戦場へ降りた箱舟
ー 戦場へ降りた箱舟 ー
― 宇宙空母ノア・艦橋
「次元潜艦!全艦別次元に退避!
全、宙間魚雷避けられました!」
観測員の声が響く。
「やっぱり隠れたか…」
ヒメナは小さく呟く。
「次元潜艦やのに堂々と出てきてるからおかしいと思ってたわ…」
アーサーが前に出る。
「位置の特定を急げ!いつくるかわからんぞ!」
「次元波解析始めてます!」
「敵反応ロスト!」
「いや…違います!」
別の観測員が叫ぶ。
「全艦周囲に次元歪曲反応!潜ったまま包囲しています!」
艦橋の空気が張り詰める。
ヴァルディアはモニターを睨む。
(見えない敵…これが宇宙戦…)
ピピピピ!!
「敵魚雷接近!!」
「来るよ!」
「デコイ散布急げ!」
ノア後部から無数の発光体が放出される。
「間に合いません!」
「防御癖は!」
「距離が近すぎる!間に合わん!来るぞ!」
ドゴォォォン!!
艦が大きく揺れた。
「左舷後部被弾!第二外壁損傷!」
「被害軽微!」
ドゴォォォン!! 続けて衝撃がくる。
「右舷中央にも命中!」
ヴァルディアが思わず手すりを掴む。
「くっ…!」
艦橋に火花が散り電気が点滅している。しかし誰も慌てない。
「第三装甲健在!人工重力維持!」
「コロニー区画に被害確認無し!」
ヒメナは誰よりも冷静だった。
「ふぅ…久しぶりだね…艦内被害確認よろしくね…
目視で…」
「了解!」
艦内保安部隊が走り出した。
アーサーが笑う。
「じゃ、反撃といこうか。」
「敵次元波、再浮上の兆候!」
「今や!」
アーサーが叫ぶ。
「超空間魚雷発射管解放!」
艦橋後方モニターに特殊弾頭表示が表示された。
【超空間魚雷 装填完了】
「座標固定、敵次元潜艦五艦を捕捉しました!」
「さぁ…逃がすなよ。」
「発射!!」
ゴォン!!
超空間魚雷が宇宙へ飛び出し魚雷が別次元へ消えた。
「敵、回避行動を開始!」
「ハハハ!遅いぞ!」
観測員が息を飲む。
「命中まで三…二…一…」
閃光と共に次元断層が弾け飛ぶ。
「命中確認!」
「敵次元潜艦仮称一番艦撃沈!」
「続けて仮称二番艦も爆沈!三、四、五番艦沈黙!」
艦橋が揺れる。
空間の裂け目から爆炎が噴き出した。
ヴァルディアは絶句する。
「…別次元にいる敵を…撃ち抜いた…」
「見た事なかった?」
「一度ありますが何度見ても…」
「この兵器を見るといつも思う。時代は変わるんだよな…」
タカヤが静かに言う。
「敵残存六!なお追撃中!」
「しつこいねぇ…」
再び警報が鳴る。
「敵魚雷接近!」
「回避!」
ノアが巨体とは思えない動きで旋回する。
しかし完全には避けきれない。
ドゴォォン!!
「第四推進区画被弾!外装甲損傷拡大!」
「左舷アンカー格納庫に損害を確認!」
アーサーが静かに笑う。
「ハハハ!この程度で沈む船じゃないな!」
ヒメナが前を見る。
「敵の包囲は崩れたね。」
モニターに惑星ケプラーが映る。
「じゃ、ケプラーへ降下する。」
「宇宙で潜水艦ごっこ続けてもキリないからね。」
ヒメナは椅子に座る。
「降下コース固定!重力制御開始!」
宇宙空母ノアがゆっくりとケプラー大気圏へ降下していく。
― 数十分後
巨大渓谷地帯。
戦場から離れた岩盤地帯へ巨大アンカーが撃ち込まれる。
ガギィィィン!!
「アンカー固定確認!」
「艦体安定。」
「着艦完了です!」
ヒメナが立ち上がる。
「総員被害確認。」
「外壁損傷率八%、推進区画一部破損」
「死者なし、軽傷者三十名」
「コロニー区画安全確認済み」
「上出来!」
その時。
艦外モニターに無数の作業灯が映る。
「艦外補修隊、出ます!」
ノア外壁へ作業員達が向かっていく。
磁力ブーツを履き溶接機を背負う。
ヴァルディアはその姿を見つめる。
「…あの人達も戦っているのか…」
ウォンが静かに答える。
「えぇ。」
「ノアはね…戦う人だけで動いてる船じゃないの。」
渓谷の上空ではまだ遠く砲火が光っていた。
ケプラー戦線。
その地獄の中へノアはついに降り立った。
「タカヤ!準備しててね…あなたの出番は近いかもよ…」
ヒメナはタカヤを見る。
「了解した。」
そう言い残し艦橋を出た。
(続)




