4.第63旅団
その後、私がぼうっと立っていると、駐屯地から人が出てきて、私はそれに連れられた。
「『塔崎雫』さんで間違いないですね?」
迷彩服を着た男がそう言うので、頷くと、更に奥に通された。
促されるままに鉄製の扉を開け、部屋の中に入ると、そこには面接官っぽい3人が座っていて、その向かいに1つの席が置かれていた。
「あ、失礼します」
咄嗟にそう言う。
雰囲気が完全に、大学か企業のソレである。
「どうぞ」
そう言われ、席の方に行く。
「『塔崎雫』さんですね。お掛けください」
真ん中のスーツを着ている初老の男はそう言った。
「失礼します」
男の指示に従い、座る。
「では、我が駐屯地について、まずこちらからお話させていただきます。その前に、何か質問はありますか?」
駐屯地…もしかしてこれから、私は陸上自衛隊に入れられるのだろうか?
その言葉にスッと軽く手を挙げる。
「どうぞ」
「御社への就職は決定事項ですか?」
面接官は御社という呼び方に微妙な顔をしつつも再び口を開いた。
「はい、そうなりますね。貴女の場合は5年間、我が隊で働くこととなります」
「我が隊…というのは?」
「ああ、言い忘れていました。我々は陸上自衛隊『第63旅団』と呼ばれる組織です。まぁそこは深く気にする必要はありません」
面接官は苦笑しつつ言った。
その後、幾らかの説明を受けた。
この施設や組織は1960年代末期の東大闘争が原因〜とか、昔は3,000人以上いたけど今は100人〜とか、あと設備は自由に使えば良いとも。
昔、大量の逮捕者を、拡大していく学生運動に対処するため法務省、警察庁、自衛隊の責任で転用していたのが始まり…とかいう話をされ、雑に相槌を打つ。
どうせ強制なんだし、相手に良い態度をとる必要性も感じられない。
ここはどんな仕事をするのか…と何となく思いながら話を聞いていると、面接官は最後にしれっと『あ、たまに警察の捜査協力をやってもらいます』と早口で言った。
……なるほど、捜査協力…面白そうだ。
その後、開放された私は今度は刑務官っぽい制服を着た女性に連れられ、本郷駐屯地内を歩き回った。
女性によると、かつてキャンパスだったこともあって、色んな建物があるらしい。
それで、使っていなさそうな…或いは良さそうな同居人のいる建物を選び、好きに住めば良いとの事だった。
希望する場合、生活用品類は買えるらしく、家具なんかも割と買えるのだとか。
……普通に良いかもしれない。
なんて思う雫であった。




