9.渋谷暴動事件
『リトルグリーンメン』
彼らの装備は『アナ斗争』と白い文字で書かれた緑のヘルメットと、改造鉄パイプ…角材に、バール、ナイフ…そして火炎瓶だった。
彼らの掲げる旗は黒一色。
…多分、無政府主義、アナーキズムを標榜しているのだろう。
なんともチグハグだ。
それなら『リトルブラックメン』でも名乗れば良かったのではないか。
「ね〜、雫、雫ってば」
…華音の存在をすっかり忘れていた。
「ごめん、どうかしたの?」
「明日、何する?」
『現在、動画投稿サイトにて、リトルグリーンメンを称する勢力が犯行声明をあげており___』
「…ごめん華音、今はテレビ見させて」
「むー…仕方ないな〜」
華音はそう言った後、静かになった。
『「我々は現代司法に救われなかった者たちの連合だ。我々は政府に絶望し、司法に騙された弱者たちの同盟だ!我々はこれまで、あくまで合法的な手段をもって政府に訴えてきた。我々の存在を。しかし!彼らは一切を無視した!___」』
リトルグリーンメンの要求は単純なものだった。
『内閣の総辞職と、衆参両議会の解散、裁判員制度の強化、司法改革』である。
あまりに単純で、しかし不可能なものだった。
まず、現代社会において政府は『テロには屈しない』という価値観を持っている。
これは世界的な常識であり、あんまりテロ組織の肩を持ちすぎると、最悪アメリカが『テロ組織に与した不法国家』と日本丸ごと非難してくるかもしれない。
そして百歩譲って内閣がテロリストの要求を呑んだとて、できるのは総辞職と法案提出と、衆議院の解散くらいだろう。
制度的に。
そういうわけで、単純だけど政府はこの要求を呑めない。
…まぁ、どうせ暴動なんですぐ鎮圧されて、そのリトルグリーンメンとやらも壊滅し、解散するのだろうけど。
「ね、もう寝よ?」
いつの間にか華音は私のベッドに潜り込んできていた。
…まぁ…ある程度考え終えたし、今日は眠ろう。
「じゃあ、寝よっか」
華音にそう声をかけると、彼女はニヤニヤと笑った。
「ん!おやすみ〜雫」
「…おやすみ」
私はそう返して、眠りについた。
……暑苦しい。
瞼を開けると、華音が私を抱き枕にしていた。
辺りはまだ暗い。
その顔はすごい満足そうで、口角が上がっていた。
…離れようと思っても……罪悪感がすごい。
組み付かれているから、動いたりしたら…起こしてしまうかもしれない。
……なんで私、まだ会って1日くらいの人間に配慮してるんだろう。
まぁいっか。
また瞼を閉じ、眠った。




