天神様降臨
― 天神様降臨 ー
太陽系各地で戦闘が続いていた。
惑星アルタイルから発せられた緊急通信を受け、各星系の軍隊が防衛態勢へ移行したものの、神格再編機関派の蜂起はあまりにも広範囲だった。
政府施設、軍事基地、宇宙港、研究所、そして都市。
彼らは軍事施設だけを狙っているのではない。
神格再編機関にとって、今回の目的は単なる軍事的勝利ではなかった。
社会そのものを揺るがすこと。政府を倒し、軍を分断し、人々に恐怖を植え付けること。
そして既存の秩序を崩壊させること。
その戦火は、ついに日本へも及んでいた。
― 太陽系・地球圏 日本・関西地域
空が赤く染まっていた。
大阪、京都、神戸、奈良…
かつて人々が暮らしていた街の上空を、無数の戦闘機と宇宙艦艇が飛び交っている。
地上では警報が鳴り続けていた。
ウゥゥゥゥゥン……!
遠くで爆発が起こり巨大な煙柱が立ち上がった。
建物の窓は割れ、道路には避難する人々が溢れている。
「こちら第三師団! 敵部隊、北東方向から接近!」
「神軍部隊と合流しろ!」
「民間人の避難を最優先だ! 戦闘区域を拡大させるな!」
自衛隊の車両が道路を走り抜ける。
陸上自衛隊、航空自衛隊、大阪湾には海上自衛隊の艦艇、そして神軍。
いろんな部隊の人間達が同じ戦場で肩を並べていた。
日本を守るために。
だが敵の数はあまりにも多かった。
「敵航空部隊、接近!」
空を見上げた兵士の顔が強張る。
黒い戦闘艦が雲を突き抜ける。その後ろからさらに艦艇が現れる。
神格再編機関…その軍勢は、まるで巨大な津波のように関西圏へ押し寄せていた。
「撃て!」
ドォォォォン!!
地上から迎撃ミサイルが発射され空中で爆発が連続する。
だがその爆煙を突き抜けて敵艦が進んでくる。
「……数が多すぎる!」
「怯むな!」
自衛官が叫ぶ。
「ここを抜かれたら大阪全域が戦場になるぞ!」
別の兵士が銃を構える。
その目の前を、一人の神軍兵が駆け抜けていく。
「神軍第三部隊、前進!」
「自衛隊と歩調を合わせろ!」
神軍と自衛隊の連携は完璧である…
だがその戦場のさらに奥に神格再編機関の軍勢を率いる一人の男がいた。
神格再編機関・最高幹部"将神オルカ"
巨大な戦闘艦の前方。漆黒の装甲を纏った男が、燃え上がる街を見下ろしていた。
ダヴィンチに選び抜かれた最高幹部"将神"のその一人である。
「……ここが日本か。」
オルカは静かに呟いた。その目に映っているのは炎に包まれた街だった。
「ははは!愉快だ!」
口元が僅かに歪む。
「ここ関西圏には位の高い神が多いと聞く…
我が全て殺してやろう!」
オルカは笑う。
「確かここは神帝タカヤの故郷だったな…
神々の世界を終わらせる最初の場所が……神帝の故郷とはな!」
部下が報告する。
「将神オルカ様!」
「日本政府主要施設の一部を制圧!神軍部隊は各所で抵抗中!自衛隊も戦闘に参加しています!」
「構わん。」
オルカは即答した。
「進め。」
「はっ!」
オルカの声が低くなる。
「軍を潰せ。全てを壊せ!」
さらに一歩、前へ出る。
「そして神々が人間を守るというこの国の幻想を壊せ!私がこの地を納める新たな神になろう!」
その命令を受け、神格再編機関の部隊が一斉に前進する。
ドドドドドド……!っと地面が震える。
あらゆる戦力が入り乱れ、日本という一つの国を戦場へ変えていく。
だがその時だった。
オルカがふと空を見上げた。
「……?」
雲の向こうに何かがいる。
戦闘機ではない、艦艇でもない…巨大なエネルギー反応。
「何だ?」
部下がセンサーを確認する。
「上空に高エネルギー反応!所属不明!」
「こちらへ接近しています!」
「わかっておるわ!」
次の瞬間、雲が割れた。
ズドォォォォン!!一筋の雷が地上へ落ちる。
爆風が周囲を吹き飛ばし神格再編機関の兵士たちも思わず足を止める。
煙が晴れていく。
そこに一人の男が立っていた。
古い時代の装束に長い黒髪、鋭い眼差し。
その周囲には、まるで怒りそのものを象徴するかのような雷が走っている。
オルカが目を細める。
「…あれが…神、か。」
男は答えなかった。
ただ、燃え盛る街を見渡す。
逃げ惑う人々。倒れた自衛官。傷ついた神軍兵。
そして自分たちが踏みにじろうとしている日本の大地。
男はゆっくりと目を閉じた。
「……。」
そして静かに口を開く。
「この国で……」
雷鳴が響く。
ゴロゴロゴロ……。
「好き勝手に暴れられては困りますね…」
オルカが笑った。
「誰だ、お前は。」
男はオルカを真っ直ぐ見据えた。
「我が名は、菅原道真と申します…」
その瞬間、空を覆っていた雲の中から無数の雷が走る。
兵士たちがざわめく。
「菅原……道真?」
「まさか…天神様……?」
日本の人々が古くから信仰してきた神。
学問を司る神。
そして日本三大怨霊"雷神"としても恐れられた存在。
天神様。菅原道真は静かに右手を掲げる。
空が暗くなる。
「アマテラス様からの命です…この地は、私が守りましょう…」
オルカは笑みを浮かべた。
「面白い。」
ゆっくりと武器を構える。
「ならば――」
周囲の神格再編機関兵が一斉に戦闘態勢へ入る。
「神から先に消してやる。」
道真の目が鋭く光った。
バチィィィッ!!
雷が大地を走る。
自衛隊員たちはその光景を呆然と見つめていた。
一人の若い自衛官が呟く。
「……天神様が……」
「守ってくれるのか…」
道真は振り返らない。
「タカヤ…あなたの故郷が燃えていますよ…
早よ、帰って来なさいな…」
ただ、燃える街を背にして立っている。
その姿は古来より日本人が畏れ、敬い、祈り続けてきた神そのものだった。
そしてオルカが叫ぶ。
「全軍!攻撃!!」
神格再編機関の軍勢が一斉に動き出す。
その瞬間道真が空へ手を掲げた。
「……天より裁きを受けよ。」
次の瞬間 ズガァァァァァァン!!!!
大阪の空を巨大な雷が貫いた。
戦場が白く染まる。
神と人間。そして神格再編機関の未来を懸けた戦いが今始まった。
(続)
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公開情報
・将神 創造神ダヴィンチに選ばれた新時代の神候補
・オルカ 神格再編機関 将神 男性
年齢不明だが見た目は若め。




