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ノア・アーク ― 神々と人が生きる方舟 ―  作者: ヤノチャン
十七章 第四次宇宙大戦

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神殺し、再び


― 神殺し、再び ―


― 惑星デネブ・前線宙域


無数の艦艇が炎を上げながら漂っていた。

デネブ宇宙軍と神格再編機関連合軍。その圧倒的な艦隊の前に立ちはだかっていた三星同盟艦隊は、先ほどまで激しい砲撃を繰り返していた。


しかし今は静かだった。艦隊同士の距離は一定に保たれ、互いに睨み合っている。その最前線の一隻の巨大艦の甲板に、一人の男が立っていた。


創造神"レオナルド・ダヴィンチ"

かつて神帝としてタカヤたちと肩を並べた男。

そして今は神格再編機関を率いる創造神。


ダヴィンチは燃え上がる無人護衛艦を眺めていた。


「……。」


しばらく炎を見つめた後、自分の右手へ視線を落とす。そこにあるのは、生身の腕ではなかった。

金色に輝く義手。


神々の技術と神格再編機関の技術を組み合わせて造られた、異形の右腕。ダヴィンチは指をゆっくり動かした。


カチッ。金属の関節が小さく鳴る。


「……この義手も、私に馴染んできた。」


その言葉には、どこか懐かしさがあった。この右腕を失った日のことを、ダヴィンチは忘れていない。


"ゴッド・スレイヤー"神を殺すために造られた兵器。

その弾頭に使われていたのは、カガミ博士が発見・研究した特殊粒子"カガミ粒子"


神の再生能力を阻害し神格そのものへ干渉する。


かつての海王星での戦いでゴッド・スレイヤーをまともに受けたダヴィンチの右腕は再生することなく吹き飛んだ。それがこの義手の始まりだった。

ダヴィンチは金色の右手を握り締める。


「……あの時は、見事だったよ。」


視線の先には宇宙空母ノア。


「だが……」


ゆっくりと右手を天へ掲げる。


「そろそろ無人の船を沈めるだけでは面白くない。」


その瞳が鋭くなる。


「次は…ノア、お前たちだ。」


右手を振り下ろそうとしたその時…


『ダヴィンチ様。』


耳元に小さな通信音が入った。


ダヴィンチは動きを止める。


「…ん?」


声の主は分かっている。神格再編機関・技術司令カガミ博士、ダヴィンチは少し面倒そうに耳元の通信装置へ手を添えた。


「カガミ博士…。」


『はい。』


「どうした?」


少し間を置く。


「連絡のタイミングが悪すぎるな。内容によっては、お前に明日は無いと思え。」


『それは承知しております。』


カガミの声は落ち着いている。


『ですが、先ほどの攻撃について一つだけ。』


「なんだ?」


『あの出力の攻撃を連発するのは危険です。』


ダヴィンチの視線が自らの右腕へ向く。


『義手だけではありません。ダヴィンチ様自身にも相当な負荷が掛かっています。』


「……。」


『最低でも六十分。冷却と神格安定の時間を設けてください。』


ダヴィンチはしばらく黙っていたがやがて小さく笑う。


「カガミよ。」


『はい。』


「忠告、感謝しよう。」


右手をゆっくり下ろす。


「では、それまでは」


遠くに広がる三星同盟艦隊を眺める。


「高みの見物といこう。」


『……それが賢明です。』


通信が切れる。


ダヴィンチは静かに艦隊を見つめ続けた。


その頃デネブ宇宙軍も動き始めていた。


「全艦、前進!」


デネブ艦隊がゆっくりと動き始め戦場は再び動き出そうとしていた。


― 宇宙空母ノア・艦橋


「……。」


艦橋中央。


統合司令キドウ・ヒメナは、正面スクリーンに映る戦場を見つめていた。


先ほどのダヴィンチの攻撃によって、前方の無人護衛艦隊は大きな損害を受けている。


しかし、ヒメナの表情に動揺はなかった。


「…なんやあの威力は…」


小さく呟く。


「最悪やな…」


その手には通信端末で一人の女性に連絡を入れた。


相手はヘリオス・アーセナル社ノア支部長"リリア・ヘリオス"


