23.終息宣言
翌朝。
何気なくテレビを付けると、警視庁総監が会見をしていた。
テロップには『リトルグリーンメン逮捕。トクリュウ・テロの始まりと定義』と書かれていた。
総監は次のような演説をした。
一つ。本件は匿名流動型犯罪の新しい形、またローンオフェンダー型犯罪と類似のものとして定義すること。
一つ。本件で行われた手法はまったく新しい形のものであり、警視庁並びに警察庁はこれへの警戒に務めること。
一つ。今後は警官による警邏活動を増やし、更に積極的な犯罪対策を行うことでテロへの警戒をすること。
……なんとも官僚的な答弁だ。
多分、原稿を読まされているだけだろう。
「んん…雫?」
華音は身体を起こし、眠そうに目を擦っていた。
「おはよ」
私がそう言うと、華音は私の方を見て、挨拶を返してくれた。
「ん…おはよ……」
「朝食、食べに行こっか」
「…ん…わかった」
「ついでにシャワーも浴びよう。私が着替え持ってくから」
「…ありがと…」
そんなわけで、私と華音は外出の準備を始めた。
…フェンスの内側で『外出』するというのは少し違和感だけど……まあいいや。
私は左手に2人分の着替えの入った袋を持ち…右手は華音と手を繋いでいた。
華音は寝惚けてふらふらと歩くので、手を繋いでいないと上手くまっすぐ歩けないのだ。
私と華音は食堂に着いた。
何となく袋を2つ掴み、華音と分け合う。
それと、ペットボトルを適当に掴んだ。
…100%りんごジュース2本である。
なんだか少し健康的に思える。
…今日で何日目だったか…ああ、3日目だった。
あまりに色々あり過ぎて、もうここに来て1週間経ったような気がする。
…慣れというのは恐ろしいもので、3日もすればすっかり華音との生活が日常化してしまった。
今日の食事はハムサンドイッチと鮭おにぎりだった。
華音は無言で鮭おにぎりをモシャモシャと食べ始めた。
私はサンドイッチを食べた。
シナシナの野菜と辛子マヨが良いアクセントになって結構美味しかった。
華音は一度鮭おにぎりを食べるのをやめ、コクリコクリとゆっくりりんごジュースを飲み始めた。
海苔が意外とパサパサしていて喉が乾いたのだろう。
「あ、おはよう。朝早いね?」
振り返ると淀川がいた。肩にはタオルが掛けられていて、頭から湯気が出ていた。
…多分お風呂上がりだろう。
「淀川さんこそ、お早いですね」
「いや、今から寝るんだよ。夜通し報告書とか色々処理してたからね」
なんだか…大変そう。
「淀川さんは…家には帰らないんですか?」
「あ〜…いや…一人暮らしでさ?」
その目には何か…諦めのようなものが宿っているように感じた。
彼氏に逃げられたりでもしたのだろうか?
「……なるほど」
深くは聞かないでおこう。




