2-4話:抜いちゃアカンの剣
【35話】世界救ってから10万年。死ぬほど頑張って世界救ったのに眠りから覚めたら知り合いみんな死んでて10万年経っていた件 ~魔王倒したのに報酬が未だに払われない
リムジンに乗って着いた先は二条先輩の実家、二条亭。外装は武家屋敷と旅館を足したような作りをしており、門構えだけでも重厚感がある。どんな人間が住んでいるかなんて想像すら出来ないだろう。
「二条先輩の家って凄いんですね。維持費とかどうなってるんです?」
「持ちビルとか株で結構貰っているから問題ないそうよ。あと、害獣駆除の特別依頼ね。」
「へー、特別依頼が来るってことは二条家の人って強い人多いんですね。」
「そうね。二条家の人間である私が言うのは自惚れみたいな話になるのだけど、旧華族なだけあって武術に長けている者は多いわ。」
「じゃあご当主様はめちゃくちゃ強いみたいなことはあるんですか?」
「人様の父を幻想文学の登場人物みたいに言うのは如何なものかと思うのだけど。貴方の言う通り父は強いわ。世界で五本指には入る程には実力が高いのではないかしら。」
世界で5本指が俺視点でどのくらいの強さかはわからないが、少なからず大和国内なら負け無しなのだろう。もしかするとマギーのお兄さんよりも強いのかも。この時代の強さ天井組と戦ったことがないので強さの程度がわからないのであった。
「それは恐ろしいですね。」
「ええ。父は怖い人よ。とってもね。」
意味ありげに二条先輩が呟くと、タイミングよくドアマンが車のドアを開けてくれた。自分で車のドアを開けてはいけないとYouMovieの貴族の嗜みだとか言うチャンネルで教わったため、自分では開けない。一般庶民である俺からしたら少し不便だ。
「お帰りなさいませ。ご通学、お疲れさまでございました。そちらの方は?」
「私の友人よ。父の友人の御子息だから丁重に扱って頂戴。」
「承知いたしました。普段以上に二条家使用人一同精一杯接待させて頂きます。」
ドアマンが車のドアを開き、使用人と思わしき妙齢の女性が軽くお辞儀をして二条先輩を労う。その後ろのスーツを着た男が手を差し出し、二条先輩がカバンを預ける。俺もそれに習って預ける。俺としては普段以上に二条家使用人一同精一杯接待していただきたくない。お世話になっておいてこういうのは申し訳ないが、そっとしておいて欲しい
木造に見える自動ドアが開くと数人の使用人が二条先輩とその連れである俺を出迎える。出迎えの人が複数居るとは住む世界が全く違うなとそう実感しつつ、妙齢の女性使用人の案内に付いて行く。
二条亭の中は広く、落ち着きがありながら豪華。とても品のある由緒正しい豪族らしい内装となっている。きっと廊下に掛けてある風景画や扇子はお高いのだろう。自分はお高そうな美術品やガラス細工を横切る時はソワソワするタイプなので、さっきからずっとソワソワしている。
「俺等って何処に案内されてるんです?」
「謁見の間よ。」
「ご当主様が村田様にお会いしたいとのことですので、鶴の間に案内させて頂きます。」
「ご当主様って二条先輩のお父さんですよね?なんか婚約の挨拶とかじゃないのにめっちゃ緊張します。」
「緊張する必要はございません。ご当主様は気さくな方ですので。」
「さっき二条先輩から怖い人って聞いたんですけど。」
「確かにお嬢様の仰るとおり厳格な方ではありますが、身内には大変お優しい方ですよ。」
「俺って身内だったんですね。」
「どうやらそうみたいね。鶴の間に案内されるだなんて驚きだわ。普通なら虎の間よ。」
身内扱いしてくれるようだが、10万年の眠りから目覚めてからの一年と数カ月の内に二条家との交流は無かったため扱いに疑問符が浮かぶ。ジングさんと二条先輩との間に血縁関係があるとも思えない。
「鶴の間は家族専用って感じだったりします?」
「えぇ、そうよ。二条家とその分家にのみ案内される特別な謁見の間よ。」
「……もしかして俺と二条先輩って許嫁だったりします。」
