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2-15話:二条神社




「少し寄り道をして行かんか?時間は取らせんよ。」



「もちろん大丈夫ですよ。明日も休みですしね。」



「そうか、なら少し飛ばすぞ。」



高速道路の追い越し車線に車を移し、加速する。そして暫く東京の夜景を堪能した後、とある神社に着いた。



二条神社。二条家が代々受け継いでいる神社だ。



「二条流剣術。聞いたことあるであろう?その剣術が生み出された場所として祀っておるのがこの神社。剣術の聖地とされておる。」



二条流剣術。二条先輩を黒いゴブリンから助けた後の自己紹介で話していたワードだ。



「剣術を祀る為の神社。そう、表向きはなっておる。」



すっかり日が暮れた午後7時。夜闇に包まれた神社を入るのは少し緊張する。まるで肝試しに来たみたいだ。罰当たりな気がしてきた。



「アポなしで入って大丈夫なんですか?」



「大丈夫に決まっておろう。儂を誰だと心得る。」



街灯が照らす薄暗い神社の敷地内を進んでいく。神社の本殿には目もくれず、敷地の奥にひっそりある末社に足を進んだ。



「中に入るぞ。」



二条さんのキーケースから末社の錆びた鍵を取り出し、扉を開ける。すると中には御神体はなく、人ひとりが通れるほどの深い穴と梯子だけがそこにあった。末社などではなく、どこかへと繋がる入口なのだとそれだけでわかる。



「着いてこい。」



二条さんに言われるがまま着いていく。梯子を使い穴から降り、自分の背丈以上ある洞穴をくぐっていく。光源は魔術による光のみ。室内灯のようなものは無い。都内にこんなダンジョンではない洞窟があることに対し、都市伝説の正体を目の当たりにしたかのような興奮を感じる。



「ここだ。」



洞窟の終着点。そこには石で出来た鳥居と石碑。そして洞窟の壁には一面に壁画が書かれてあった。その壁画は、目の前にいる俺らに対して『決して忘れるな』と訴えかけているかのよう。



「この石碑、読めんであろう。何せこの石碑の文字は大和語でもなければ英国語でもないからな。この文字を扱える者はこの世に1人もおらん、だが儂には読める。口伝だ。文字に記することなく口頭でのみ受け伝えられている。そういう習わしだ。」



壁画にはたくさんの絵が書かれている。



右に広がる沢山の妖怪のようなモンスターが書かれており、人が喰われている。骨が見え、肉が裂け、脳髄が飛びてている。喰われている人間は老若男女と様々だ。女児の腕に食らいついている小鬼。老人を股から割いて遊ぶ豚の面をした巨人。人の頭を団子のように並べ、串刺しにして遊ぶ蜘蛛。顔がふたつある子供の顔をした鬼が若い娘をいたぶっていたり、大量の虫が男に卵を植え付けていたりと、まさに地獄絵図だ。



左側に書かれている壁画には刀を持った人間が立ち向かおうとしている。その人間の周りには妖怪のようなモンスターの死体らしきものが転がっていた。きっと古代の英雄なのだろう。モンスターがどれほどの強さかはわからないが、相当実力があったのだと壁画から伺える。



そして、真正面の壁画は真っ黒く塗り潰されていた。絵の具や顔料、ペンキなどとは違うタールのような何かによってだ。この異物感が壁画の不気味さを引き立たせている。



「石碑にはこう書かれとる。」



私達は懺悔する



私達の弱さ、醜さ、そして力無さに懺悔する。



自らの手のひらから溢れ落ちる友に涙し、血族を自らの無力で失う愚かさを懺悔する。邪気に魅了された同胞を自らの手で殺めた弱さを懺悔する。



私達はもう二度と失わない。



私達の手のひらから零さない。



私達の無念、後悔、そして恥をここに示す。



もう二度と、次の私達が失わぬように。



「誰かのポエムみたいな石碑ですね。」



「であるな。だが、苦悩がよく伝わる良い石碑だ。」



石碑を睨むように見つめる二条さんを横に、俺は壁画を見る。壁画に書かれている数々のモンスター。おそらく百鬼夜行と呼ばれるダンジョンホールの発生によるモンスターの大量発生を絵にしたものなのだろう。500年前に川岡市周辺で大きなモンスターによる被害があったのだと聞いたことがある。



「百鬼夜行。今から10年前に起こった厄災。街中にモンスターホールが出来、市民を襲った大災害。約500年前に起きたモンスター災害と同じだからそう名付けられたと世間には説明されとるが、実際は違う。百鬼夜行は500年周期で起きる現象だ。約500年ではなく、丁度500年周期で起きる現象。起きる日付に狂いはなく、機械的に発生する。百鬼夜行が起きる原因は不明であるが、でも確実に起きるという点は間違いない。」



つまり、この目の前に書かれている壁画のような光景がずっと続いてきたのだろう。



「つまり、10年前のものは百鬼夜行ではない。」



睨むように、石碑を見ながら言葉を続ける。



「あの地獄以上の物がまた始まる。これは憶測ではなく、訪れる事実だ。」



言葉を続ける。



「確かに10年前の厄災は地獄だった。だが、あの時に出たモンスターはゴブリンやオーク、ウルフなどのダンジョンでよく見るモンスターばかり。百鬼夜行にしか出んモンスターは現れとらん。この壁画に書かれておる特殊なキメラも、がしゃどくろのような巨大なスケルトンも、天狗も牛鬼も出ておらん。」



壁画には様々な模様で書かれたキメラやスケルトンと呼ばれる骸骨のモンスター、羽の生えたオーガや鬼の顔が付いた虫が描かれている。きっと出てきたモンスターは壁画のような日本の妖怪と同じ見た目をしているのだろう。残酷で憎たらしい顔つきが頭に浮かんだ。



「優希。頼みがある。」



魔術によって光ができた事により発生した影が伸びる。



「私とこの国を救ってくれんか?なぁ、優希よ。」



**異世界語で書かれた石碑**の影が伸び、俺を包むのであった。



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