6 苦労は止まないです
「リリィちゃんおはよー!」
「リリィちゃんお菓子食べるー?」
「ねぇー、ねぇー。この問題どーやるの?」
「俺も一緒にお昼食べたいなぁー」
こんなに無視してるのに全くアッサムハルトには効いていない。毎日毎日飽きないで話しかけてくる。かくいう私は教科書広げ机に向かって振り向かないでいた。耳栓でも付けてこようかなって本気で思ってきてもいる。
ジェニーにはそろそろ構ってあげたら?と言われるが関わったら終わりだ。デッドエンド。
私が彼を無視しているせいで私の取り巻きだっただろう女子たちが何かコソコソ言っているのも知っている。これで取り巻きを作るフラグは消えた。でも、少し教室に居づらい感じはある。
それもそうだろう。学年1といっても過言ではないアッサムハルトに話しかけてもらってる上に彼を無視しているのだから。他の女子からすれば腹が立つに決まっている。アッサムハルトと話したい女子は山ほどいる。だから話しかけられている私を見て嫉妬する。そして私はそこまで目立っていないし、存在感を陰にしているため言われたい放題なわけだ。その陰口をやめろと制す気も更々ない。だから私はアッサムハルトが勝手に私に飽きて話しかけるのをやめる日を待ち続けている。
「なんであんな地味な子がアッサム様に構ってもらえるの。ローズ様の方がお似合いなのにっ」
前の席の方から聞こえたその声はローズンの取り巻きの者。それは私も激しく同意する。ローズンとの方が両方キラキラしててお似合いだと思う。
ローズンはさっきの発言をした子を宥めていた。
「私は良いのよ。あの子もすごく可愛いでしょ?そんな顔したら折角の可愛いお顔が台無しよ?」
なんて完璧な慰め方。やっぱりヒロインって完璧。とか思いながら私は相変わらずアッサムハルトを無視し続けた。
■ ■ ■
放課後。私はジェニーが手芸部の見学に行きたいと言うので手芸部を見に行った。特に部活には入る気がないので、入部を決めたジェニーはそのまま部活の説明を受けると言い、申し訳なさそうに私と別れた。
暇になった私は学園内をフラフラ歩いた。この学園には部活動が数多くあり、ほとんどの生徒が何かしらの部活に所属している。
新入生が入学してきたばかりの今、掲示板にはぎっしりと勧誘の貼り紙があった。多すぎて何がなんだか分からない。貼り紙には掲示板掲載の許可の印である生徒会の印が押されていて、あの変人の生徒会長を思い出す。
私が会長を知らないのに会長は私を知っている。初めは何かストーカー的ものかと思ってすごく警戒した。しかし、貴族の世界ではよくある話だと思う。家同士のお付き合いで名前だけ知っている生徒も何人かいる。だから私が知らないだけで親同士の知り合いかもしれない。またはお父様の仕事関係の知り合いかもしれない。可能性はたくさんあるので会長が私を知っているのは何の不自然でもない。……でも抱きつくのってどうなのよ。幼なじみじゃあるまいし。
よく考えると私に幼なじみは存在しない。だってドラゴンだったのだもの。幼い頃に知り合える友達なんてドラゴン以外あり得なかった。昔のことを思い出すと少し懐かしくて寂しい。今度の休みに森に遊びに行こうかな。
そうこう考えながら私は寮に戻ることにした。しかし、私が掲示板の前の階段を降りようとしたとき、突然後ろから背中を強く押された。
「__えっ、きゃあああっ!!」
結果的にいうと私は数十段ある階段から転げ落ちた。目の前が真っ白になった。身体中にすごく痛みを感じた。今日はもう寮に帰れないかもしれないと思った。
誰かに助けを頼もうとしても意識が朦朧としてて声がでない。
__もう、無理。
そこから私の記憶は途絶えた。
次に目が覚めたときには私は保健室にいた。