通信が繋がる。


『どうした? ヒメナ?』


「リリア。」


ヒメナは正面を見つめたまま尋ねる。


「例の物は完成した?」


『例の物って…まさか神殲滅兵器、ゴッド・スレイヤー改の事かしら?』


リリアの声が少し低くなる。


「あぁ。」


『完成はしてる。』


リリアは続ける。


『一応、物としては完成してるけど…。』


「けど?」


『まだ一度も試した事がない。』


ヒメナは即答した。


「なら、ええ機会やな。」


『……あなたね。まぁ、準備を始めましょう…』


リリアが呆れたように息を吐く。


『相手は創造神レオナルド・ダヴィンチよね?』


「あぁ。」


『……。』


少しの沈黙。


『二度も実験台になるなんて……奴もついてないわね。』


ヒメナは小さく笑った。


「頼むで、リリア。」


『分かった。』


通信が切れる。


ヒメナはゆっくりと息を吐いた。


「……今度こそ。」


視線を正面へ戻す。


「ど真ん中に当てたるで…」


その時だった。


「統合司令!」


通信兵が振り返る。


「宙警連旗艦ジャスティスから通信です!」


「繋いで。」


スクリーンが切り替わる。


そこに映し出されたのは神帝"マック・ファイヤ"


「ヒメナさん。」


ファイヤは艦橋から戦場を見つめているようだった。


「ダヴィンチが動いたね。」


「…そうだね…」


ファイヤの表情が変わる。


「なら、俺も出るとしよう…」


ヒメナは頷いた。


「無理はするなよ…」


「無理はしないさ…」


通信が切れる。


― 宙警連旗艦ジャスティス


「総督!」


艦橋に声が響く。


「前方、敵艦隊多数接近中!」


「うん。ほっとけ…」


マック・ファイヤは立ち上がった。


その後ろには大神官カガミ・ココミ。


「じゃ、死なない程度に行ってくる…」


「はい。お気をつけください。

あぁ…ファイヤ様が戦死したら私もやっと神帝か…

長かった…あっ船の事はご心配無く…」


「ココミちゃん!心の声が漏れ漏れだよ!ひどいなぁ」


「あぁ…申し訳ございません。ではご武運を…」


ココミは静かに適当に頭を下げた。ファイヤは笑い艦橋を出る。格納庫へ向かう通路を歩きながら、ファイヤは拳を握った。


「…ふぅ…久しぶりの戦場は緊張するね…

デスクワークには飽きたところだった…

すぐに終わらせてやる。この戦場の主役は俺だ…」


格納庫のハッチが開く。ファイヤは出撃用装備を確認する。


『神帝様、出撃準備完了。』


「よし。ジャスティスより出撃する。」


ファイヤは身体一つで戦場へ飛び込んでいく。


― デネブ海域・前線


無数の艦艇が交差する。


デネブ軍神格再編機関連合軍に三星同盟軍。



その中を神帝マック・ファイヤは生身で突き抜ける。


「邪魔だ!」


ファイヤが叫ぶ。


一機また一機とデネブ軍の戦闘機を撃破していく。


「……!」


目の前に巨大な艦艇が現れその甲板には金色の右腕を持つ男が立っていた。


ファイヤの目が細くなる。


「…久しぶり…ダヴィンチ。」


ダヴィンチもこちらを見る。


「あぁ…久しぶりだな。」


二人の間に、長い沈黙が流れる。


かつて同じ神帝として戦った者同士…だが今は違う。


「反逆者め…」


ファイヤが低く言いダヴィンチは笑った。


「その言葉は聞き飽きたよ。」


「なら直接聞かせてやろう…」


ダヴィンチも金色の義手を構える。


「来い。神帝ファイヤ。」


「あぁ!俺の火の前に跪け!」


二人の距離が一気に縮まる。


その瞬間ゴォォォォン!!巨大な衝撃波が戦場を走った。二人の戦いが始まる。


そして同時刻ノアの内部では


『ゴッド・スレイヤー改、最終調整完了!』


ヘリオス・アーセナル社から通信が入る。


ヒメナは静かに目を開いた。


「…よし。」


艦橋全体へ命令が響く。


「ゴッド・スレイヤー改、発射準備完了。」


神殺しのために造られた新たな兵器が静かに目を覚ます。かつてダヴィンチの右腕を奪った兵器。


その改良型が再び創造神へ牙を向けようとしていた。


(続)





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