26.なりふり構わず
「もしもし、今どこにいる?」
唐突に鳴った電話の相手は淀川だった。
切羽詰まったような、少し低めで早口の声だった。
「…旧法学部3号館2階ですけど」
「わかった、華音とは一緒よね。今迎えを用意するから準備して。持ち物はスマホと警察手帳だけで良い」
そう言ったきり、淀川は通話を終了した。
…切迫した事態なのだろう。
「華音、着替えよう。迎えが来る」
「何かあったの?」
「…分からないけど淀川から連絡があったから」
「ん、わかった」
華音はその場で服を脱ぎ散らかし始めた。
…まぁ、今は気にする必要ないかな。
迎えのトラックの荷台には意外なことに、朝会った北原という女と、名前を知らない男が乗っていた。
私は男の手を借りて荷台に乗り込む。
「…ん?アンタ見た目の割に結構鍛えてるんだな」
男は私の手を掴んだ後、そう言った。
「まぁ…人並みには」
「はッ…気に入った」
男は私をトラックの荷台に乗せたあと、ニヤリと笑いそう言った。
私は華音の手を取り、乗り込むのを手伝う。
「は、離さないでね!」
そう言う華音の手はプルプルしていた。
パッと乗せてあげると、華音は私に縋りながら座り込んだ。
私はその隣に座る。
それを見た男が車体をドンドンと2回叩き、それを合図にトラックは動き始めた。
「ね、なんで呼ばれたんだろう」
華音は私にそう囁く。
すると北原が口を開いた。
もちろん…スマホを見ながら。
「もしかして淀ちゃんから何も聞いてないの?」
彼女は地獄耳なのかもしれない。
「何も聞いてませんけど」
「じゃあ、私達が説明役なのね。えーと…」
北原はそう言葉を詰まらせた。
「ああ、俺がやろう。一応自己紹介しておく。茨木だ。お前らの先輩にあたる。で、今回は『フィールドで使える人間を全て掻き集めての捜査協力』をやるらしい。つまり、俺らやお前らみたいな『大人しいやつ』のことだな。内容は…今は詳しいことは聞いてないが、何かの強制捜査をするとは聞いた」
「…なるほど」
「とりあえず、言われた通りに手伝いをすれば良いのかな」
華音のその言葉に茨木は頷いた。
パシャ………パシャ…………
華音と荷台で寄り添っていると、北原に何回か撮られた。
私に見られても気にしないといった様子で撮影を続けている。
撮影が終わる前に、目的地に着いた。
「降りるぞ。北原」
茨木は北原を抱えて、バッとトラックから降りる。
私と華音もそれに続いた。




