15.生きた証拠
「おい!お前らッ!」
裏返り気味の大きな声が近くで聞こえた。
その方向を見ると、いつの間にかツリ目の男がいた。
迷彩柄のTシャツに、黒いズボン、突き出た口に、猫背気味の身体。
明らかにこちらへ殺意のこもった目を向けている。
華音は小首を傾げながらそちらを見た。
…多分私も今、同じ状態だろう。
「…何か?」
私達の無表情に気を悪くしたのか、男はグイグイとこちらに向かってきた。
そして私の方に手を伸ばしてきた。
…多分、華音のプリンヘアがちょっと怖いとかそういう理由だろう。
当然、無意識に叩き落とした。
すると、男は怒り出した。
「くそッ!このアマッ!!」
今度は両手で、馬鹿みたいに前のめりになりながらこちらに突っ込んできた。
今まで言っていなかったけれど、私は元々柔道をやっていた。
なので相手が前のめり気味で突っ込んできた時の対処法くらいはわかる。
バッと右手で左腕を、左手で胸倉を掴んで、そのまま、左足を一歩出す。それに右足を追随させ、踏み込んで、間合いがちょうどよくなったところで左足を、相手の左足に思いきり引っかける。そのまま身体を捻り、両腕を右斜め下に振り下ろす。
…私の記憶によれば、これは確か『体落とし』だ。
背負い投げの練習ばかりやってたせいで覚えたのはかなり後半だけど、何気に背負い投げより使いやすい。
男は綺麗に倒れ込んだ。そのまま持ちっぱなしにしていた左腕を活用し、袈裟固めをして抑え込む。
左腕で男の顔をグイグイと締め付けながら、華音に指示を出す。
「何か拘束できるもの持ってきて」
飛び跳ねながらパチパチと拍手していた華音は、その言葉を聞いて、バッとどこかへ行った。
「くそッ…どうなってやがる!」
頬辺りをグリグリと押され、醜く顔が歪んでいる男は目をキョロキョロと動かしながら喚いていた。
「貴方、柔道も知らないの?」
…男だからって驕り過ぎじゃない?
一分ほどしたところで華音がダクトテープを持ってきた。
華音もなかなか…知識があるらしい。
強盗犯なんかは結構ダクトテープを使って人質を拘束したりもするのだ。
男をバッと解放して、そのまま私は顔面を殴った。
…柔道なら禁止だろうが、生憎、今は柔道家じゃない。
「大人しくして」
そしてそのまま立ち上がり、男の腹部を思いきり蹴った。
「大人しくして」
続けて肋骨辺りを思いきり踏んずけた。
…体重はあまり無いが、力のかけ方はわかる。
「う"………」
唐突すぎる展開に男はついていけていないらしい。
…襲ってきたくせに、ダサい。
そのまま華音と協力してダクトテープで弱っている男の四肢を拘束、顎を固定し、ついでに口にもダクトテープを貼った。
それを担ぎあげ、淀川のところへ帰る。
…良い証拠を見つけた。




