8.5 貴女との再開①
きゃあああ、という声で私は振り返った。すると階段から私が2度と会えないと思っていた女性、グライアス・リリアーナが転げ落ちており、等の本人は途中から気を失っているようで叫び声が途絶えていた。私は必死に駆け寄って彼女を受け止めようとした。
「リリアーナっ!!」
が、叶わなかった。
私より先にセントファル学園の生徒会長であるエニック・ロイアクトが彼女を優しく受け止めていた。
「か、会長。お見事です」
「ほんとにこの子は。……やあ、ウィル。階段から転げ落ちるってすごいよね」
「ええそうですね。考え事でもして足を滑らせたのですかね」
「いいや。突き落とされてたよ。後ろから、とんっとね」
__突き落とされた。彼女に恨みでもあるやつがいるのだろうか。しかし、彼女に嫌われている私が変に詮索をすると嫌がるだろう。
「犯人が誰か見たのですか?」
すると会長は困ったように首を横に振る。突き落とされそうになって咄嗟に階段の下に駆け込んだから見えなかった、と会長は俯きながらけれどどこか怒ったような感じに言った。
「セントファル学園も物騒だね。あと1年もすれば君は生徒会長だよ?風紀はしっかり取り締まらないと」
「ごもっともです……」
「そうだ、今から僕は調べ事がある。保健室に連れていってからウィルにこの子を任せても大丈夫かな?」
「はい、大丈夫です」
そう言うと会長は満足そうににっこり笑ってリリアーナ嬢を抱き抱えたまま保健室へと運んだ。
■ ■ ■
「うーんと、ちょっと捻挫してるかもね。頭にたんこぶもある」
会長は気を失っているリリアーナ嬢に怪我がないか調べていた。あんな高さから落ちたのでやはり怪我は避けられなかったらしい。足は腫れ上がり見るからに痛そうだった。
「先生を呼んできましょうか?あるいは医師を呼びますか?」
「いや、その必要はない。……今から起きることはあまり人に言わないでほしい」
そう言うと会長はリリアーナ嬢の腫れ上がった足に手をかざした。
「ヒール」
会長が言葉を発した瞬間、会長の手から緑の光線がリリアーナ嬢の足にめがけてふんわりとかけられた。すると、腫れ上がった足には赤みは少し残るものの元の綺麗な足へと変わった。
「……!?会長、今のはっ」
「ご覧の通り魔法だね。びっくりしたかい?」
相変わらず会長の表情はにこやかだ。いつもこの人の感情は読めない。会長は続けてたんこぶの頭に手をかざし同じように治した。
魔法。これは誰でも使えるわけではない。魔女か、魔女の混血児、魔女の弟子しか使えない。ちなみに魔女の弟子は普通10年くらいかけて修行しないとなかなか使えるようにならないらしい。
だから可能性として考えられるのは会長は魔女かその混血児か。いずれにしろ他言無用である。この学園、いやこの王国にはあまり魔女系の人はいない。魔女は大抵普通の人々と違う所に住み、生活をしている。魔法を使えるから王国は重宝しているが、魔法を悪用しようとする輩もいる。だからこの学園に魔法が使える生徒がいると知られると厄介なことになる。会長なら大丈夫だと思うが。
「……そうそう、ウィルは彼女とは知り合いなのかい?さっき名前を叫んでいたからね」
「知り合い、と言いますか……なんと言いますか……少し前に私が開いた茶会に来て頂いただけです。会話をすることもないままでした」
「ふーん。それだけのことか。じゃあ、彼女が目を覚めるまでよろしく頼むよ」
会長は手をひらひらさせながら最後に振り返ってリリアーナ嬢を見て退室していった。




