木星宇宙ドック攻防戦
― 木星宇宙ドック攻防戦 ―
― 太陽系・木星圏
― 木星宇宙ドック基地・旧ドック廃基地
警報が、鳴り続けていた。
木星宇宙ドック。太陽系最大の宇宙造船施設。
巨大戦艦すら内部に収容できる巨大ドックを幾つも持ち、軍艦の建造、修理、補給、整備その全てを担う、太陽系の軍事・経済における最重要拠点。
この基地を失えば、木星圏だけではない。
太陽系全域の艦隊運用に大きな影響が出る。
だからこそ神格再編機関は、この場所を狙った。
だが現在、戦場となっているのは新ドックではなかった。
かつて使用されていた旧ドック。
何十年も前に閉鎖され、巨大な鉄骨と崩れかけた整備施設だけが残る廃基地。
その中央。
瓦礫と錆びた巨大構造物の間に、二人の男が立っていた。
一人は木星王モク・ゼノス。
木星圏を統べる王であり、神帝モク・モックの父でもある。
そしてもう一人。
神格再編機関最高幹部将神イッカク。
二人の間には、重い沈黙が流れていた。
やがてイッカクが口を開く。
「…お前が…木星王モク・ゼノスか…このドックは我ら神格再編機関が戴く!」
ゼノスは黙って相手を見据える。
「何だ?」
「貴様はこのドックが何を意味するのか理解しているか?」
「当然だ。」
ゼノスの背後には巨大な木星艦隊が展開していた。
その数は数百。木星宇宙ドック基地を守るため、木星圏の総力が集結していた。
さらにその外周にはサターン艦隊が展開している。
艦隊中央に浮かぶ旗艦。その艦橋には一人の女性が立っていた。神帝サターン・ジュウ。
木星王を援護するため、サターン艦隊を率いてこの戦場へ駆けつけていた。
ジュウは正面スクリーンを見つめる。
「……あれが将神イッカク。」
「はい。」
副官が答える。
「神格再編機関の最高幹部です。」
ジュウは目を細める。
「嫌な気配ね。」
そして視線を戦場へ戻す。
旧ドック廃基地その中心で、ゼノスが拳を握った。
「このドックを欲しければ俺を倒してからにしろ。」
ゼノスが一歩前へ出る。
イッカクの口元が僅かに歪んだ。
「……それを待っていた。」
次の瞬間イッカクの姿が消えた。
「――!」
ゼノスが身を捻る。
直後、ズガァァァァン!!
巨大な拳が地面を叩き割った。
旧ドックの床面が吹き飛ぶ。
ゼノスは間一髪で回避していた。
「速い……!」
ゼノスが距離を取る。
イッカクはゆっくりと立ち上がった。
「おい、逃げるな。」
「誰が逃げたと言った?」
ゼノスが踏み込む。
「うおおおおお!!」
拳が激突する。
ドゴォォォォン!!
衝撃波が旧ドック全体を震わせた。
周囲の鉄骨が軋む。ゼノスの拳をイッカクが受け止める。
「……!」
「王という肩書きにしては……」
イッカクが腕を捻る。
「軽いな!」
ドガァッ!!
ゼノスの身体が吹き飛ぶ。
「ぐっ……!」
数十メートル飛ばされ巨大な整備用コンテナへ激突する。
「王!」
木星軍の兵士たちが叫ぶ。
だがゼノスは立ち上がる。
口元から血を拭う。
「……なるほど。」
イッカクを見る。
「将神ってのは、口だけじゃないらしいな。」
「当然だ。」
イッカクは歩き出す。
「私はダヴィンチ様に選ばれたのだ!」
「この程度の王を倒せなくては将神の名が泣く!ハハハ!」
ゼノスの表情が変わった。
「……言ってくれる。」
再び激突する。二人が衝突するたび廃基地が震える。
ズガァン!!ドォン!!バキィィィン!!
