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矯生  作者: 倉石 雨


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21/29

21.被害者?

2階から降りてきた女を、淀川は問答無用で床に押し付け、結束バンドで拘束した。


その手際は見事なもので、さながら警官のようだった。


華音は淀川に押さえつけられた女の横にしゃがみこみ、見下ろしながら口を開いた。


「貴女、名前は?どこの人間?出身地は?」


「誰!?誰なの!?」


「……普通…質問を質問で返す?」


華音は少しムッとした顔で女の顔を掴み、ライターの火を女の前に近づけ始めた。


「華音?」


止めに入った方が良いだろうか。


「ちょっ………えっとッ…!佐々木夏子ッ!佐々木夏子!!ここの職員ッ!家は船橋ッ…!!やめッ!やめて!」


華音は息を吐いて、渋々といった表情で女の顔から手を離し、ライターを自分のところに戻した。


「ねぇ雫、眠い」


華音は光の無い目でこちらを見てくる。


「…まぁ、もう仕事終わったし、寝て良いよ」


私は華音を抱きかかえた。


華音はライターの火を消し、瞼を閉じた。


「じゃあ、車に乗せてくるから」


私は淀川にそう言い、建物を出た。


淀川は若干苦笑した後、少し頷いた。


車に乗り、後部座席に華音を降ろし、建物にまた戻る。


「ち…地下に案内します!」


淀川は佐々木を立たせていて、佐々木はそんな風に淀川に言っていた。


「…地下…ね、わかった。案内して」


淀川はそう言い、佐々木の肩を掴みつつ、彼女の後ろを歩いている。


私はその後ろに続いた。



薄暗い階段をライト頼りに降りていく。


そのうち真っ暗な1つの部屋に出た。


佐々木は壁をぺたぺたと触り、そして照明をつけた。


最初に目に付いたのは朝鮮語の書かれた赤い旗だった。


パシャッと撮って、検索にかけると、それは『朝鮮人民軍』の旗だった。


…少しゾッとした。


「ここは?」


「かつて…掃除用具入れとして使っていた地下室です。最近やってきた連中が…その…旗を掲げて…」


淀川は舌打ちした。


「これは…外事案件になるかもしれない」


部屋には他に…謎の大きめの筒のようなものが置いてあり、確認すると中身は破壊されているように感じた。


「…これ、壊れてるけど…なにかの掃除用具?」


佐々木は私の言葉に何か考えるような表情をした。


「…………えっと…どうでしょう」


佐々木は結局そう言い、首を傾げた。

…妙だ。

ただ、淀川はそう思わなかったのか、軽く頷き、スマホで写真を撮って、言った。


「…一応、警察庁に紹介を頼もう。この旗も含めて、千葉県警警備部に押収を任せようか」


「で、この女…どうします?」


「解放で良いよ。今日のことを言ってもどうせ誰も信じないだろうし」


そういう訳で、私達は本郷に帰ることとなった。

帰りは後部座席に座り、華音を膝枕していた。

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