戦争前夜の円卓
ー 戦争前夜の円卓 ー
― 宇宙空母ノア・中央会議室
重厚な円卓を囲む二十名の最高幹部達で座っていた。
艦内でも限られた者しか入れない絶対中枢。
その空気は静かに張り詰めていた。
「……こんな場所に私がいていいのかしら?」
リリア・ヘリオスが小さく呟く。
いち軍需企業の取締役の彼女はこの場にいる事に不安に思っていた。
ヒメナは軽く笑った。
「貴女はもう最高幹部よ。
自信を持って座りなさい。」
周囲の幹部達も静かに頷く。
それだけで十分だった。
リリアは小さく息を吐き席に座り直す。
「それでは始めますか……」
艦長オダイの声。
会議室の空気が切り替わりモニターには惑星ケプラーが映し出された。
その地表は赤く染まり無数の爆炎が広がっている。
「本部からの依頼内容は単純。」
オダイが資料を開く。
「戦況偵察及び必要時介入。」
「必要時ってレベルじゃないけどね。」
戦争司令アーサーが食い気味に口を挟む。
「はぁ…もう完全に巻き込まれてるよ。戦闘は二週間以上継続中。」
映像が切り替わる。
「ほら、見てよ…惑星の地形そのものが変わり始めてる。」
誰も軽口を叩かなかった。
外務司令オレサキが資料を眺めながら呟く。
「……問題は“行く必要があるのか”だ。」
(行きたくない…)
静かな声。
「創造神ダヴィンチ。
深淵の帝神ゼル・アビス。
その両方が前線に存在している。」
指で机を軽く叩く。
「そこへノアが介入する。控えめに言って最悪だ。
はぁ…行きたくない…」
「オレサキ、心の声が漏れてるよ…
まさに“飛んで火に入る夏の虫”ね。」
誰かが苦笑した。
ヒメナは視線を横へ向ける。
「宙警連はどう考えてる?」
急に話を振られたゼンが固まる。
「お、俺ですか……?」
(話すつもりなかったんやけど……)
軽く咳払い。
「ファイヤ総監からの命令は二つ。
創造神ダヴィンチの封印。それと神格再編機関幹部の逮捕……もしくは暗殺です。宙帝に関しては何も言われていません。」
会議室の空気が少し重くなる。
「暗殺、ねぇ……」
ヒメナは頬杖をついた。
「簡単に言うよね。」
ゼンは苦笑するしかない。
「神帝側は?」
今度はモックが口を開く。
「私達は命じられた戦場へ行くだけよ。」
その目は真っ直ぐだった。
「……次は負けないわ。もしガランがいるなら……
今度こそ決着をつける。」
その言葉に戦争司令アーサーがニヤリと笑う。
「頼もしいねぇ。」
ヒメナは今度はリリアを見る。
「リリアさん。ゴッド・スレイヤーは?」
「使用可能よ。」
即答だが続く言葉は重い。
「ただし一発が限界かな…
まだ研究段階だから連続運用は無理。」
「再装填時間は?」
「急いで一時間。」
リリアは静かに答える。
「それ以上急ぐと精度が落ちる。
最悪、暴発する。
その時…
ドンドンドン!!
中央会議室の扉が激しく叩かれた。
「失礼します!!」
「入りな。」
扉が開く。
息を切らした観測員。
「報告します!!
惑星ケプラーを目視で観測しました!!」
会議室が静まり返る。
ついに来た…ヒメナは静かに立ち上がる。
「…よし。」
全員を見回す。
「持ち場に戻って。仕事するよ。」
最高幹部達が一斉に立ち上がる。
椅子が引かれる音や資料を閉じる音。
宇宙空母ノアはついに惑星ケプラー宙域へ足を踏み入れた。
(続)




