2-14話:冷たくて甘い黒糖タピオカミルクティー
「その、えっとー、二条先輩は村田とお付き合いされているのですか?」
「違うわ。」
「ならその格好はどうされたのです?まさか、村田に脅されて……!」
「大丈夫よ。それはないわ。」
「もしそうなら北西先輩に手を出しているであろうからそれはないでござるよ。」
いそいそとボタンを閉めて平常心を保つために真顔となるが、耳は真っ赤だ。高田は驚きと俺に対する怒りによる興奮が抑えられないからか息が荒い。
「生徒会長さん大丈夫ですか?私、いつでも通報できますよ?」
「本当に大丈夫なの。だから気にしないで頂戴。」
「そうですか。なら、良いのですが。村田いい?何があったかは知らないけど、生徒会長さんにこんな姿させちゃもう駄目だからね。次女の子にさせたらぶっ殺すから。アンタって私の敵ってだけじゃなくて女の子全員の敵だったのね。知らなかったわ。」
「俺がいつの間にか女の敵になっていただなんて、俺自信も知らなかったよ。」
「うるさい黙って!行くよエル。こんな奴ほっときましょ。あっ、生徒会長さん。何かあったら警察に通報してくださいね?私はいつでも生徒会長さんの味方ですからね?気にせず頼ってください。村田、後でエルに私のイソスタ送るから生徒会長さんに共有しときなさいよ。あと私の連絡先は絶対ブロックしないこと。いい?じゃ、私たちもう行くから。」
「あっ!ちょっと引っ張らないで欲しいでござる!服が伸びるでござるよぉ。うちの彼女がすまんでござる。今度パン奢るでござるからな優希殿!また学校で!ちょっ、引っ張らないで欲しいござるぅー。」
「あぁ、また来週学校でな。」
高田に服の襟を引っ張られてリードに繋がれた犬みたいにエルは連れて行かれる。店内に残った俺と二条先輩の周りをゲームセンター特有の電子音が響き渡っていた。別に今は職に困っていないのだがと昼休みの弁当が2つ並ぶ光景を思い浮かべつつ、手を振った。
「貴方、優希くんって友人に呼ばれているのね。」
「はい、そうですけど。今更じゃありません?アリサ先輩もジェヘラも俺のこと優希って呼んでますし。」
「そうね。言われてみればそうだったわ。じゃあ私も優希って呼んでいいかしら。」
「いいですけど、急ですね。なんで急にそんな話なったんです?」
「なんとなくよ。」
なんだか気まずい空気になってしまった為、場所を移動することにした。ゲームサンターまでは車での移動だったが、今度は歩きでの移動だ。目的地がここから歩いて10分もしないため、歩いたほうが良いと言う判断である。それと、二条先輩に初めての秋葉原を楽しんで欲しいのもある。どうせ秋葉原を楽しむなら街並み含め楽しんで貰いたい。
「その、優希くんはどんなアニメが好きなのかしら?」
「そうですねぇ。青いブヒとかSTOかですかね。アイチも好きです。」
『青春ブヒ野郎は猫耳女と青春がしたい』や『ソード・タワー・オンライン』、『@イチから始める異世界巡礼』などといった日本アニメのパロディみたいなものを例に出してみたが、二条先輩は首を傾げるだけであまり理解していなさそうだ。アニメどころかオタク文化にすら触れてきたことがないため当然の反応だろう。
「あとは、あれなんかもいいですね。結構人気ですし、あの黒い羽と白いドレスの堕天使なんか特にキャラとして人気ですね。コスプレによく使われてますよ。」
俺が指を指す先には『ダークロード』と書かれた骸骨のネクロマンサーとその配下が書かれているイラスト。その配下の中のひとりに黒い翼を付け背丈の高い黒髪でスタイルの良い女性キャラクターがいた。
「コスプレとは何かしら?」
「アニメのキャラクターと同じ衣装とか髪色とかにしてそのキャラになりきるファッションショーですね。」
「そうなのね。私にコスプレは出来そうかしら?」
「出来るんじゃないですか?あの黒い翼のキャラなんか先輩にぴったりですよ。細身ですし、それに胸が、いやそのすいません。」
「さっきのことは気にしないで頂戴。お願いよ。」
また耳を赤くし、俯く二条先輩につられて自分も顔を赤くする。先程のエアホッケーを思い出してしまったからだ。
「あの時はその、楽しくなっちゃったの。ただ楽しくてついその、高揚してしまったというか。わかるでしょう?」
「まぁその、わかると言いますか、わからないと言いますか。」