「しないんじゃないかしら?私そんな話は聞いたこと無いわ。」
俺がジングさんと知り合ったのは俺が目覚めた一年と数ヶ月前。流石にその間で許嫁の関係を結ぶのはとても現実的ではない。ジングさんはやたら俺に子孫を残させたがっていたが、流石に勝手に許嫁を結んだりはしないだろう。
「ですよね。えっとー。」
「婆やと呼んでくださいませ。」
「婆やと呼ぶのはちょっと。」
「では、ユサとお呼びくださいませ。」
ユサさんがこちらを向き、軽く会釈をした。ユサさんの容姿はよくみるお婆さんといった容姿だが、年齢の割には姿勢が綺麗でとても品を感じられる。きっと昔から二条家に仕えているのだろう。
「ユサさんは何時から二条家に仕えていらっしゃるのですか?」
特に話す内容がないが、これからユサさんにお世話になると思うのでとりあえず毒にも薬にもならない話をしておく。
「ずっと昔、お嬢様が生まれる前からでございます。」
「へぇー、じゃあ二条先輩の幼少期もご存知なのですね。二条先輩はどんな子供だったんですか?」
「それはもう、大変聡明なお嬢様でしたよ。」
「本当のこと言えるわけ無いじゃない。そんな質問しても無駄よ。」
二条先輩がそう冷たく言い放つ。表情は見えないが、きっと冷たい怒りを感じられる無表情な顔をしているのだろう。ユサさんと二条先輩との間に溝を感じられる。深い、深いけれども注意深く見なくては気が付かない溝だ。もしかすると俺の思い違いなのかと疑いたくなるような、そんな溝だ。
「貴方はどういう幼少期だったの?」
「ゲームばっかしてましたね。授業の予習なんかしてませんでしたよ。」
「普通の小学生は授業の予習なんかしないそうよ。中学受験でもするのであればまだしも、ごく一般的な子なら遊び呆けるのが普通じゃないかしら。」
つい地球にいた時の高校生時代を思い浮かべて話してしまった。俺からしたら幼少期とは一度目の日本での高校生活のことであるため仕方ないと思う。もしかして高校時代のことは幼少期と言わないのか?今は気にしないでおく。
二条先輩の話し方から考えるに小学生の時の二条先輩は予習をする真面目な小学生だったのだろう。
「到着いたしました。鶴の間でございます。二条家の当主、二条信虎がお待ちですので、どうぞお入りくださいませ。」
鶴の間と言われ案内されたのは飾り気のない襖。謁見の間といえば豪華な襖の装飾をイメージしていたのだが、どうやら違ったらしい。もしかしたら内装が凄いのかもしれない。
「えっとー。」
「普通に入れば良いのよ。」
「礼儀作法とかよくわからないのですが。」
「気にしないでいいわ。」
「二条先輩先行ってもらえます?」
「父は待たされるのが嫌いな人よ。早く入りなさい。」
「はい。」
二条先輩はただ父親に会うだけだろうけど、こっちは初対面なんだぞと言いたいところではあるが、グズグズしていても仕方がないため勇気を出して入ることにした。
襖の丸いくぼみに手を伸ばす。
「まず正座して拳2つ分開けるの。失礼しますと言ってから自分の身体が入るくらい襖を開けて入るのよ。」
「はい。」
先に言えよ、と思ったが口には出さない。
言われた通り正座し、拳2つ分開ける。
「失礼します。」
「あぁ、入れ。」
聞こえたのは渋い初老の声。声だけで威圧感を放つことのできる声だ。これが二条家の現当主。覚悟を決め身を乗り出して中に入る。そして、中央付近に座り顔を上げた。
「君が優希くんか。儂は二条信虎。いつも結衣が世話になってるそうだな。」
茶とグレーの上着を纏い、紺色をメインとした袴を着た初老の男。鼻下と口の真下にヒゲを生やし、白髪の前髪をオールバックにしている。見た目を整えている威厳のある初老の男と言った容姿。雰囲気から龍を思わせ、白虎を思わせ、仙人を思わさせられる。年齢は恐らくジングさんと同世代だろう。
「いえ、こちらこそ何時も二条さんにはお世話になっております。」
「そう緊張せんでも良い、適当にくつろげ。ユサ、ジュースを出せ。炭酸のやつだ。」
