19.夜間調査
「おーい、起きてる?」
瞼を開けると、淀川がいた。
手に下げているのは大きめの紙袋だった。
珍しく制帽を被っている。
…男性用の官帽を被っている。
「ん?あーこれ?いやさ…私にはこっちの方が似合ってない?」
「えっと…まぁ格好良いとは思いますけど」
「でしょ?口上手いね?」
淀川は官帽を深く被り直し、ニヤリと笑った。
そして口を開く。
「今、20時なんだけど…実は仕事が入ってね。君達の見つけた武器庫に行ってみようってね」
…20時…え、もうそんな時間なんだ。
華音の方を見ると、華音はまだスースーと寝息を立てている。
「仕事なら仕方がありませんね。行きましょうか」
「お、マジ?やった。じゃあ、この服着てね」
そう言う淀川がこちらに掲げてきたのは手に下げていた紙袋だった。
中には灰色のシャツに黒いジャケット、プリーツスカートに、タイツ…あと革の手袋、ネクタイなんかも入っていた。
パパッと着替える。
「どう?私が昔よく着てた、公安の夜間勤務のための服だよ。公式なものじゃないんだけどね」
「どう…ですか、良いと思いますけど」
そう言いつつ、華音を起こし、寝惚けている華音の服を着替えさせた。
…うん?淀川って…刑務官だよね?
まあ…いいや。
また瞼を閉じ、スースーと寝息を立て始めた華音を背負って、淀川の後ろに続いた。
そのまま駐屯地の外に出て、駐車場へ行く。
今回はランクルではなくクラウンだった。
中には無線機やパトランプなどがあって、すぐにこれが覆面パトカーなのだとわかった。
後部座席に華音と共に乗り込む。すると淀川は口を開いた。
「せっかくだし、前来てよ」
断る理由もないので、私は華音をシートベルトで固定した後、助手席に乗り込んだ。
淀川は少し嬉しそうな顔で、エンジンをかけ、車を動かし始めた。
「調べてみたところ、武器庫とされる千葉県の住所には、とあるNPOの建物があったわ」
雑にJ-POPを流しながら淀川はそう言った。
「NPO…ですか」
「そう、それも全国的な社会奉仕団体。通称『日本緑色環境改善連合』。略称はJ-GEIA。CMなんかでたまに聞くわよね」
「…そうですね」
「源流は新左翼にあるらしいけど、当初から平和的な活動ばかりしていて、警察からの監視はされていなかったわ」
「…なるほど」
「で、まぁ最近はちょっとおかしくなってるわね。例えば…副首都構想に反対したり、今年の11月辺りに新設される『防災庁』に反対したり。理由は不明だから無視されてるけど」
なんとも不穏な話だった。




