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ノア・アーク ― 神々と人が生きる方舟 ―  作者: ヤノチャン
十七章 第四次宇宙大戦

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守る者、攻める者


― 守る者、攻める者 ―


― 宇宙空母ノア 中央作戦室


アルタイル全域の戦況図が大型スクリーンに映し出されていた。デネブ宙域、アルタイル、ベガ、太陽系。


無数の艦隊配置を示す光点が静かに点滅を続けている。その前で、神帝ヤザキ・タカヤは腕を組み、マック・ファイヤを真っ直ぐ見つめていた。


「ファイヤ…お前を呼んだんは頼みたい事があるからや。」


作戦室の空気が引き締まる。ファイヤも真剣な表情で頷いた。


「よし、聞こう。」


タカヤはモニターへ映るアルタイルを指差す。


「英雄不在のこの惑星アルタイルを守ってくれ。」


短い沈黙。ファイヤは顎へ手を当て数秒だけ考える。


そして 


「うん。」


静かに口を開いた。


「断る。」


「ありがとう、ファイヤ…って。えっ?今断ると言った?」


タカヤの表情が止まる。


「うん。言ったよ。」


ファイヤは淡々と続けた。


「ダヴィンチは俺が捕らえる。裏切り者のダヴィンチは俺の手で…」


その瞳には強い意志が宿っていた。タカヤも真っ直ぐ見返す。


「まぁ気持ちは分かる。

けど今一番危ないんはアルタイルや。だからこそ。」


ファイヤは首を横へ振る。


「どうせお前達はデネブに行くのであろう…俺はその気で来たのだ。あとさ神格再編機関の中心はダヴィンチだ。奴を落とせば戦況は一気に変わる。」


二人の意見は平行線だった。作戦室に重い空気が流れる。


その時だった。


「統合司令、入られます!」


当番兵の声が作戦室へ響き渡る。


全員が一斉に扉へ向き直る。


ウィーン…重厚な自動扉がゆっくりと左右へ開いた。


ノア統合司令"キドウ・ヒメナ"


その姿が現れると室内の全員が一斉に敬礼する。


ヒメナも静かに敬礼を返した。


「ご苦労さん。」


そのまま部屋の中央まで歩きファイヤを見つけると少し笑った。


「ファイヤ君、久しぶりやね。」


「ご無沙汰してます。」


「なんなん?揉めてるん?」


周囲を見渡す。


ファイヤは苦笑した。


「まぁ…少し。」


「ほな聞こか。」


ヒメナは空いていた椅子へ腰掛けた。


タカヤが現在の状況を説明する。

アルタイルには英雄がいないこと。デネブや宙帝の侵攻の危険。ファイヤはダヴィンチ討伐を望んでいること。十分ほど話を聞いたヒメナは腕を組み、静かに目を閉じた。


「なるほどね…。」


部屋は静まり返りやがてヒメナが顔を上げた。


「両方やればええやん。」


全員が顔を上げる。


「……え?」


ヒメナは当然のように言った。


「アルタイルを守る戦力を別に置けばええだけやね。」


モックが尋ねる。


「それは、誰を?」


ヒメナは迷わなかった。


「居候中のノア最終兵器堕天使ルシファー様…」


その名前に空気が変わる。アイズが眉を上げる。


「あっ!いたね!」


モックも苦笑する。


「ルシファー様なら安心できるけどさ…引き受けてくれるかな?」


ヒメナは立ち上がった。


「まぁ聞いてみよ。」


― 宇宙空母ノア 特別居住区


ノアへ身を寄せている"堕天使ルシファー"


ルシファー専用区画。

部屋の窓からアルタイル港を眺めていたルシファーはノックの音に振り返った。


「入るで。」


ヒメナだった。


ルシファーは小さく笑う。


「入ってくるな…」


ヒメナは椅子へ腰掛ける。


「お願いがあるんやけど…」


「嫌だ。」


ルシファーは即答しヒメナは苦笑する。


「とりあえず最後まで聞いてや。」


ルシファーは肩をすくめた。


「ん…どうぞ。」


ヒメナは真剣な表情になる。


「アルタイルを守ってほしい。」


ルシファーは静かに首を横へ振る。


「私は悪魔だぞ…自分の知る国、星ならまだしも他国の戦争へ介入する理由はない。」


二人は窓の外を眺め部屋が静かになる。

ヒメナはしばらく黙っていたがやがて静かに口を開く。


「…なにを言っているん?ノアに乗る前に約束したやん…もしもの時は働くと…約束やったよね?

英雄がおらん今。誰かがおらなアルタイルは堕ちる。」


「我はノアの危機には力を貸すと約束したのじゃ…

アルタイルは知らん…」


ヒメナは続けた。


「今頼れるんは君しかおらん。アルタイルの堕ちるとノアが危ない…ルシファー様の希望があるなら検討するからさ。」


数十秒の沈黙。


ルシファーは大きくため息をついた。


「ハァ面倒じゃ…ヒメナよ…では宙警連第六巡視艦隊を置いて行け…」


「ゼン達ですか?」


「あぁ…彼らは頭が良いし腕も立つ。特にお前の弟"キドウ・ゼン"は優秀じゃ…」


ルシファーも小さく笑った。


「おっ!なんか嬉しいな…

分かりましたよ!それぐらいなら!」


ルシファーは静かに立ち上がる。


「そうか…ならアルタイル防衛を引き受けよう。」


部屋の空気が一気に和らぐ。


― 宇宙空母ノア 中央作戦室


再び全員が集められた。


ヒメナは大型スクリーンの前へ立つ。


「決定事項を伝える。」


全員が姿勢を正す。


「本日付で、堕天使ルシファーを司令官とする臨時アルタイル防衛部隊を編成する。」


モニターへ新たな部隊編成が映し出される。


宙警連第六巡視艦隊 司令官"キドウ・ゼン"


ゼンは驚きながらも立ち上がった。


「えっ!私ですか。」


ヒメナは力強く頷く。


「あぁそうや…ルシファー様からの指名や…

補佐を頼むよ。」


ゼンは深く敬礼した。


「謹んで拝命いたします!」


ファイヤも満足そうに笑う。


「ゼン。任せたぞ。」


「当たり前ですよ。」


その言葉にルシファーも静かに頷いた。

こうして、宙警連第六巡視艦隊はアルタイルへ残留。

ルシファー率いる臨時防衛部隊として新たな任務に就くこととなる。


一方で、宙警連旗艦ジャスティスは神帝マック・ファイヤを乗せ、神格再編機関との決戦へ向けて出航準備を開始する。


守る者と、攻める者。


二つの戦線が、今まさに動き始めようとしていた。


(続)





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