片頬を上げニヤッとしてから鶴の間外に控えていたユサさんに指示を出す。和風な部屋と炭酸ジュースは合わないだろうとは内心思うが水を刺さないでおく。
鶴の間を見渡す。広さは学校の教室一つほどの大きさで家具はなく、床の間と高座だけがある。床の間には刀が一本だけ飾られているだけ。謁見の間にしては内装が地味。日本画のようなタッチで周りを彩られており、正面以外の壁と襖は竹、正面は竹と鶴が描かれている。金箔が貼られ、龍や虎が書かれた豪華な部屋を想像していたため呆気に取られていた。
二条先輩は俺の斜め後ろにいるため、コンタクトは取れなそうだ。
「地味な部屋だろう?顔に書いているぞ。」
「あっ、いや、そんなことは。すいません。」
「儂もそう思う。黄金で彩ってLEDライトやらミラーボールやらを飾りたくて仕方ない。実は随分と昔に改装工事を提案してみたのだが、家内がさせてくれんくてな。今も尚、この有り様だ。」
成金感があったリムジンは父親の趣味だと言っていた意味がわかった。二条家当主はどうやら相当派手好きらしい。格式の高い権力者でここまで派手好きなのは珍しく思える。もしかすると場を和ませるだけの冗談かもしれないが。
「ジングから事情は聞いた。しばらくはうちでゆっくりしていけ。」
「ありがとうございます。その、父とはどのようなご関係なのですか?」
「ジングは旧友だ。高校からの友人でな。馬鹿な儂とアホなジングでよく遊んだものだ。懐かしいな。ジングは元気か?」
「はい、元気そうです。今は忙しいとか言っていました。」
「そうかそうか、だから儂に頼んだわけか。人使いの荒い男だ。」
口では恨み口を言うが、表情はやわらかい。旧友との思い出に対して感傷に浸っているのだろうか。
そう内心思っていると、失礼しますと女性の声が聞こえ、襖が開く。ユエさんがお盆に炭酸ジュースの入ったシャンパングラスを乗せ、俺らのそばに来て配った。シャンパングラスに注がれているだけで不思議とジュースが高価な飲料に見える。
「飲んで良い。そもそも儂に対して気を使うな。若人は生意気なくらいが丁度良い。」
「では、失礼して。」
シャンパングラスの薄い口から炭酸ジュースを自分の口内に注ぎ入れる。何時も飲んでいるおなじみの味だが、特別美味しく思えるのは雰囲気のせいだろう。または口当たりの良いグラスのおかげなのかもしれない。
「結構なお点前で。」
「炭酸ジュースにお点前も何もないであろうよ。」
二条さんも同じく炭酸ジュース飲み、少しばかり深く考える仕草をした。
「優希くんは剣の心得があるそうだな。ちょっとうちの、持ってみるか?中々面白い業物だぞ。」
そう言うと二条さんは立ち上がり、背を向けて床の間の方へ歩き出す。そして床の間に飾られてある一本の刀を取り、俺らの元へ戻ってきた。
「ほれ、抜いてみろ。」
刀が俺に差し出されたので、受け取る。その刀は重く、成人の男性でも何振りかしたらバテてしまうほどの重量感がある。剣型の魔道具に比べて1.5倍ほどはありそうだ。丁度俺の聖剣エクスカリバーと同じくらいの重さだろう。長さはよく見る日本刀と同じほど。紺色の柄と黒い鍔。鞘は鮮やかな青だ。全体的に青い刀。戦場に持ち込む刀というより、祭事に使う儀式的な刀のような印象だ。
二条さんに言われたまま、刀を抜く。
「……ほう、これは。」
「んっ!」
二条さんが驚き、二条先輩が息を呑むのを感じた。抜いてはいけないものを抜いたようだったので、鞘に戻す。
「あっ、いや、抜いて良い。変な反応をしてすまなかった。」
このまま二条さんに返すわけにもいかないため、再び刀を抜く。刀の刃は水色。銀色に透明な水色の染料を塗ったかのような色をしている。
「その刀、お前にやろう。」
「えっ。……えっと、有り難い限りではありますが、こんな高価そうなもの受け取れませんよ。」
「やると儂が言っているのだ。この家のものは当主である儂のもの。であるならばこの刀も儂のもの。それ故、誰に上げようが儂の自由だ。」
