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ノア・アーク ― 神々と人が生きる方舟 ―  作者: ヤノチャン
十九章 太陽系侵攻

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黄金の大艦隊


― 黄金の大艦隊 ―


― 太陽系・艦隊戦闘宙域 ―


それからさらに二日。

戦闘は終わらなかった。


いや。終わらせることができなかった。


ドォォォォォン!!


宇宙空間を巨大な閃光が走る。


ノアの第一主砲が敵艦隊を薙ぎ払う。


ドォォォォォン!!


第二主砲そして第三主砲。

数十隻の艦艇が一瞬で消滅する。


だが。


「敵艦、後方より接近!」


「数は!?」


「……また増えています!」


「何だと……」


撃沈したはずの艦艇、破壊したはずの艦隊。

その空白を埋めるように、さらに後方から新たな艦艇が押し寄せてくる。


まるで海そのものが押し寄せてくるようだった。


「主砲、再装填!」


「急げ!」


「航空隊、第二交代へ!」


「敵艦隊、右舷方向からも接近!」


艦橋を飛び交う報告。


サターン艦隊が加わってから二日。

ノアの六隻の有人護衛艦は後方へ下がり、修理と休息を続けている。その代わりに前線へ立ったサターン艦隊三十隻が、敵の巨大な群れを相手に戦い続けていた。


しかしそのサターン艦隊にも、明らかに疲労が見え始めていた。


当然だった。彼らは木星で戦闘を終えたばかりだった。休む間もなくノアからの救援要請を受け、ここへ駆けつけたのだ。


艦艇の装甲には傷。


砲塔には焼け跡。


艦内では負傷者の治療が続いている。


それでも三十隻は戦っていた。


― サターン艦隊・旗艦


「敵艦、正面より接近!」


「主砲発射!」


ドドドドドドッ!!


艦砲が一斉に火を噴く。


敵艦が爆発する。


「撃破!」


「次!右舷から敵艦!迎撃します!」


再び砲火。サターン・ジュウは艦橋中央に立ち、戦況を見つめていた。

その表情は、いつもの落ち着きを失い始めている。


モニターに映る敵艦隊。

そして、その向こうに見えるノア。


「……。」


ジュウは静かに息を吐いた。


「このままじゃ駄目ね……」


隣にいた士官が振り返る。


「神帝様……」


「私たちも、もう余裕がない。」


ジュウは自分たちの艦隊を見つめる。


三十隻たった三十隻。

それでもここまで耐えてきた。


しかし敵は減らない。むしろ増えている気さえもする。


「一体……どれだけいるのよ。」


ジュウが呟いた。


― 神格再編機関大艦隊

― サーディン大艦隊・旗艦


「もうすぐだ……」


巨大な艦橋。


その中央に置かれた玉座。


そこに座る将神サーディンは、不敵な笑みを浮かべていた。


「もうすぐ……飲み込める。」


大型スクリーンには戦闘宙域が映し出されている。


無数の艦艇のその中心には宇宙空母ノア。

そしてその前方で必死に戦うサターン艦隊。


一人の士官が恐る恐る口を開いた。


「ですが……将神様。」


「何だ。」


「敵の持久力は、想像以上です。」


サーディンの笑みが僅かに消える。


「……。」


「ノアの主砲による損害も甚大です。我々の艦隊にも疲労が蓄積しています。このまま戦闘が長期化すれば――」


「それがどうした。」


士官が黙る。


サーディンはスクリーンを見ながら言った。


「今、勝機は我らにある。」


「ですが、兵の――」


パァン――


乾いた音が艦橋に響いた。


ガタン。


若い士官の身体が床へ倒れサーディンは銃を下ろす。


「五月蝿い。我に意見するとは……随分と偉くなったみたいだな。」


艦橋に沈黙が落ちる。


「……。」


サーディンは再び前を向く。


「我々は小魚だ。一匹では巨大な方舟には勝てない。だから群れるのだ!一匹喰われれば、次の一匹が前へ出る。十匹喰われれば、百匹が前へ出る。」


「百匹喰われれば……千匹が喰らいつく。」


サーディンの口元が歪む。


「最後に立っている者が勝者だ。」


その瞬間だった。


――ピィィィィィィィィッ!!


