7 貴方でしたか
「気がついたか」
目を覚ますと視界に入ったのは白い天井。そして声のする方を見るとそこにいたのはどこかで見たときのあるような男子生徒がいた。彼は私が目を覚ますまでずっといてくれたようだ。なぜなら、第一声は落ち着いていたが私が起きたとき驚きの意味なのか座っていた椅子から反射的に起立していた。確かにあんなに派手に落ちたら心配するか。
というかこの人は私を助けてくれたのか。感謝をしなければ。
「えっと……どなたか存じ上げませんが、助けていただきありがとうございます」
「いや、助けたのは……。……なんでもない。礼を言われるまでのことはしていない」
初めの方は何言ってるかわからなかった。が、この人どこで見たっけな。なんか見覚えのあるような、ないような。どこにでもいる顔でもないし。彼は平凡な顔ではなく、希少なイケメンの部類に入ると思う。……ゲームの世界ではイケメンが普通だけど。でも学校ですれ違う男子生徒よりも遥かに顔が良い。
「私、あなた様とお会いしたことがありましたか……?失礼な質問ですがお許しください」
「っ!まさか覚えているとは。……嬉しいこともあるのだな。私の名前はローズンメードリア・ウィリアムだ。リリアーナ嬢とは2年前の茶会以来かな。残念ながら話す機会は得られなかったが」
__あっ!メードリア・ウィリアム。名前を言われたら思い出した。国王の息子。次期国王候補にして、このゲームのメイン攻略者。私が会ってはいけない人ランキング栄えある第1位。しまった。あの茶会で話していないせいもあり、まともに顔を見ていなかった。ナイツハイルにばかり気を取られ過ぎていた。
「ウィリアム殿下でしたのねっ。その節は申し訳ありません……。挨拶に行こうと思っていたのですが……」
ウィリアムの取り巻きの女子が多いもんで。それと、話したくなかったし。
「いいや、今こうして話せたから良いのだ。それより……茶会の後の手紙は読んでくれたのだろうか?」
「手紙、ですか。私はウィリアム殿下からお手紙をもらったようなことは知りません」
手紙?ウィリアムが私に手紙を見て送ったとか初耳だ。
「ならよかった。……実はリリアーナ嬢からの返事が来ないから不快に思われているとばかり思っていたのだ。ナイツがあなたに失礼なことを言ったことと……私がもう一度面会を申し出たことに」
「そ、そのようなことはございません!何かの手違いで私に殿下のお手紙が届かなかっただけだと思いますわ。なのでそんなに気に病むことではございません!」
よかったー。手紙が届かなくて。次期国王候補からのお誘いを断れば周りからどんな目で見られるか。想像するだけで胃が痛い。ナイツハイルのことについては確かに不快だった。
「ははっ。そんなに必死に弁解しなくてもよい。手紙が届かなかったと聞けただけで安心した。そんなことより、なにも怪我はないか?階段の上から落ちたのだからどこか痛めていてもおかしくないのだか……」
ウィリアムはお母さんが子供を心配するみたいに、私の様子をうかがっている。幸い、私は無傷だ。自分でも驚いている。絶対、捻挫してるって思ってたけど全く問題なかった。少し打ったときの衝撃で赤くはなっているが。
「いえ、何なんともないです。お気遣いありがとうございますわ」
「あぁ。……リリアーナ嬢はあの階段から足を滑らせたのか?」
「……はいっ。私、ドジなのでついつい段差を踏み間違えてしまって。お恥ずかしいですわ」
本当は、後ろから突き落とされた。しかし、ウィリアムに本当のことを言ったら心配をかけてしまうし、これからも気遣って話しかけてきそうなので嘘を言ってしまった。それが正しい判断だと思う。仮に彼が攻略者ではなく、普通のモブの男子生徒だったとしても同じことをしたと思う。
私の問題は私で解決べき。他人を巻き込みたくない。
今回の件は誰がやったのかははっきり特定はできない。でも、たぶん、アッサムハルトのファンの子だと思う。……それ以外可能性なくない?アッサムハルトのことを除くと、私はごくごく平凡な女子生徒だと思う。
ほんとに、アッサムハルトは私に迷惑しかかけない。これの解決策はない。……というかアッサムハルトが私に飽きるまで続くだろう思った方がいい。それまで私が周りを注意すればいいだけ。
「リリアーナ嬢。もし、大変なことがあったなら私に相談してほしい。学年は1つ違って話しにくいかも知れないが。私は放課後生徒会室にいる。だから遠慮せずに来てほしい」
いや、ドジっただけって言ったのに。何を悟ったんだこの人は。そういえばウィリアムも生徒会だ。これはベル情報だか、ウィリアムは副会長をしてて来年には会長になるらしい。だから今の会長は来年からウィリアムの補佐役として会長の座を譲る。これは国王家が入学したときの決まりらしい。国王家が1、2年のときは副会長として会長から様々なことを学び、3年以降生徒会長に就任する。
「転んだだけですよ?そんなに深刻にならないでください。……そろそろ私は寮に戻ってもよろしいですか?」
「あ、あぁ。もうそんな時間か。でも本当に無理はしないでほしい」
「わかっていますわ。ウィリアム殿下が何を心配してるのかは知りませんが大丈夫ですよ。では、ごきげんよう」
早く退散したかった。もしかしたらウィリアムは突き落とされたことに気づいている……?でも階段のしたからはあまり上のことは見えないだろう。だか、あんなにしつこく心配させてはそう思うしかない。
めちゃくちゃめんどくさい……!私のことに気を回してもらわなくてもいいのに。他のことに気を回してほしい。ローズンとか。
保健室にウィリアムを残して私は学校を後にした。




