ジャスティス来航
― ジャスティス来航 ー
― アルタイル宙域・十二時間後
青白い光が宇宙を切り裂いた。何もなかった宙域に巨大な円環状のワープゲートが形成され、その中心から一隻の巨大戦闘艦がゆっくりと姿を現す。
艦首には白銀の文字。『宙警連旗艦 ジャスティス』
漆黒の艦体は威圧感に満ち、警察機構の象徴である蒼い紋章が艦首に輝いていた。
艦橋では神帝マック・ファイヤは腕を組み、正面スクリーンに映るアルタイルを眺める。
「…ふぅ…意外と早かった。座標があると、やっぱり便利だな。」
隣に立つ大神官カガミ・ココミが苦笑する。
「まぁ通常航路なら数週間ですからね。タカヤ様にしては珍しくちゃんと座標送ってきましたしね…」
艦橋に笑いが漏れる。
通信士が敬礼した。
「神帝様、アルタイル港より入港許可が下りました。」
「よし。」
ファイヤは静かに頷く。
「ジャスティス、アルタイル港へ入港。」
― アルタイル港
港では宇宙空母ノアが静かに停泊していた。
その隣へ、ゆっくりとジャスティスが接岸する。
巨大艦同士が並ぶ光景にアルタイル兵や市民からどよめきが起こった。
「また大きい船が…太陽系ってどれだけ化け物みたいな船を持ってるんだ……。」
係留が完了すると、両艦の間へ巨大な連絡橋がゆっくりと伸びていく。
ガシャン――。橋が固定された。
― 宇宙空母ノア中央作戦室
橋の反対側では、ノアの面々が到着を待っていた。
四人の神帝、その後ろには神帝付き秘書官ヤマモト・ウォン。さらにノアへ派遣されていた宇宙警察連合第六巡視艦隊司令キドウ・ゼンの姿もあった。
タカヤが笑う。
「そろそろ来る頃やな。」
その時だった。コン、コン、と靴音が響き自動ドアが開く。長いコートを羽織り、落ち着いた眼差し。
神帝マック・ファイヤ。
その後ろには大神官カガミ・ココミが続く。
ファイヤは一同を見るなり、小さく笑った。
「やぁ…久しぶり。」
タカヤも笑顔になる。
「おぉ!よう来たな。どうしたん?」
「どうしたん?って呼び出したのお前だろ。」
二人は軽く拳を合わせた。
「相変わらず捻くれてそうやな。」
「そっちこそ。」
空気が少し和らぐ。
その時だった。後ろから勢いよく一人の青年が飛び出した。
「神帝様…」
ゼンだった。
ファイヤは目を丸くする。
「おっ。」
ゼンは満面の笑みを浮かべる。
「お久しぶりです。」
ファイヤも思わず笑った。
「ゼンか…」
二人は固く握手を交わす。
「お前はどこでも元気やろな。」
「はい!当たり前です!毎日充実してますよ!」
その一言に周囲から笑いが起こる。ファイヤは安心したように頷いた。
「そうか。それなら良かった。実はノアに送った事ちょっと不安だった…」
ココミも微笑む。
「ゼンさん、お久しぶりです。ところでお姉様は?」
「ココミさんもお元気そうで。姉…いやキドウ・ヒメナ統合司令ならそろそろ来るはずですが…」
久しぶりの再会だった。
その様子を少し離れた場所から、一人の女性が見つめていた。ベガ女王オリヒメ。
ファイヤはその姿に気付き一礼する。
「ベガ女王陛下。」
オリヒメも優雅に頭を下げた。
「神帝マック・ファイヤ様。」
穏やかに微笑む。
「昨日中継で拝見しました。軍神彦星様は重症との事…なんと言っていいのやら…」
「彦星なら大丈夫よ…来てくれてありがとう…」
ファイヤは頭をかく。
「タカヤに『暇やったら来て』なんて言われましてね。本当は暇じゃなかったんですけど。」
タカヤが吹き出した。
「来てくれたやん。」
「同盟の危機だ…断れんよ…ダヴィンチもいる。」
二人は顔を見合わせて笑う。
オリヒメはその様子を見つめながら、小さく息をついた。
「太陽系の神帝たちは不思議ですね。」
アイズが首を傾げる。
「何がです?」
「戦場では誰よりも強いのに…普段はまるで昔からの友人同士のよう。」
モックが笑う。
「まぁ…普通に友人だからね…タカヤ君は一般家庭の生まれだし出会ったのも軍に入ってからだけど他は皆んな星の王家や権力者の一族…幼馴染みたいなものだから…」
メインも頷く。
「そだね…タカヤ君初めて見た時誰やねん!って思ったけどさ。気がつけば一番仲良いかも…
」
その言葉にオリヒメは優しく微笑んだ。
「…だからこそ、強いのでしょうね。」
港の外では、ノアとジャスティス、惑星ベガの旗艦アマノガワ
三隻の巨大艦が静かに並んでいた。
(続)




