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矯生  作者: 倉石 雨


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20/29

20.建物訪問

訪れた建物はかなり荒れていた。

割れた窓に、ヒビの入ったコンクリート…そして何よりゲバ字を使った『首都粉砕』のペイントが目立つ。

裏口などはなく、小さな扉が一つあるだけ。

近くには割れかけの大きな窓があって、更に割れば侵入できるだろう。


明かりはついていない。


「んん…ここ行くの?」


よろよろと私に手を引かれ、歩く華音はそう言った。


「そう。終わったら、また寝れば良いから」


「ん………わかった〜」


華音は目を擦ったあと、数度パチパチと瞬きをして、ニコッと笑った。


淀川は私と華音を後ろにおいて、官帽を深く被り、インターホンを鳴らした。


インターホンにはカメラが付いていて、そこから見たら、多分淀川は警察官に見えるだろうと感じた。


「すみませーん、誰かいらっしゃいますかー」


間の抜けたような声で淀川はそう言う。


「すみませーん、通報があったのですがー、いらっしゃいますよねー?」


その言葉に…たしかに建物の中の何かが動いたような音がした。


「…突入するよ。どうせ元々こんな壊れてるんだし、さらに壊れても…そんなに変わらないだろうからね」

淀川はそう言い、サッと特殊警棒を取り出し、ライトをもう片方の手に持って、窓の方に歩き始めた。


ライトはまだ光っていない。


私と華音は武器なんかもないので、警戒しつつ淀川の後ろに下がる。


淀川は特殊警棒でガシャンと窓を叩き割って、突入した。


「警察庁警備局だ!テロ関与の疑いで建物内の強制捜査を行う!大人しく手を上げて出てこい!」


彼女は低く、しかし大きな声でそう言い、ライトで周りを照らしながら特殊警棒で何度も近くの壁を叩いた。


…大丈夫?そういうのやっちゃって。

なんだか…そこまでやると怒られちゃいそうだけど。


内部には大量の武器が集積されていた。


それも散乱状態と呼ぶべき粗雑さで、元リビングらしき場所は鉄パイプやバール、ナイフなどが、地面やダンボール製の収納らしきものの中に突っ込まれていた。


華音はスクランブル交差点で拾っていたライターで自分の周りを照らし、私は普通にスマホで周りを照らした。


華音は目を細め、とても冷たい表情をしていた。


…華音は火を見ると落ち着く傾向があるように感じる。


ダンッ!ダンッ!ダンッ!


淀川は壁を何度も特殊警棒で叩く。


おそらく相手への脅しだろう。


「早く出てこい!1人なのは分かってるぞ!」

淀川はそう叫んだ。


…まぁ確かに、もし2人以上いるのなら、踏み込まれた時点で同調圧力や見栄で抵抗してくるだろうし、1人と断定しても良いかもしれない。


「ま、待って!」


その声は高く、女のもののように聞こえた。

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