20.建物訪問
訪れた建物はかなり荒れていた。
割れた窓に、ヒビの入ったコンクリート…そして何よりゲバ字を使った『首都粉砕』のペイントが目立つ。
裏口などはなく、小さな扉が一つあるだけ。
近くには割れかけの大きな窓があって、更に割れば侵入できるだろう。
明かりはついていない。
「んん…ここ行くの?」
よろよろと私に手を引かれ、歩く華音はそう言った。
「そう。終わったら、また寝れば良いから」
「ん………わかった〜」
華音は目を擦ったあと、数度パチパチと瞬きをして、ニコッと笑った。
淀川は私と華音を後ろにおいて、官帽を深く被り、インターホンを鳴らした。
インターホンにはカメラが付いていて、そこから見たら、多分淀川は警察官に見えるだろうと感じた。
「すみませーん、誰かいらっしゃいますかー」
間の抜けたような声で淀川はそう言う。
「すみませーん、通報があったのですがー、いらっしゃいますよねー?」
その言葉に…たしかに建物の中の何かが動いたような音がした。
「…突入するよ。どうせ元々こんな壊れてるんだし、さらに壊れても…そんなに変わらないだろうからね」
淀川はそう言い、サッと特殊警棒を取り出し、ライトをもう片方の手に持って、窓の方に歩き始めた。
ライトはまだ光っていない。
私と華音は武器なんかもないので、警戒しつつ淀川の後ろに下がる。
淀川は特殊警棒でガシャンと窓を叩き割って、突入した。
「警察庁警備局だ!テロ関与の疑いで建物内の強制捜査を行う!大人しく手を上げて出てこい!」
彼女は低く、しかし大きな声でそう言い、ライトで周りを照らしながら特殊警棒で何度も近くの壁を叩いた。
…大丈夫?そういうのやっちゃって。
なんだか…そこまでやると怒られちゃいそうだけど。
内部には大量の武器が集積されていた。
それも散乱状態と呼ぶべき粗雑さで、元リビングらしき場所は鉄パイプやバール、ナイフなどが、地面やダンボール製の収納らしきものの中に突っ込まれていた。
華音はスクランブル交差点で拾っていたライターで自分の周りを照らし、私は普通にスマホで周りを照らした。
華音は目を細め、とても冷たい表情をしていた。
…華音は火を見ると落ち着く傾向があるように感じる。
ダンッ!ダンッ!ダンッ!
淀川は壁を何度も特殊警棒で叩く。
おそらく相手への脅しだろう。
「早く出てこい!1人なのは分かってるぞ!」
淀川はそう叫んだ。
…まぁ確かに、もし2人以上いるのなら、踏み込まれた時点で同調圧力や見栄で抵抗してくるだろうし、1人と断定しても良いかもしれない。
「ま、待って!」
その声は高く、女のもののように聞こえた。




