帝神降臨
― 帝神降臨 ―
― 深淵大艦隊旗艦"ネヴァ・アビス"
超高密度放射砲の放射によりアルタイル沖の海は白く沸き立っていた。
艦橋では誰一人として声を発しない。
中央の玉座に座る男だけが、静かにモニターを見つめていた。
深淵の帝神――ゼル・アビス。
「……。」
巨大なモニターには、依然として砲撃を続ける艦隊と、防御システムによって守られるアルタイルの都市が映っている。
副官が膝をついた。
「帝神様。敵艦ノアの姿は確認できません。」
ゼルは小さく笑う。
「まだ出てこないか…さすがに深いな。」
「はい。」
「煩わしいな。」
副官は続ける。
「ですが、揚陸作戦は予定どおり進行しております。
敵の高速艇も気になる所ですが…
あと二度の砲撃で半分以上は海の底…ですが…」
ゼルは立ち上がった。
長い黒い外套が静かに揺れる。
「何か言いたい事でもありそうな顔だな…
半分いれば十分だ。
高速艇?そんな物放っておけ…」
その一言だけで艦橋の空気が変わる。
「はっ!十分でございます…」
ゼルは横に置かれた刀を取る。
「帝神様…まさか。」
「あぁ…我が出る。」
艦橋中の兵士が息を呑んだ。
「帝神様自らですか!」
「相手は軍神彦星。雑魚共では役不足だ。」
ゼルは歩き始める。
艦橋の扉が開き誰もが道を譲る。
「我が首を取ればこの戦争は終わる。
ならば挑ませてやろう。」
― アルタイル軍最前線
アルタイル軍は勢いは最高潮に達していた。
「押せ!今なら押し返せる!」
彦星が大鉾を振るう度に宙帝兵が吹き飛ぶ。
その姿に兵士達の士気は最高潮へ達していた。
その時だった遠くの空が黒く染まる。
「……?」
誰もが空を見上げる。
一人の男が空からゆっくりと降りてくる。
翼も推進器もないその男はただ空中を歩いていた。
「な……。」
アルタイル兵が震える。
彦星だけは静かに空を見つめた。
「ハハハ!骨がありそうな奴が来たな!」
男はゆっくりと地面へ降り立つ。
着地の衝撃だけで周囲数百メートルに亀裂が走り砂煙が舞う。
沢山のアルタイル兵、宙帝兵が吹き飛ばされた。
やがて砂煙の中から声が響く。
「初めまして…かな?」
彦星は大鉾を握り直す。
「我の名は宙帝軍最高幹部
深淵の帝神ゼル・アビス。お前が彦星…だな?」
「あぁ…我の名は八代目軍神彦星である。」
彦星は大鉾を向ける。
「其方の首…頂戴致す。」
ゼルは薄く笑う。
「貴様程度に取られるほど安くはない。」
「そうか。」
彦星も笑う。
両軍が一斉に距離を取る。
帝神と軍神。
この二人の戦いに巻き込まれれば生き残れない。
ゼルは右手をゆっくり上げる。
「始めよう。」
彦星は大鉾を構えなおす。
「望むところだ。」
次の瞬間
ドォォォォンッ!!
その場に衝撃波を置いて二人の姿が消える。
激突した衝撃だけで周囲数キロの大地が砕け
空が割れ、海が揺れ…アルタイル全土を震わせる轟音が響き渡った。
帝神と軍神。
銀河最強クラスの二人による戦いがついに幕を開けた。
ー 高速輸送艇スレイプニル
彼らの所にもその衝撃は届いていた。
タカヤが窓の外を見る。
「始まったみたいやな…」
「あぁ…帝神ゼル・アビスが地上に降りたらしい…」
艦長のリクは状況を伝える。
タカヤはイザナの姿を見る。
元深淵三羽烏イザナ・グレイブの目は燃え上がっていた。
(続)




