7.肉体労働
トラックで運ばれてきた家具類は自分達で運び込むらしい。
…華音と同居することになって、良かったかもしれない。
机なんかはともかく、ベッドは流石に1人で運び込むのは難しい。
用意された家具は本当に色々あった。
例えばベッドや椅子、机…液晶テレビに、CDプレイヤー、ドライヤーや鏡など…あと歯ブラシと歯磨き粉と…私服なんかも用意されていた。
ポータブル浴槽と仮設トイレが外に置かれていて、より専門的な水道工事は後日…との事だった。
また、ポータブル浴槽に不満があれば、食堂近くの銭湯を利用すれば良いとのこと。
なんというか……廃墟キャンプとホテルの中間のように感じる。
何はともあれ、私は華音と共に家具類を2階に運び込むことにした。
雫と華音は力を合わせ、家具類を運び込んだ。
と言っても、7割は雫が頑張っているのだが。
雫は華音よりかなり力強い。
何せ日常的に鍛えているのである。
普通に見える制服の下には、割れた腹筋があった。
雫は顔色一つ変えずに、華音はきつそうな表情でベッドを運び込んだ。
液晶テレビなんかは結局、危ないので雫1人が運び、その分、華音は軽いものを運んだ。
「雫って力持ちなんだね!」
華音は何故か歯磨きを両手に持ちながら、雫に言った。
「…まぁ、鍛えてるし」
そう言い、雫は持っていた液晶テレビを棚の上に降ろした。
雫と華音はそれぞれのベッドに座り、テレビがちゃんと動くかの確認をした。
普通に地デジが繋がった。
火曜の夕方、ニュース番組なんかがやっている。
アメリカで活躍中の日本人選手がまたホームランを打ったらしい。
…結局、私一人が捕まったところで、世界は少しも変わらないようだ。
「…悲しいの?」
華音が聞いてきた。
いつの間にか私の隣に座っていたようだ。
「別に」
「…嘘でしょ。多分『自分がいなくなった世界が何も変わっていない』ことへの失望…ってところ?」
そう言う華音の顔は、いつの間にか私の方にかなり近づいていた。
「………華音に何がわかるって言うの?」
私は呟く。
「……『悲しみ』の感情。あ、嫌だった?ごめんね」
華音はススス…と元の位置に戻っていった。
その後、疲れたので、銭湯に行くことにした。
気分はさながら、ホテルで荷解きを終わらせた直後のようだ。
微妙な『新しいベッド』への期待と、見慣れない雰囲気の部屋に少し高揚して、疲労感も相まって、ベッドで転げまわりたくなるあの感覚である。
それは華音も同じようで、ベッドの上でぴょんぴょんと跳ねていた。
私が目を向けると、飛び跳ねながらこっちに笑いかけてきた。




