軍神の一撃
ー 軍神の一撃 ー
― アルタイル陸上戦最前線
「押し返せぇぇぇ!」
戦場に怒号が響く。最前線では八代目軍神彦星が巨大な大鉾を振るっていた。
ブォォン!!
一振り…それだけで宙帝兵がまとめて吹き飛ぶ。
土煙が舞い、数十…いや百名近い兵士が宙を舞った。
「進めぇ!!軍神様に続け!!」
アルタイル軍の士気は最高潮に達していた。
本来なら宙帝軍はアルタイル軍の倍近い兵力を有している。しかし今、その勢いは完全に逆転していた。
軍神一人の存在が戦況そのものを覆していた。
少し離れた場所でタカヤは戦いながら目を輝かせていた。
「メイン!今の見た!?」
「見た見た!」
「ばっ!ってやったら、ばぁーん!!って百人ぐらい吹っ飛んでったで!」
驚きすぎて語彙力が完全に消えていた。
メインは笑いを堪えきれない。
「ハハハ!タカヤ、全然伝わってないよ!」
その時だった。
「よそ見するな!神帝!」
六人の宙帝兵が一斉に斬りかかる。
「おっと。」
タカヤは刀を一閃。
六人全員の武器だけを斬り飛ばし、そのまま拳と蹴りで一瞬にして戦闘不能にした。
「はい、お疲れさん。」
その様子を見ていた彦星は静かに頷く。
「ほぉ……。」
口元が少しだけ緩む。
「確かに神帝と呼ばれるだけはある。」
その時、前線から叫び声が響いた。
「軍神様!あれが宙帝の本丸です!」
全員の視線が向く。
数キロ先の巨大な指揮車両とその周囲に広がる仮設基地…宙帝軍司令部だった。
彦星は何も言わずにゆっくりと大鉾を握る。
「終わりだ。」
全身の力を込めて投げ放つ。
ドォォォォォン!!
大鉾は流星となり空を裂き兵士全員が見上げる。
次の瞬間。
ズガァァァァン!!
宙帝司令部へ直撃。宙帝軍には退避の時間も与えられなかった…
指揮車両ごと仮設基地が吹き飛びババンカ陸軍司令も爆炎の中へ消えた。
戦場が静まり返る。
アルタイル軍が歓喜に包まれた。
彦星は拳を高々と突き上げる。
その姿に兵士達は一斉に武器を掲げた。
「軍神!!軍神!!軍神!!」
歓声が戦場を埋め尽くしアルタイル地上戦は"一旦"その幕を閉じた。
― 宙帝大艦隊旗艦・艦橋
艦内は炎に包まれていた。
警報が鳴り止まない。
「火災発生!第五機関室炎上!
おい!早く消さんかい!」
「後方艦隊壊滅!」
ローズは額から流れる血を拭う。
モニターには撤退する艦隊が映る。
「なんだ…あの砲撃は。
ノアの戦闘データとはまるで違う…。」
静かに拳を握り燃える艦隊を見つめながら呟く。
「次は……負けない。」
宙帝大艦隊はアルタイル宙域から後退を開始した。
― 宇宙空母ノア・艦橋
「チョウカ司令代理!」
通信士が振り返る。
「キドウ統合司令がお戻りになりました!」
「あっ、そぉ?」
チョウカは大きく伸びをする。
「私の時間も終わりかぁ。」
自動扉が開きヒメナ達が艦橋へ戻ってきた。
モニターには炎上しながら撤退する宙帝艦隊が映っている。ヒメナはそれを見るなり笑った。
「チョウカちゃん。」
「はい?」
「えらい派手にやったみたいやな。」
チョウカは照れくさそうに頭を掻く。
「いえ、やるべき事をやったまでです。」
「ハハハ!」
ヒメナは豪快に笑う。
「チョウカちゃん残しといて正解やったわ。」
その横でシャルルが首を傾げる。
「私じゃ駄目でしたか?」
「シャルル君は慎重派やからなぁ〜。」
ヒメナは笑いながら続けた。
「逆にチョウカちゃんは勢いで全部沈めかねん。
よく深追いせんかったよ。」
「ちょっ……!」
シャルルが抗議する。
「私だってやる時はやりますよ!」
「別にやらんでええんよ。」
ヒメナは肩を叩く。
「管理職ってのはな…バランスが大事や。
せやから私は二人を副司令に選んだんやで。
勢い派と慎重派…そんで真ん中の私…」
シャルルは苦笑し、チョウカも照れ笑いを浮かべる。
「また頼むな。」
ヒメナが言うとチョウカは姿勢を正し、敬礼した。
「了解です、統合司令。」
軍服の羽織を脱ぎ、肩に掛ける。
「じゃあ私はミュージアムに戻ります。」
「お疲れさま。」
チョウカは笑顔で艦橋を後にした。
その背中を見送りながらヒメナは静かに呟く。
「さて…今度は外交の時間やな。オレサキ君…仕事やで。」
オレサキ外務司令は静かに手を挙げる。
(続)




