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ノア・アーク ― 神々と人が生きる方舟 ―  作者: ヤノチャン
十九章 太陽系侵攻

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聖地決戦


― 聖地決戦 ―


― 太陽系・地球圏

 旧ヨーロッパ地域・聖地ネオ・エリュシオン


砲撃音が、途切れなかった。

聖地を望む海域には神格再編機関の大艦隊が展開している。


その数百五十隻以上。

戦艦、巡洋艦、駆逐艦、輸送艦。

本来ならば一つの都市を消滅させるには十分すぎる戦力だった。


しかし一隻として聖地へ近づくことができなかった。


「前方、海壁突破できません!」


「右舷側より神軍部隊接近!」


「上空にも敵艦隊!」


「後方は!?」


「…突破は可能ですが海域封鎖されています!」


艦橋に次々と報告が飛び込んでくる。


将神キハダは艦橋に戻り正面スクリーンを睨みつけていた。そこに映っているのは、白亜の神殿。


そして神格再編機関艦隊の前に立つ巨大な男。

海神ポセイドン。その左右には、月の神帝姉弟。


さらに地上には聖地防衛を担う神軍部隊が幾重にも展開している。


「……たった三人と神軍だけで……」


キハダが呟く。


「我々の進軍を止めているというの……?」


その瞬間。


ドォォォォォン!!と巨大な水柱が艦隊中央で炸裂した。海面から数百メートルもの水が噴き上がり、神格再編機関の戦艦を包み込む。


「第十八艦、航行不能!」


「救難艇を!」


「駄目です! 周囲を海流に拘束されています!」


ポセイドンが三叉槍をゆっくりと振る。


ただそれだけだった。


海が動き巨大な渦が艦隊を飲み込んでいく。


「海神を甘く見ないことね。」


オール・ムーンが静かに言った。


「この聖地へ踏み込むには……戦力が少な過ぎるわ。」


その隣でオール・サンが右手を掲げる。


「神軍、攻撃開始!」


無数の神軍艦艇が一斉に前進した。


ドドドドドドド!!


砲撃が神格再編機関艦隊へ降り注ぐ。


一隻また一隻と黒煙を上げながら戦艦が沈んでいく。


「報告!第二十七艦、撃沈!第三十二艦も被弾!左翼部隊、壊滅状態!」


キハダは唇を噛んだ。


「……私の可愛い艦艇達が…。この数じゃ足りないの?」


彼女は理解し始めていた。


聖地を攻め落とすどころか自分たちはこの場所に足を踏み入れることすらできていない。


その時艦橋の通信士が叫ぶ。


「後方宙域に大型艦!」


「識別します!」


スクリーンが切り替わる。


白銀の巨大艦。


その艦首に刻まれた紋章。


「……宙警連です!」


「艦名判明!」


通信士の声が震える。


「宙警連旗艦"ジャスティス"!」


キハダの顔から血の気が引いた。


「……ジャスティス?奴は惑星アルタイルにいるはず…」


その瞬間巨大な艦艇が超空間航行から姿を現した。


ズズズズズ……!聖地上空をジャスティスがゆっくりと旋回し艦首を敵艦隊へ向ける。


「ジャスティス、戦闘宙域へ復帰。」


艦橋で司令代理の神官カガミが静かに命じる。


「聖地防衛ラインを形成する。」


「了解!」


ジャスティスを中心に宙警連の艦艇が次々と展開する。逃げ道が一つずつ消えていく。


キハダはそれを見つめた。


前方にはポセイドン。左右に神帝姉弟。地上は神軍。

後方はジャスティス。

そして上空にも、防衛艦隊。


キハダの声が僅かに震える。


「袋の鼠とはこの事ね…。」


副官が振り返る。


「将神様……」


「全艦後退しろ…」


「え?」


「撤退する。」


その言葉に艦橋が凍りつく。


「しかし、まだ我々には使命が!」


「これは勝てない。」


キハダは即答した。


「このまま戦えば確実に全滅する。」


彼女は歯を食いしばった。


「聖地攻略は失敗よ!」


そして叫ぶ。


「いいから全艦撤退しなさい!まだ後ろが薄い!逃げ切って体勢を整え直すのよ!」


しかし……


「……将神。」


通信士の顔が青ざめる。


「撤退できません。」


「何ですって?」


「後方の宙警連艦隊の陣形は完璧です…」


「左右にも敵艦隊。そして前方は海神…」


キハダは正面スクリーンを見る。


そこには三叉槍を手にしたポセイドンが立っている。

通信士が震える。


「完璧な包囲網です…。」


キハダは目を閉じた。


「……そう。ならば。」


キハダは目を開いた。


「最後まで戦いなさい。この船の最後の一隻になるまで。」


「了解!」


神格再編機関艦隊が、一斉に反転する。


撤退ではない。最後の抵抗だった。


ドォォォォォン!!ズガァァァン!!