ゼノスが攻撃するがイッカクはそれを受け流し反撃する。
一撃また一撃。
徐々にゼノスが押され始めていた。
「王!」
木星軍艦橋から悲鳴が上がる。
「木星王、劣勢!援護を!」
「駄目です! あの二人の戦闘では砲撃支援ができません!」
ゼノスが大きく後退する。
「ぐ……!」
イッカクは追撃する。
「終わりだ。」
その拳が振り上げられた。
ゼノスは構える。
だが――
その瞬間。
遠方から巨大な砲撃が飛来した。
ドォォォォォン!!
イッカクの足元が爆発する。
「……!」
爆煙の向こうから通信が入る。
『木星王。そこから下がってください。』
ゼノスが空を見上げる。
「……神帝…サターン・ジュウ…」
巨大なサターン艦隊が動き始めていた。
旗艦の艦橋。
神帝サターン・ジュウが静かに立っている。
『ここからは……』
ジュウが拳を握る。
『私も相手をしましょう。』
その瞬間ジュウ自身が艦から飛び出した。
超高速で地上へ降下する。
ズドォォォォン!!
旧ドックに着地。
舞い上がった煙がゆっくりと晴れる。
イッカクはジュウを見つめた。
「…ほぉ…神帝か。」
ジュウは答える。
「そうよ。」
ゆっくりと構える。
「あなた一人でこのドックを落とせると思わないことね。」
ゼノスが隣へ並ぶ。
「悪いな、神帝サターン・ジュウ。」
「何が?」
「助かった。」
ジュウが僅かに笑う。
「木星王ともあろうお方が簡単に倒れてもらったら困ります。あとモックちゃんと仲が良いの…
あなたが死んであの子の悲しむ顔は見たくないわ…」
二人が並んだ。木星王ゼノスそして神帝サターン・ジュウ。
イッカクの目が細くなる。
「……二人がかりとは卑怯な。」
「これは戦争だ…戦場に卑怯も何も無い…嫌なら帰ってもいいぞ。」
ゼノスが言う。
「帰る?」
イッカクが笑った。
「馬鹿を言うな。」
その全身から巨大な造神エネルギーが噴き出した。
廃基地の床が震える。
「二人まとめて倒せばいいだけだ。」
ジュウも神格を解放する。
空気が変わる。
「……なら。」
ジュウが一歩踏み込む。
「やってみなさい。」
次の瞬間三者が同時に消えた。
ドォォォォォン!!
衝撃波が旧ドック全体を吹き飛ばす。
ゼノスの拳、イッカクの拳、ジュウの蹴り。
三つの力が激突する。
今度は互角だった。
「……!」
イッカクが目を見開く。先ほどまでゼノスを圧倒していた。だがジュウが加わった瞬間、その力関係が完全に変わった。
ゼノスが正面から攻撃しジュウが側面から追撃する。
イッカクは二人の攻撃を受け流しながら反撃する。
「なかなか……!」
イッカクが笑う。
「面白い!」
ゼノスが叫ぶ。
「神帝!」
「分かってる!」
二人の攻撃が同時に入る。
ドゴォォォォン!!
イッカクが吹き飛ぶ。
巨大な鉄骨へ叩きつけられる。
しかしゆっくりと立ち上がった。
口元から血を流しながら笑っている。
「…ハハ…ハハハ!…なるほど!なるほどな!」
イッカクは二人を見る。
「木星王だけならすぐに終わった。」
そして拳を握る。
「だが神帝が一人加われば……」
その目に殺気が宿る。
「話は変わるらしい。」
ジュウが静かに答える。
「あなたも、まだ余裕があるようね。」
「ああ。」
イッカクは笑う。
「私は将神だ。」
「ここで退くつもりはない。」
その瞬間木星圏全域に警報が響いた。
艦橋の通信士が叫ぶ。
「高速接近反応!」
「数は!?」
「……船や戦闘機ではありません!!」
ゼノスが空を見上げジュウも同じ方向を見る。
そしてイッカクも…
「……来たか。」
戦場の彼方。
高速物体は木星艦隊を破壊しながら真っ直ぐに木星圏へと突っ込んでくる。
木星宇宙ドックを巡る戦いは、まだ始まったばかりだった。太陽系最大の宇宙ドック。
それを巡って木星王と神帝そして将神。
三者の戦いは、さらに激しさを増していく。
(続)
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公開情報
・造神エネルギー 将神が扱うダヴィンチにより造られた力




