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2-3話:成金黒塗りカーに白百合の花




二条先輩に連れられて、よく成金感の強いお金持ちが乗っているような黒塗りのリムジンに乗り、出された紅茶を飲む。車内は高さの低いバーカウンターの様になっており、とても成金感が凄い。ある意味下品な車である。清楚な二条先輩が場違いに感じられる空間がそこには広がっていた。



「ごめんなさいね、悪趣味な車内で。父の趣味なの。」



「いやまぁ、座り心地が良くて好きですよ。」



「そう、なら良かった。」



紅茶が入ったティーカップを指でなぞりながらつまらなそうに言う。俺はティーカップに口をつけて飲む。美味しい。まるでフルーツの盛り合わせをそのまま飲んでいるみたいな香りが鼻腔を擽る。それにしても、車内で温かい紅茶の飲むだなんて不思議な気分だ。湯沸かし機能付きの車とは金持ち恐ろしやである。



「クッキー、食べる?」



「……いただきます。」



棚からクッキーの入った包装を数個取り出し、皿に乗せて俺に渡す。



……気まずい。二条先輩とは業務連絡以外の話をしないため、さほど仲良くはないのだ。



「ありがとうございます。」



渡された皿からクッキーを取り、包装を開けて口にする。空気が重かろうと、ちゃんとクッキーは美味しい。小分けのクッキーは安っぽい味のイメージがあるが、このクッキーは上品な甘さが口内に残る味わいだ。



「随分とアリサに好かれてるのね。あの子が男の人を好意的に見るだなんて、驚いたわ。」



「仲良くなれて嬉しいです。」



「仲良く、ね。」



意味ありげな返事をし、紅茶を飲む。つられて俺も飲む。



「私も仲良くしてもらおうかしら。」



「ん゛っ!……なんて言いました?」



いきなりらしくない事を言われた驚きで思わず吹き出しそうになったが、何とか堪えたお陰でなんとかリムジンの内装を弁償せずに済んだ。ただでさえ金欠なのに車内を汚したからと弁償まで求められたらたまったもんじゃない。



「仲良くしてもらいたいと、言っただけよ?」



「いきなりボケるのやめてください。」



「ボケてはないわ。ただ、法王のご子息と親睦を深めたくて言っただけよ。」



「多分違いますよね?そんな意味じゃないですよね?」



「さぁ?どうしからね。でも仲良くなりたいのは事実よ。貴方、変わってるもの。」



まだ目的地に着く気配は無い。やはり二条先輩が住んでいるのは西地区なのだろうか。西地区は行ったことがない為、距離感がよくわからない。



「と、言いますと?」



「まず貴方、面倒事には関わりませんなんて顔してるくせに実際は関わるの大好きよね。」



「いやまぁー、……おっしゃる通りです。」



他人任せにしたり、見て見ぬふりをしたりすればいいのに自ら動いて解決させようとする所があるため否定はできない。認めたくない話だが自分自身英雄願望が強いのだろう。



「それに、友人は妙な子が多いわね。獣人武術の一族に歴史オタクのエルフ。特異体質なエルフと魔族と人間族のミックスちゃんに、アングロ・ドミニオンの王族の娘。そして、魔王国の王家にして魔王の子孫。よりどりみどりね。」



「個性あふれる友人に恵まれて幸せ者です。」



「そう、良かったわね。友人に恵まれて。羨ましいわ。」



「皮肉ですか?」



「いいえ、本心よ。だって私には友人がいないもの。」



何か、大きな地雷でも踏んでしまったのだろうか。もし踏んでしまったのだとしても俺は悪くない気がする。俺はただ何気ない会話をしただけ。自宅の庭に出たら地雷を踏んだようなものだ。俺に非があると言われたらそれは理不尽な話である。



「アリサ先輩はどうなんです同じガーディアン仲間じゃないですか。」



「あの子はただの後輩よ。友達と言えるほど話したことはないわ。」



「それ僕なんて顔すればいいんですか。」



そう言った後紅茶を口にする。紅茶は冷めており、味がしなかった。正確に言うなら味を感じれるほどの余裕がない。気まずいのだ。その気まずい空気を作り出している当の御本人様である二条先輩は窓ガラスから景色を見ている。今どき空き時間にスマホを見ない10代は珍しい。そんなに景色が面白いのだろうか。



「ねぇ、私なんで友人がいないんだと思う?」



「………話しかけ辛いんじゃないですか?」



「私、話しかけ辛いかしら?」



「はい、話しかけ辛いです。とても。」



「そこはフォローも入れて本人を慰めるところよ、村田くん。」



話しかけ辛い理由は色々ある。まず家柄。民主主義を語る大和国を支配していると言われているほどの権力と財力を持つ二条家。その娘と関わるのはリスキーだ。もちろん気に入られたら何かしら利益があるかもしれないが、逆も然り。触らぬ神に祟りなしだ。



次に容姿。彼女は和風美人のイメージそのまま。高嶺の花という言葉が似合う彼女に話しかけるのには勇気がいる。ガラス細工を触るようなものだろう。



そして何より性格。俺は二条先輩が笑っている姿を見たことがない。



「私の何がいけないのかしら。何すればいいと思う?」



「教室で少年ジャンピングでも読んでたら声かけられるんじゃないですか?」



「私、漫画は読まないの。」



「じゃあ普段何読むんです?」



「板口安吾よ。」



恐らく坂口安吾先生のことだろう。なんと渋い。女子高生が読んで良いものではない。というか坂口安吾もこの世界にはいるのか。現代の世界観がいまいちわからない。



「とりあえずこれとかおすすめですよ。主人公が破天荒で好きです。」



スマホからマンガアプリを開き、見せる。最近映画化したアニメ化済みの大人気コミックだ。俺はこの漫画の主人公の戦い方が好きなため愛読している。



「このチェンソーが生えた方は、痛くないのかしら。」



「さぁ?」



「気が向いたら読んでみるわ。」



気が向くなんて枕詞は読まない人の常套句だ。人からのおすすめは大体読まないのが城跡なので、期待しないでおく。



「なんで貴方にこんな話をしたのかしらね。きっと貴方、カウンセラーだとか尋問官だとかに向いてるわよ。あっ、着いたわね。行きましょ?」









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