聖地の空が再び炎に染まる。

だが戦力差は明らかだった。神軍艦艇が次々と敵艦へ砲撃を集中させる。ジャスティスも主砲を発射する。


一隻また一隻。敵艦が爆発していく。


「第四十艦、撃沈!」


「第五十一艦、撃沈!」


「敵右翼、崩壊!」


「敵中央部隊、突破不能!」


「将神様!」


副官が叫ぶ。


「我が艦隊、残存艦……十五!」


キハダはスクリーンを見る。


そこには炎上する艦艇に漂う残骸。そして聖地。


「……ここまでなのね。」


それでも彼女は司令席から立ち上がらなかった。


「全弾撃ち尽くすまで撃ちなさい。」


「了解!」


ドォォォォォン!!


旗艦の主砲が放たれる。


しかしその砲撃は聖地へ届かなかった。


水壁により無効化される。


ポセイドンが静かに三叉槍を構えた。


「もう十分だ。」


キハダがスクリーンを見る。


「……来る。」


ポセイドンが槍を振り上げる。

海が巨大な渦となって空へ巻き上がった。


「な…何だ、あれは…!」


神格再編機関兵士たちが叫ぶ。


そして「沈め。」


ポセイドンが三叉槍を振り下ろした。


ズドォォォォォォォン!!


巨大な水流が槍の一撃とともに艦隊へ叩き込まれ旗艦が激しく揺れる。


「衝撃!!艦体中央部、損傷!艦橋区画――」


その報告が終わるより早く。


ポセイドンの三叉槍が巨大な光を纏った。


そして一直線に旗艦へ向かって放たれた。


ズガァァァァァン!!


三叉槍が艦橋を貫き艦橋中央が完全に破壊される。


「――――。」


キハダの身体が大きく揺れた。


目の前の景色が崩れていく。


「……これが……真の神……。」


その言葉を最後に将神キハダは消滅した。

旗艦は大きく傾きそのまま炎と煙を吐きながら聖地近海へ沈んでいった。


それを見届けたポセイドンは、静かに三叉槍を下ろした。


戦場から砲撃音が消えていく。

残った神格再編機関艦艇も次々と撃沈さてやがて静寂が戻った。


聖地ネオ・エリュシオン。


その神殿の最奥。絶対神パンドラは窓の外に広がる戦場を静かに見つめていた。


パンドラは小さく息を吐く。


「……ダヴィンチよ。」


その瞳に、僅かな哀れみが浮かぶ。


「簡単に聖地は堕ちませんよ。」


そして静かに続ける。


「次は…直接来なさいな。」


パンドラは神殿の奥へ歩いていく。


「あなたが本当に、この世界を変えるつもりなら…

その手でここを奪ってみなさい。」


― 同時刻。


太陽系・某宙域 ポイント・ゼロ


無数の戦況データがスクリーンに表示されていた。


創造神レオナルド・ダヴィンチはモニターを無言で見つめていた。両腕には漆黒と黄金の義手。


そこへ通信が入る。


「ダヴィンチ様。」


「……何だ。」


「緊急報告です。」


通信士の声が震えている。


「将神オルカ戦死。」


ダヴィンチの表情が僅かに変わる。


「……。」


「さらに……聖地ネオ・エリュシオン攻略部隊。

将神キハダも戦死。」


ダヴィンチは何も言わない。

やがて自分の義手をゆっくりと見つめた。


「……そうか。」


僅かに驚いた表情。


しかし、それだけだった。ダヴィンチは義手を握る。


ギギギギ……。


金属音が艦橋に響く。


「将神は……」


顔を上げる。


「まだまだいる。」


その瞳には、動揺などなかった。


むしろ新たな戦いを楽しむような光が宿っていた。


「二人失った程度で、私の計画は止まらん。」


ダヴィンチは太陽系の巨大な戦略図を見上げる。


そこには、まだ無数の赤い光が灯っている。


「戦え。」


「我々の目的は、二人の将神の命より遥かに大きい。」


そして、静かに笑った。


「木星宇宙ドックはどうなっている?」


「ただいま将神イッカクが木星王及びサターン艦隊、神帝サターン・ジュウと交戦中!

イッカクは我が軍でも最強クラス…期待はできますね…」


「あぁ、そうだな…気を抜かず戦い続けろ…」


その言葉とともに、スクリーン上の赤い光が一つまた一つと動き始めた。


― 木星宇宙ドック。


巨大なドックを埋め尽くすサターン艦隊。

その正面に、一隻の黒い戦艦が浮かんでいた。

艦橋に立つ一人の男。


白銀の装甲に巨大な角を思わせる頭部装甲。

その瞳には冷たい殺気が宿っている。


神格再編機関・最高幹部将神イッカク。


「……木星王。」


イッカクが静かに口を開く。


「貴様の星は今日で終わりだ…」


その正面に木星王が立ち上がる。


「……ほう。やれるものならやってみな…」


その隣には神帝サターン・ジュウ。


ジュウが拳を握る。


木星宇宙ドックに警報が鳴り響く。その警報は第三の将神が戦場へ現れた合図であった。


(続)


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公開情報


・イッカク 神格再編機関 将神 男性

 年齢不明だが見た目は三十代ぐらい

 将神最強クラス、一人で突っ込み戦うスタイル








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