艦橋に警報が鳴り響いた。


「……何事だ。」


サーディンが振り返る。


「将神様!」


艦長が叫ぶ。


「これをご覧ください!」


大型スクリーンへ表示が切り替わる。

艦長の顔から血の気が引いていた。


「戦闘宙域外縁部に……大量の艦影!」


「数は?」


「……計測不能です!」


「何だと?」


スクリーンいっぱいに表示される。

レーダー画面そのものが敵艦反応で埋め尽くされていく。


「敵艦隊が……どんどんこの戦闘宙域へ侵入しています!」


「馬鹿な……」


別の士官が震える声で叫ぶ。


「太陽系戦力は、我々将神によって各宙域へ分散されているはずです!」


「ならば……あれは何だ!」


誰かが叫んだ。


スクリーンの彼方。


暗い宇宙を黄金の光が覆っていく。


金色に輝く艦艇が、巨大な隊列を組んで現れる。

戦艦、巡洋艦、駆逐艦、補給艦、護衛艦……

その数は、まるで一つの国家そのものだった。


「……金色。」


サーディンが呟く。


一人の士官が震えながら答えた。


「金星王……宇宙一と言われる資金力を持つ大富豪……」


「神帝ビーナス・キング……」


士官の声が震える。

艦橋に衝撃が走った。


「キング艦隊です!!」


サーディンの表情が変わる。


「……何?」


「金星にも将神は送られている筈では……」


サーディンが立ち上がる。


「将神コーラルはどうした。」


通信士が必死に端末を確認する。


「確認します!」


数秒。その沈黙が異様に長く感じられた。


「……ありません。」


「何?」


「金星に派遣された将神コーラル……」


通信士は顔を上げる。


「生体反応が……確認できません。」


「……。」


サーディンの目が細くなる。


その瞬間。


別の士官が叫んだ。


「敵艦隊、さらに増加!」


「左右両舷より接近!後方にも敵艦!」


「退路は!?」


「……ありません!」


艦橋に悲鳴が走る。


「我々の大艦隊が……」


誰かが呟いた。


「囲まれている……」


「そんな……」


「数が……多すぎる……」


一人の兵士がスクリーンを見上げる。


「喰われる……」


その言葉に、サーディンがゆっくり振り返った。


「……。」


先ほどまでの余裕はそこにはなかった。


小魚の群れ。巨大な方舟を飲み込むはずだった群れ。


しかし今その群れの周囲を、さらに巨大な群れが取り囲んでいた。


― キング艦隊・旗艦


「キング様!」


艦橋に通信士の声が響く。


「ノアの戦闘宙域に到着しました!」


中央の指揮席。そこに座る一人の男。


神帝ビーナス・キング。


金星王そして宇宙有数の大富豪。

キングは大型スクリーンに映る戦場を眺める。


そこには、無数の敵艦。


「……。」


キングはゆっくり立ち上がった。


「ノアは?」


「現在、敵大艦隊と交戦中です。サターン艦隊も交戦しています。」


「そうか。」


キングは笑いそして通信士を見る。


「ノアとサターン艦隊に無線入れとけ。」


「了解!」


通信が接続される。


キングは椅子から立ち上がり、正面の巨大スクリーンを見つめる。


その先には数え切れない敵艦。


キングは口元を吊り上げた。


「……随分と派手にやってるじゃないか。」


そして――


「さぁ……」


艦橋に響く声。


「始めようじゃない!」


その瞬間。


キング艦隊の全艦艇が一斉に戦闘態勢へ移行した。

金色の艦隊が、宇宙を埋め尽くしていく。


― 宇宙空母ノア・艦橋


「……。」


ヒメナは大型スクリーンを見つめていた。


そこには新たに出現した巨大艦隊。


「統合司令!」


通信士が叫ぶ。


「キング艦隊より通信です!」


ヒメナが振り返る。


「繋いで。」


スクリーンが切り替わる。


そこにビーナス・キングが映し出された。


「こちらキング艦隊。」


キングが笑う。


「お久しぶりです。ヒメナさん!」


ヒメナはしばらく黙っていた。


「……はは!久しぶりやな!頼むで。」


僅かな笑み。


キングも笑う。


「頼まれた!」


その背後。金色の艦隊が戦闘宙域を完全に包囲している。


通信が切れヒメナは前を向いた。


そして静かに言った。


「……全艦。」


艦橋の空気が変わる。


「キング艦隊との連携準備。」


「了解!」


「サターン艦隊にも連絡!」


「はい!」


ヒメナは再び戦場を見る。


二日間ノアもサターン艦隊も耐えた。

無数の兵士たちが耐えた。


そして今。新たな艦隊がこの戦場へ到着した。


ヒメナは小さく息を吸う。


「……さぁ、そろそろ終わらせよか。」


その声は静かだった。

その目には、再び強い光が宿っていた。


「ここからや。」


黄金の艦隊が、一斉に砲門を開く。


ドドドドドドドドドドッ!!


無数の砲火が暗黒の宇宙を黄金に染め上げた。


そして小魚の群れを囲むように。

新たな巨大な群れが動き始める。


戦場は今、新たな局面へと突入した。


(続)







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