会談の始まり
― 会談の始まり ―
― 宇宙空母ノア・後方統合司令室
「さぁ…アルタイルとノア、正式な会談を始めようではないか…」
彦星のその一言で、司令室の空気が一変した。
先程まで笑い声が響いていた部屋は静まり返り幹部達もそれぞれ席に着く。
ヒメナは円卓の一席を手で示した。
「どうぞ。彦星様。アマギさんも座ってね。」
「失礼する。」
彦星はゆっくりと腰を下ろす。
「失礼致します。」
アマギはその隣へ。
記録員ミナトは静かにカメラを構える。
カシャ…この一枚が歴史に残る。
異星文明同士の初めての正式会談…誰もがその重みを理解していた。
ヒメナが口を開く。
「まずは改めて自己紹介からかな。」
「私は宇宙空母ノア統合司令キドウ・ヒメナ。」
彦星も軽く頷く。
「アルタイル統一政府最高軍事責任者、八代目軍神彦星、アルトリウス・アルタイル・レグナス。」
二人は改めて握手を交わした。
「まず初めに…ルールについて…」
彦星が話し始める。
「先程サラッと聞いたのだが王をも支配するルールがあると言うのは本当か?」
ヒメナが答える。
「支配か…その言い方は嫌いかなぁ…
簡単に言うとね私達ノアに住む者たち皆んなが楽しく安全に過ごす為の約束…的な感じかな。
このルールはね…ノアの住民皆んなで話し合って決めた。名声や権力よりも上の存在感…」
「ごめん!ちょい分かりにくくなったわ。」
彦星が頷く。
「いや、よくわかったよ。
我らアルタイルに足りないものだよ。
…良ければそのルールを作るのを手伝って欲しいのだが…頼めるか?」
「もちろんや。今から専門家を呼ぶよ。」
数分後…
『失礼するよ…』
扉を開けて一人のエルフが入ってくる。
彼女は太陽系のエルフ"バルサルナ"
「久しぶりだね…ヒメナさん…」
「あぁ…お久しぶりです。どこにいたのですか?」
「基本はミュージアムかな?」
(見かけない訳だ…)
「バルサルナ様に頼があります。
八代目やアルタイル政府と共に法律を作っていただきたい…」
「八代目…法律…」
バルサルナは少し考える。
「いいよ。暇だしね…
ただ条件がある。我は外に出るのが嫌だ…
場所はミュージアム内の会議室で…」
「もちろんだ…よろしく頼む…」
彦星が頭を下げる。それを見たバルサルナはボソッと呟く。
「五代目にそっくりだ…」
その声は聞こえない…バルサルナはゆっくりと部屋を出た。
「さて…次の議題に入ろう。」
シャルルは机の上へ一枚の立体星図を映し出す。
青白い光が部屋を照らした。
そこにはアルタイル周辺宙域が映っている。
無数の赤い印。
「これが現在確認されている宙帝軍の活動宙域だ。」
赤い点は数え切れない。タカヤは思わず息を呑む。
「おぉ…多いな…」
彦星は話し始める。
「アルタイルは長年この宙域で戦い続けている。
勝てる時もある。だが兵力差だけはどうにもならん。」
ヒメナも真剣な表情になる。
「やっぱり補給能力か…」
「その通り。」
彦星は頷いた。
「宙帝は一艦隊を失っても、数週間で補充してくるが我々は違う。兵士一人育てるにも十年以上。
艦一隻建造するにも数年。」
司令室は静まり返る。
戦争の現実だった。
オダイが腕を組む。
「どこも同じやな。」
「大型艦の建造は簡単ではありませんからね。」
ヤマトも資料をめくる。
「弾薬にも限界があります。」
彦星は少し笑った。
「それでも今日、あれだけ撃っていたが。」
全員の視線がヒメナへ向く。
ヒメナは苦笑した。
「私じゃないよ!チョウカちゃんやからね。」
司令室に小さな笑いが起きる。
シャルルはため息をつく。
「私は毎回胃が痛くなります。」
「それで本題だ。」
「ノア。」
「我々アルタイルは貴国との軍事同盟を望む。」
その一言で司令室が静まり返った。
軍事同盟…それは互いの戦争へ介入することを意味する。
ヒメナは腕を組み、ゆっくり考える。
「……。」
オレサキが静かに口を開いた。
「統合司令。軍事同盟は慎重に判断すべきです。
一度締結すれば、ノアもアルタイルの戦争当事者になります。」
ヤマトも頷く。
「外交上の影響も大きいでしょう。」
彦星は静かに答えた。
「もちろん理解している。だからこそ無理強いはしない。私は提案しただけだ。」
その姿を見てタカヤが口を開く。
「一つ聞いてもいい?」
「構わない。」
「彦星様…もし立場が逆やったら?我々太陽系宇宙連合が滅びそうで、アルタイルに助けを求めたら。
助けてくれるの?」
彦星は迷わなかった。
「当然だ。困っている友を見捨てれば、
それは軍神ではない。」
「でもな。私はまだ答えは出さん。」
彦星は静かに頷く。
「当然だ。」
「ノアだけじゃない太陽系、国家の未来を決める話や。一日では決められん。」
ヒメナは立ち上がる。
「まずは互いを知る事からや…
その上で互いが納得できる関係を築きたい。
アルタイルの代表団を地球に招待するのもいいかもね。」
彦星も立ち上がった。
「異論は無い。」
再び二人は握手を交わす。
その瞬間だった。ピピピピッ…
司令室に通信音が鳴り響き通信士が慌てて立ち上がる。
「統合司令!長距離監視衛星より緊急報告です!」
ヒメナの表情が引き締まる。
「どうした?」
通信士はモニターを見つめたまま報告する。
「アルタイル宙域外縁部に超空間転移反応を確認!」
「反応数……一つ、二つ……」
その数を数えていた通信士の顔色が変わる。
「ば、馬鹿な…。」
司令室の全員がモニターを見る。
「超空間転移反応…百二十六。」
誰かが息を呑んだ。
「宙帝艦隊です!帝神の乗る旗艦の反応有り!」
その報告に新たな戦争が始まる気配があった。
(続)




