう戦うのか…
私はそれを楽しみにしていた…」
スクリーンには、サーディン艦隊の最後の戦闘記録が映し出される。
「……サーディン。」
ダヴィンチは目を細める。
「お前も、ここまでか。残念だよ…」
そして通信士官へ向き直る。
「将神の現在の生存数は?」
士官の表情が固まった。
「……。」
「答えろ。」
「……はい。」
士官は端末を確認する。
「現在、確認されている将神の生存者は……」
言葉が止まる。
「……?」
ダヴィンチが見る。
士官はゆっくりと口を開いた。
「……想定より、かなり少なくなっています。」
「具体的に。」
「は、はい。」
画面が切り替わる。
戦死を確認した将神の一覧。
その横には状況が表示されていく。
将神オルカ、地球、日本国にて戦死。対天神菅原道真
将神キハダ、地球、聖地ネオ・エリュシオンにて戦死。対海神ポセイドン
将神イッカク、木星宙域にて戦死。対神帝モク・モック
将神サーディン、太陽系宙域にて戦死。対太陽系連合艦隊
将神コーラル、金星にて戦死。対神帝ビーナス・キング
そして過去の戦闘記録が次々と表示される。
ダヴィンチは黙って見つめていた。
「……。」
士官が小さく言う。
「将神が……次々と倒されています。」
「分かっている。」
士官の声が震える。
「主要戦力である将神が、短期間でこれほど失われるとは……。」
ダヴィンチは答えない。
スクリーンを見つめる。
将神。それは創造神ダヴィンチより直接造神エネルギーを与えられた神格再編機関における最高戦力。
ただの艦隊指揮官ではない。
一人で戦況を変えることのできる存在。
ダヴィンチは静かに歩き始めた。
広い司令室その中央を歩く。
士官が顔を上げる。
「将神イッカクは最高傑作であった…だが皮肉なものだな。」
ダヴィンチが呟いた。
「実の妹に殺されるとは…」
士官は何も言えない。
ダヴィンチは再びスクリーンを見る。
「神帝たちは我々の想定以上に動いている。」
画面には、次々と敵勢力が表示される。
「我々が戦っているのは……単なる軍隊ではない。」
ダヴィンチは静かに言った。
「この宇宙そのものだ。」
その言葉が司令室に響く。
「旧体制を壊し新しい神々の秩序を作る。
そのために、我々はここまで来た。だが……」
ダヴィンチの義手が、ゆっくりと握り締められる。
――ギギッ。
金属が軋む。
「こちらも……多くを失った。失い過ぎた…」
士官は俯いた。
ダヴィンチは戦死した将神の名前を一人ずつ口にした。
彼らはもういない。将神という強大な存在が戦場から消えている。
「だがまだ終わっていない。」
ダヴィンチは言った。
士官が顔を上げる。
「……はい。」
「将神はまだまだいる。」
その声には、揺るぎがなかった。
「一人倒れたからといって我々の思想が消えるわけではない。二人倒れたからといって、戦争が終わるわけでもない。」
そしてダヴィンチは司令室中央に表示された銀河図を見上げる。
「……むしろ。これからだ。」
銀河図の一角。
太陽系。
そこに一つの光点が表示されている冥王星。
「冥王星には将神ホホジロがいるな。ノアが向かってると奴に伝えろ。」
「は、はい!」
通信士官は走って無線室に向かう。
「そして………ガラン・ゴロンよ!いるか?」
「はい。こちらにおりますダヴィンチ様…」
神格再編機関最高幹部ガラン・ゴロンが姿を現す。
「最近敗北続きのお前に最後のチャンスをやろう…冥王星へ行き将神ホホジロと共に戦い冥王星を堕とせ。ノアも沈めろ。」
「ダヴィンチ様…ですが戦力が足りません…」
「待機中の将神を三人ほど連れて行けばいい…」
「は、はぁ…」
「ガランよ…三度目は無いぞ。良い報せを期待しているよ。話は以上だ…早く行け…」
ガランは敬礼をし無言で部屋を出る。
ダヴィンチは義手を背中に回す。
「次の戦場か。」
司令室の照明が落ちる。巨大な銀河図が暗闇の中に浮かび上がった。
戦死した将神達の名前を見る。
そしてダヴィンチは、無線機を持ち静かに命じた。
「各方面の将神へ通達。」
「はい。」
「戦力を再編する。一度戻れ。」
「……了解。」
ダヴィンチは太陽系を見つめる。
「冥王星にて決着をつけよう…タカヤ…」
その言葉と同時に。銀河図に新たな赤い光点が灯った。
十九章・完
二十章へと続く…
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公開情報
・将神ホホジロ 男性 年齢不詳
将神最強クラスの武神




