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ノア・アーク ― 神々と人が生きる方舟 ―  作者: ヤノチャン
十五章 アルタイル防衛戦

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迫る深淵


― 迫る深淵 ―


― 宇宙空母ノア・中央会議室


「帝神か…この距離やとすぐには来ません。

とりあえず艦橋に移動しましょうか。」


副司令シャルルは冷静にそう告げた。


慌てる者は一人もいない。

幹部達は素早く立ち上がり、それぞれ資料や端末を持って艦橋へ向かう。


会議室を出たその時…タカヤは歩きながらデバイスを耳に当てる。


通信相手は、元宙帝深淵三羽烏イザナ・グレイブ。


「イザナさん、今大丈夫ですか?」


『大丈夫です。ボス。』


通信越しから落ち着いた声が返ってくる。


『今はリリア様とお茶をしています。』


「あぁ…そうか。休みの所悪いな。」


タカヤは少し申し訳なさそうに笑う。


「今から艦橋に来て欲しいんやけど来れるか?

リリアさんも一緒でええから。」


通信の向こうで少し間が空く。


イザナの声色が変わった。


『了解致しました。すぐ向かいます。』


「頼むね。」


ガチャ……通信は切れた。


― ノア艦橋 ―


艦橋では既に観測員達が慌ただしく動いていた。


巨大スクリーンには、アルタイル宙域外縁部の戦術マップ。


無数の赤い光点。


その数は刻一刻と増えている。


「敵艦隊、減速。超空間転移終了。」


「戦闘隊形を展開しています。」


管制官達の報告が次々と飛ぶ。


その時後方の自動扉が開いた。


「失礼します。」


イザナとリリアが艦橋へ入ってくる。


イザナはスクリーンを見た瞬間、表情が凍りついた。


「…あれは。」


拳が自然と握られる。


「深淵大艦隊…ゼル…。」


その一言に、誰もがイザナへ視線を向けた。


ヒメナが静かに頷く。


「やっぱりそうか。」


イザナはモニターへ歩み寄る。


「さっきの宙帝艦隊が応援を呼んだのでしょう。」


赤い光点の中心を指差す。


「この巨大な反応が深淵大艦隊旗艦ネヴァ・アビスよ。」


その名を聞いたアマギも息を呑む。


イザナは続ける。


「あそこにいるのは深淵の帝神ゼル・アビス。」


司令室が静まり返る。


「惑星ケプラーで最高幹部はほぼ全滅しました。

ですが深淵大艦隊は別です。

戦闘員は全員、精鋭。

三羽烏が率いていた直属部隊より、更に上。」


その説明にオダイが腕を組む。


「厄介やな…」


タカヤが隣へ歩く。


「帝神はイザナさんがやる?」


イザナは苦笑した。


「無理ですよ。」


即答だった。


「ゼル・アビスは…私の上位互換よ。

能力も戦闘技術も統率力も…全てが上です。」


少しだけ目を伏せる。


「ですが…」


握った拳に力が入る。


「私を切り捨てた事だけは後悔させる。」


タカヤは笑った。


「その時が来たら俺も手伝うよ。」


その時だった。


「ならばその時は我も共に戦おう。」


全員が振り返る。


彦星は堂々と立っていた。


「ゼルが帝神なら。

こちらも神帝と軍神!負ける理由は無い。」


その言葉にタカヤも顔を伏せ小さな声で呟く。


「さぁ…それはどうかな?」


その一言に気がついたのは隣にいた神帝モックだけだった。


彦星はヒメナへ向き直る。


「我は軍部へ戻る。」


「アマギ。」


「はい。」


「お前はノアへ残れ。ノアの戦い方を学んで来い。

外交だけでは見えぬものがある。」


「…承知しました。」


彦星はヒメナを見る。


「良いかな?ヒメナさん。」


ヒメナは笑顔で頷いた。


「もちろんですよ。」


そして通信を入れる。


「輸送部隊。」


『はい。』


「彦星様をアルタイル軍部まで。」


『了解しました。』


艦橋横のヘリポートでは既に輸送ヘリのローターが回り始めていた。


隊員が敬礼する。


「彦星様、こちらです。」


彦星はゆっくり歩き出す。


出口で一度立ち止まり、振り返った。


「ノアの戦士達よ。」


その場の全員を見る。


「また会おう。」


最後にその視線は、記録員ミナト・ローウェルへ向けられる。


目が合う。


彦星は優しく微笑み小さく頷いた。


ミナトは敬礼を返す。


静かに自動扉が閉まり艦橋には再び緊張が戻った。


モニターにはなおも接近を続ける深淵大艦隊。


その艦橋では、深淵の帝神ゼル・アビスが静かにアルタイルを見据えていた。


「タカヤ?随分と自信が無さそうね…」


モックが話し始めた。


「いや、そんな事はないけどさ。

多分彦星さんは負けた事が無いんだよ…

帝神ってさ、そんなに甘く無いからね。」


「帝神とはそんなに手強い者なのですか?」


「あぁ…恐ろしいよ…」


そう言い椅子に深く腰掛けた。


ー 深淵大艦隊旗艦ネヴァ・アビス 艦橋


「帝神様!惑星アルタイルを目視で確認!

情報では宇宙空母ノアがいます。」


「あぁ…下がれ…」


ゼルはモニターを見つめ不適な笑みを浮かべた。


「アルタイルは我ら宙帝の物となる…」


(続)




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