女王、出陣
― 女王、出陣 ―
― 惑星ベガ神殿
「女王陛下…戦艦"アマノガワ"、出航準備が整いました。」
静寂に包まれた神殿へ凛とした声が響く。
報告したのは、近衛騎士団長シオン・フェルナード。
銀白の鎧を身に纏う彼女は、“白銀の剣”の異名で知られるベガ最強の騎士だった。
「……あら、思っていたより早いわね。」
玉座から立ち上がった女王はゆっくりとバルコニーへ歩み寄る。
眼下には、整然と並ぶ五千名の兵士達。
誰一人私語もなくただ女王を見上げていた。
シオンが一歩前へ出る。
「今回の遠征部隊です。全員、出撃命令を待っています。」
女王は静かに頷き兵士達を見渡しそして澄んだ声で語り始める。
「諸君。」
その一言だけで広場は完全な静寂に包まれる。
「先ほど、友なる惑星アルタイルより報せが届いた。」
兵士達の表情が引き締まる。
「軍神彦星が、宙帝の帝神に敗れた。
私は…友が滅びる姿を黙って見ている事など出来ない。アルタイルは遥か昔から助け合ってきた友。
友が泣く時、我らもまた剣を取る。」
「そして宙帝は必ずアルタイルの次に、
このベガを狙うでしょう。」
少し間を置き、女王は静かに微笑んだ。
「私なら…そうするもの。」
その言葉に兵士達は頷く。
「だからこれは援軍ではない。」
女王は右手を高く掲げた。
「我ら自身の戦いだ。
さぁ、友のもとへ行こう。」
その瞬間シオンが巨大な軍旗を高々と振る。
「女王陛下に続け!」
「「「オリヒメ陛下!!」」」
「「「オリヒメ陛下!!」」」
五千人の声が神殿を震わせた。
― 数分後 ベガ宇宙港
全長五千メートル。
星織級超大型宇宙戦艦"アマノガワ"
まるで銀河を流れる天の川そのもののような、
美しく巨大な艦体の姿が港にあった。
兵士達は次々と乗艦していく。
ブリッジ最上階にある玉座へ腰掛けたオリヒメは静かに命じる。
「進路、アルタイル。」
「はい!」
「"アマノガワ"、全機関始動。」
ゴォォォォ……
巨大な推進器が青白い光を放つ。
「星織級超大型宇宙戦艦"アマノガワ"、出航。」
静かに艦は浮き上がり、ベガの空へ飛び立った。
その姿を国民達は祈るような表情で見送っていた。
― アルタイル陸上戦最前線
砲煙が立ち込める戦場。
倒れた彦星の前で、イザナ・グレイブは巨大な黒鎌を肩に担ぎ、深淵の帝神ゼル・アビスを見据えていた。
ゼルは口元を僅かに緩める。
「深淵の魔女“葬刃”イザナ・グレイブ。
…本気で来い。」
「言われなくとも。」
イザナの姿が消えた次の瞬間黒い軌跡だけがゼルへ一直線に伸びる。
「さすが元三羽烏!速い…!」
宙帝兵が叫ぶ。
ゼルは刀を抜く暇すらない。咄嗟に近くで倒れていた宙帝兵の刀を拾い上げ黒鎌を受け止める。
ガギィィィィン!!
しかしその刀はただの軍刀。
神器級の黒鎌には到底耐えられなかった。
刀身が真っ二つに砕け散る。
「なっ!」
そのまま黒鎌はゼルの右肩を深く切り裂き鮮血が宙を舞う。
ドサリ……
右腕が地面へ転がった。
宙帝兵達の顔色が変わる。
「あ、あ…帝神様の…腕が!」
ゼルは失った右腕を見つめ、小さく笑った。
「…ハハハ!…見事だ。
我が右腕を切り落とすとは!
やはり、お前は特別だ!」
イザナは表情一つ変えない。
「あの時お前を見捨てた事を…
少しだけ後悔しているよ。」
「後悔?もう一つ増やしてあげる。」
黒鎌を構え直す。
「次は左腕。」
再び踏み込む。
空気が裂けるほどの速度…狙いは寸分違わず左腕。
しかしゼルの左腕が黒く染まった。
「そんな簡単に奪われてたまるか。」
左腕へ深淵の力が集中する。
「深淵解放。」
ドォォォォォン!!
黒い衝撃波が半球状に炸裂した。
「くっ!」
イザナの身体が吹き飛ぶ。
空中で体勢を立て直そうとするが勢いは止まらない。
「イザナさん!」
タカヤだった。
両腕でイザナを受け止め地面を何十メートルも滑る。
「大丈夫?」
「…問題ありません。」
イザナはすぐに立ち上がる。
視線の先では、右腕を失ったはずのゼルの傷口から黒い霧が渦を巻いていた。
「ハハ!やっぱりな…。
そんなに上手い事行かんと思ってたんよ…」
タカヤが息を呑む。
黒い霧が傷口から溢れ出し、骨を形作り、筋肉を編み上げ、漆黒の右腕が再び生え始める。
「深淵の再生…。」
イザナが静かに呟いた。
ゼルは新たに生まれた黒い右腕をゆっくり握る。
「これが我が深淵。」
ゼルはそう呟く。
「イザナさん、ちょっと休憩な…」
「タ、タカヤ様!何故ですか⁈」
「先輩の動きを見るのもいいかもってね。
またすぐ交代するからさ…あとさ、確かに今は押していた。だけどね…このままじゃイザナさんが死んじゃうから…」
「は、はぁ…」
イザナは黒鎌を下ろしタカヤの横に立つ。
「じゃ、ノノカ…頼む…イザナさんに大神官の戦闘を見せてあげて…」
ノノカは驚いた顔をするがニヤリと笑い一言呟く。
「了解…任せて…神帝様…」
(続)
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公開情報
・惑星ベガ王国
織姫が統治する恒星国家。
・オリヒメ・ヴェガ・ルーナス 女性 年齢?
惑星ベガ女王陛下
ギフト"星織"
光の糸を操る。防御結界、艦隊通信補助、
敵艦拘束など…
・シオン・フェルナード 女性 年齢二十九歳
近衛騎士団長 異名「白銀の剣」
ギフト"光刃"
光の剣を生成。高速近接戦最強クラス。
・星織級超大型宇宙戦艦"アマノガワ"
ベガ艦隊旗艦。
全長約五千m 乗員約五千名
主砲"天河粒子砲"惑星間射程。
副砲"星光連装砲"二十四基
艦載機"星織式戦闘機"約三百機
特殊装備"天の川シールド"
広域防御結界、艦隊ごと守れる。
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