「ゲームセンターなんて初めてだったのよ。だから仕方ないでしょう?」
そう言われると不思議なことに彼女の奇行も仕方無く思えてくるのが不思議な所だ。もしかすると今まで一度も家族らしいイベントがなかったのかもしれない。3DSを買ってもらえなかった子供みたいなものだ。そう考えたらゲームサンターでの豪遊も可愛く思えてくるというものだ。きっと久しぶりの遊園地ではしゃいでしまう子供みたいなものだろう。
「もしかしてゲーム自体したことないのでは?」
「そうよ。そもそも私ゲームに興味がないわ。」
「なら幼少期何してたんです?」
「剣の稽古か勉強。あとピアノ等の習い事かしらね。正直幼少期の記憶は曖昧だからあまり記憶がないわ。とにかく忙しかった思い出しか無いわね。」
「鬼英才教育だったんですね。」
「そうね。ほぼ虐待だったわ。私自身そんな苦に思わなかったのだけどね。」
「二条家にふさわしい人間になれってやつですね。今はそんな干渉されてるように見えないのですが、英才教育が終わった感じですか?」
「そうよ。私の英才教育は終わったわ。なんせ私は期待されていないもの。」
「未成年喫煙でもしました?」
「そこまでグレてるように見えるかしら?」
「えぇ見えますね。すっごく悪そうな目つきしてます。」
「そこまでガラの悪そうな見た目はしてないはずよ。行きたい場所って、ここよね?」
少しばかりの散歩の目的地であるゴーチャまできた。ゴーチャとは黒糖タピオカミルクティーで有名な飲食店である。少し前ならJKの相棒だったであろう黒糖タピオカミルクティーが売っているゴーチャの店内は程々に人が空いており、店内で飲食が出来そうだ。
「何にしますか?」
「そうね。貴方のオススメにしようかしら。」
「わかりました。二条先輩って甘いもの大丈夫です?」
「大丈夫よ、甘いので問題ないわ。」
某ネットミームみたいな返答をしてくれたため、俺は無人注文機で黒糖タピオカミルクティーを頼む。二条先輩はシロップ普通でパール多め。俺のはシロップとパールどちらも多めだ。糖尿病への特急券である。
「機械で注文できるだなんて斬新ね。セルフレジというのだったかしら。」
「そうですよ。セルフレジは楽でいいですね。店員さんと会話しなくて済みますから。」
「貴方ってそんなコミュ障だったかしら?」
「コミュ障ではないですが、知らない人と会話するのめんどくさいなくらいには思いますよ。」
「いくら赤の他人だとしても気は使うものね。」
セルフレジから注文番号が書かれた紙が発券される。注文した飲み物が出来上がり、その注文番号で呼ばれるのを待つ。
「優希くんはどんな幼少期だったのかしら?」
「普通の幼少期でしたよ。ゲームして、友達と鬼ごっこして、宿題はサボる普通の小学生でした。」
「宿題をサボるのは普通じゃないわ。」
「いやいや男の子からしたら普通ですよ。お母さんに怒られるまでがワンセットです。」
「貴方って教皇様の拾い子じゃなくて?」
「あっ。」っとつい声が出る。教皇の養子としての設定を忘れ、日本にいた時の思い出を語ってしまった事に対しての焦りが全身を走った。冷や汗が出る。
「一般的にはって話ですよ。」
「そう。ならいいわ。ひとつ聞きたいのだけど、貴方って幼少期の話を最近誰かにしたことはある?」
「確か、無いはずですよ。」
「幼少期の話はあまり他の誰かにしないこと。理由は聞かないで頂戴。いいわね?私も貴方の幼少期については聞かないでおいてあげるから。」
「ありがとうございます。あっ、出来ましたね。」
貴方のために言ってるのよ?と言いたげな顔をしているが、耳が痛いため無視をした。確実に誤魔化せていないとは思うが、今は考えないようにする。出来上がった黒糖タピオカミルクティーふたつを受け取り、そのまま2階のカフェエリアに移動した。
「私の分も出してもらって申し訳ないわね」
「いいんですよ。何時もお世話になってるお礼です。」
「お世話してるのは私でなくて二条家なのだけどね。でも、奢ってくれてありがとう。いただきます。」
太いストローを加え、喉に液体を流し込んで、呟く。
「こんなにも甘い飲み物が存在するだなんて、驚きだわ。」
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