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ノア・アーク ― 神々と人が生きる方舟 ―  作者: ヤノチャン
十五章 アルタイル防衛戦

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深淵の帝神


― 深淵の帝神 ―


― アルタイル陸上戦最前線


砲煙に包まれた戦場の真ん中で軍神彦星"アルトリウス・アルタイル・レグナス"は、ゆっくりと大鉾を構える。


その正面には一人の男、深淵の帝神――ゼル・アビス…二人が向かい合った瞬間戦場から音が消える。


「来い。」


ゼルが静かに呟く。


彦星は笑う。


「望むところだ。」


次の瞬間二人の姿が消える


衝撃だけで大地が砕け周囲の兵士達は吹き飛ばされる。


「速い!」


アルタイル兵が叫ぶ。


彦星の大鉾が唸りを上げる。一撃、二撃、三撃と連続で…全てが山を砕くほどの威力だ。

しかしゼルは最小限の動きだけで避け続ける。


「ほぉ…避けるだけか…」


彦星が笑う。


「まだだよ。軍神。」


ゼルは淡々と答えた。


その瞬間彦星の大鉾が横薙ぎに振るわれる。


ズガァァァン!!


ゼルは数百メートル吹き飛ばされアルタイルで一番の高層ビルの中層に直撃しアルタイル軍から歓声が上がる。


「やった!彦星様が押しているぞ!」


土煙の中からゼルがゆっくり立ち上がり裾に付いた埃を払う。


「…ふむ…なるほど。やはり貴様は強い。」


その目だけが笑っていた。


彦星は大鉾を肩へ担ぐ。


「今さら知ったか。」


「自惚れるな…我の前では無力だ…」


再び激突。


剣戟が響くたびビル崩れ大地が裂ける。

戦場は既に二人だけの世界になっていた。

やがて彦星の鉾がゼルの肩を撫でる。


「我の服に傷を付けるとはな…」


彦星が言う。


「次はその身体に…本気でいくぞ!」


ゼルも頷く。


「我もだ。」


ゼルの刀身から黒い霧が立ち昇る。


まるで底なしの闇…周囲の光を飲み込むような深淵。


彦星の表情が変わる。


「それが……。」


「我が深淵。」


ゼルが刀を静かに構え一歩踏み込む。

その一歩を捉えられた者は誰一人いなかった。


ドスッ。静かな音だけが響き彦星の身体が止まる。


彦星はゆっくり視線を落とすと黒い刀が胸を貫いていた。


「…ぐっ。」


ゼルは刀を引き抜く。


大量の血が地面を染め彦星は膝をついた。


それでも倒れずに大鉾を支えに立ち続ける。


「我は……軍神……八代目……彦星…….最後まで……立つ……」


「…軍神よ…見事だ。」


その言葉を聞き終えた彦星はそのまま前へ倒れた。


「彦星様ぁぁぁ!!」


アルタイル兵達の悲鳴が戦場へ響く。


誰一人前へ出られない…軍神が敗れた。

その事実だけで全身から力が抜けていく。


膝をつく兵士、泣き崩れる兵士、武器を落とす者までいた。


ゼルは静かに刀を払う。


「惑星アルタイルの諸君…これが現実だ。今からでも遅く無い…降伏し我ら宙帝の手駒となれ…」


深淵の帝神は倒れた彦星を見下ろした。


その時、遠くの空から轟音が響く。


ゴォォォォォォ!!


「ん?何だ?」


宙帝兵達が空を見上げる。


白い衝撃波を引き裂き一隻の黒い高速輸送艇が戦場へ突入する。


「飛行艇!?あれはノアの船だ!」


スレイプニルは減速することなく地面すれすれを滑空し倒れた彦星の前へ着地した。


「ほら、神帝様達…着いたよ…」


ミミのその言葉のすぐ後、後部ハッチが勢いよく開く。


最初に降り立ったのは神帝タカヤ…

最後に降り立ったのは黒い軍服を纏った一人の女性。


"イザナ・グレイブ"


ゼルの顔に笑みが生まれる。


「…イザナ。」


イザナも静かにゼルを見つめ返す。


「お久しぶりです。」


二人の間に風が吹く。


「生きていたか。」


「えぇ。」


イザナはゆっくりと剣を抜いた。


「お陰様で。」


ゼルは薄く笑う。


「早く戻って来い。三羽烏を作り直そう…まだ貴様の席は空けてある。」


イザナは首を横に振る。


「お断りします。貴方は私との契約を破棄し壊れかけの星に捨てました…私はもう…ノアの人間です。」


その一言にゼルの笑みが静かに消えた。


「あぁ…そうか。ならば…殺すまで…」


黒い刀がゆっくり持ち上がる。


タカヤも前へ出る。


「ここからは俺達が相手やな…俺がバックアップする。イザナさん…暴れてき!」


深淵の帝神と元三羽烏の戦闘が始まろうとしていた…


ー ノア艦橋


依然として宙帝艦からの超高密度放射砲の砲撃を受けていたが深海にいるノアには届かない…


「あ、あぁ…彦星様…彦星様!」


モニターを通して全てを見ていたアマギはその場で泣き崩れヒメナが駆け寄る。


「アマギさん…まだ希望はある…」


「適当な事を言わないでください!私達の王が!象徴が!あそこで血を流して倒れているのです…」


「泣いてても戦争は終わらんよ!現場に着いた大神官の情報では彦星さんはまだ生きてる。諦めるな!

お前らの星やろ!私達は今できる事をやるんや。

まずあの旗艦を沈める!」


ヒメナはそう言うとモニターの中心に写る大きな赤点を指差した。


その言葉を聞いた後アマギは立ち上がり涙を拭った。


ー 惑星ベガ神殿


「女王陛下!アルタイルの軍神彦星が宙帝の帝神に敗れました!生死不明!」


誰が大声で叫ぶ。


「ほぉ…彦星が…早急に船の準備をしろ…」


「はっ!」


「七夕には少し早いが…行くとしよう…」


(続)







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