「お父様。村田くんが困っていますので、そこまでにしてあげては?」
ようやく来た二条先輩からの助け舟。家宝か何かであろうこの刀を貰うわけにはいかない。何より嫌な予感がする。面倒事に巻き込まれそうな予感だ。この刀を抜いてしまった時点で遅かった気もするが。
「それもそうだな。悪かったよ優希くん。いや、優希と呼ばせてもらおうか!今日は疲れたであろう?客間でゆっくり休むと良い。ユサ!優希を案内してやれ。結衣は儂と話があるから残れ。では、また明日。」
「はい。今日から暫くの間お世話になります。何かとご迷惑をおかけするかと思いますが、よろしくお願いいたします。」
「おうよ。我が屋敷を実家のようにくつろいでくれ。」
「心使いありがとうございます。」
どう部屋を去ればいいかがわからなかったが、礼儀を気にしても粗相をしまくった為今更気にしても無駄なので普通に出ることにした。二条さんに背を向け、入った時に使った襖まで行き、襖を開いてから身体を再び正面に向ける。
「失礼しました。」
軽く礼をしたから、襖を閉めるのであった。
・◆・◆・◆・
鶴の間を出た後、俺はユサさんによって客間に案内された。客間には既に布団一式が引かれており、まるで旅館のようであった。
客間の内装は床の間と違い棚があり、地袋という低くて薄いタンスのようなものが違い棚の下にあった。畳には一枚の布団セットが敷かれており、脇に低い机。机の上には茶菓子と電気ポット、茶器が置かれてある。
現在午後九時と良い時間だ。もうそろそろ風呂に入りたい。二条家のお風呂のシステムがよくわからないため人に尋ねたく思い気配を探すサーチの魔術を使う。すると、襖が少し開いた。
「失礼します。村田様、どうなされましたか?」
「え?いやその、人を探すためにサーチを使っただけですが。」
どうなされましたか、と言われてもただ部屋でくつろいでいただけなのでどうもしない。逆に何かあったのか聞きたいくらいだ。
「村田様。何か御用があれば私ユサにお申し付けくださいませ。それと、二条家屋敷内ではむやみやたらに魔術を使わないようにと我が当主から伝言を賜りました。ご注意くださいませ。」
「はい、すいませんでした。」
「では、ごゆるりお過ごしくださいませ。」
「あっ、すいません。お風呂ってどこに入れば良いでしょうか?」
「ご来客様用のお風呂場はここ出て右でございます。」
「ありがとうございます。」
「はい、ではごゆっくり。」
「あっ!何度もすいません。困った時はどうすれば良いですか?ユサさんの内線とかあります?二条先輩、じゃなくて結衣さんに何でもかんでも聞くわけにはいかなくて……。」
「私の名前を呼んでくださればすぐに向かわせていただきます。」
「もしかしてずっと近くにいました?」
「はい、ご不快でしょうか?」
「いや、そういうわけではなくてですね。その、ソワソワすると言いますか……。」
「では、この電話番号に掛けていただければご要望にお答えできますので、そちらでよろしいでしょうか。」
「はい、是非それでお願いします。」
何か要件がある度にユエさんを呼ぶ訳にはいかないため、電話で聞けるのは大歓迎だ。ファミレスで店員さんを呼ぶ時でさえ緊張する自分が、先輩の家の使用人なんぞ気軽に呼べるはずがない。
「何かございましたらご気軽にお尋ねくださいませ。では、失礼致しました。」
[とても大切なお願いです]
ほんの少しでも、
「面白い!」
「続きを書いてほしい!」
「連載しろ!!」
とそう思って頂けましたら、
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作者大歓喜します!!
★5をつけてもらえるとモチベがすごぉぉおく
上がって、「また書くぞぉ!」となり、
最高の応援になります!
なにとぞ、どうかご協力
よろしくお願いします
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