三星同盟、崩れる静寂
― 三星同盟、崩れる静寂 ―
― アルタイル神殿・大会議室
「彦星様を運べ!医療班急げ!」
「外は危険だ!皆さん神殿内へ!」
銃声から僅か数十秒。
神殿前は怒号と悲鳴が入り乱れ、護衛兵たちは報道陣を押し込みながら神殿内部へ避難させていく。
医療班が血に染まった彦星を担架へ乗せると、静かに立ち上がった。胸元は真っ赤に染まり、医療班が必死に止血を続けている。
アイズが低く呟く。
「急所は外れてる…だが出血が酷い。」
オリヒメは唇を噛み締める。
「どうして…どうしてなの…こんな日に…。」
オレサキ・レンヤは会議資料を胸へ抱えたまま神殿奥へ移動しノアへ連絡していた。
「条約文書の確認を。」
「全て無事です!」
「良かった…。」
通信デバイスがヒメナと繋がる。
「条約文書は無事ですが彦星様が!」
「落ち着きオレサキ外務司令!生中継見てたよ。そこには神帝も大神官もおる大丈夫や、皆んなで生きて帰って来い。」
ヒメナが冷静に対応しようやく一息ついたその時だった。神殿中の照明が一瞬だけ明滅する。
「……?」
ブツッ。
壁一面に設置された大型モニター。
廊下。待合室。報道控室。神殿内すべての映像が一斉に乱れ始めた。
『ザーッ……』
ノイズが走る。
「何だ?放送設備の故障か?」
アルタイル兵がモニターへ近付く。
次の瞬間だった。ブツン。すべての画面が真っ黒になる。そして一人の男が映し出された。
黒い軍服、漆黒のマントに黄金の肩章。年齢は五十代ほど。鋭い眼光だけで周囲を圧倒する男…その姿を見たアルタイル政府高官たちの顔色だけが変わる。
「ま、まさか…そんな……」
「デネブ……。」
男は静かに笑った。
『諸君。』
惑星中の映像機器が同じ男を映し出していた。
「放送が乗っ取られた!全チャンネルです!」
通信兵が叫ぶ。
オレサキが険しい表情になる。
「電波ジャックか……。」
男は両手を後ろへ組み、堂々と立っていた。
『久しぶりだな、惑星アルタイルの諸君
オリヒメ女王そして…太陽系人類の皆さん。』
ゆっくりと笑う。
『私は惑星デネブ国家元首。
総統"デネブ・アルガス"』
会議室が静まり返る。
「……あれが。デネブ。」
アルガスは続ける。
『まず最初に。三星同盟締結。誠におめでとう。』
パチ……パチ……パチ……
その拍手だけが妙に不気味だった。
『実に素晴らしい。戦争を終わらせるための同盟。
平和を守るための約束。実に美しい理想だ。』
笑顔が消える。
『だからこそ。私は壊す。』
その一言だけで空気が凍り付く。
『先程の狙撃は我々デネブによる挨拶だ。
彦星は死んでいないようだが…惜しかった。』
アルタイル兵たちが怒りで拳を握る。
「貴様ぁ……!」
アルガスは続ける。
『私は戦争が好きなのではない。停滞が嫌いなのだ。争いは文明を進歩させ恐怖は国家を強くする。
平和とは弱者の幻想に過ぎん。』
オリヒメが静かに睨む。
「狂っている……。」
アルガスは画面越しに笑った。
『宇宙空母ノアと言ったか。貴様たちは面白い。
国家でありながら宇宙空母。神と人が共に暮らす方舟。我はデネブを訪れた"神"レオナルド・ダヴィンチ様より話を聞いた。ぜひ見てみたいものだ。』
タカヤは腕を組んだ。
「おっ、ダヴィンチはそこか…。」
『ヤザキ・タカヤ。』
突然、名を呼ばれ部屋の空気が張り詰める。
『君の事も聞いたぞ…前線でもあまり前に出ない、神になれる器のくせ恐怖している腰抜けだとな!我々惑星デネブは神格再編機関と手を組み宇宙の覇権を取りに行く…』
『三星同盟の最初の試練を楽しみにしている。ハハハ…』
ブチッ… モニターが通常画面に切り替わる。
タカヤの足元から青白い波動が噴き上がりバキッと大理石の床に蜘蛛の巣状の亀裂が走った。
会議室にいた全員が息を呑む。
「…あぁ…まずい。」
モックが思わず一歩下がる。
次の瞬間タカヤの裏拳が石像を粉砕した。
「何や今の…誰が腰抜けやと…俺は選んだだけや。あいつに何が分かるんや!ダヴィンチとあのクソジジイは俺が…」
タカヤは先程と逆側に置かれた石像も破壊する。
「タカヤ君!落ち着いて!」
モックは止めに入るがすぐには止まらない。
いつもは穏やかな神帝の怒りが最高潮に達そうとしていた。
(続)
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公開情報
・デネブ・アルガス 男性 五十代
惑星デネブ国家元首
神格再編機関と手を組む




