12.警備局案件
警察庁に行く途中、私と華音は淀川から、何故人員派遣が必要かについて教えられた。
曰く『第一に、犯罪者の心理は犯罪者が一番わかるであろうとされているから。第二に私たちの捜査の予算負担は全て旅団持ちだから、無料で雇えるため。第三に…実はこれが重要なんだけど、旅団は自衛隊扱いだから、緊急時には「既に自衛隊の部隊が現地にいるのだから、その増援として幾らかの部隊を送ってくれても良いよね」と言い訳しつつ自衛隊の手を借りれる保険みたいな感じになってるから』らしい。
…まぁ、無料労働力である上に、その手の心理にある程度詳しく、最悪使わなくとも持っているだけで保険になる…なんて即戦力がいたら使いたくなるよね。
それが凶悪犯であれ。
警察庁の前ではスーツ姿の男が1人いて、ナンバープレートを確認して、こちらに近寄ってきた。
淀川は窓を開け、男と話し始めた。
「おはようございます。陸上自衛隊第63旅団に出向中の法務省派遣刑務官、淀川です。2名を連れてきました」
「おはようございます。お勤めご苦労様です。淀川さん一人ということは…」
「ええ、模範的なタイプです。ここまで一切任務を『忘れて』いません」
淀川のその言葉を信じられないと言った面持ちで男は受け取り、私達の方を見た。
華音は軽く手を振った。
男は苦笑した。
「今回の結果によっては、また頼んでも?」
「ええ、旅団としても不祥事は起こしたくないですし…構いませんよ」
淀川と男は悪人顔で笑いあっていた。
…本当に刑務官と警察かと疑いたくなる。
「本案は警視庁公安部が取り仕切っているのですが…お2人には警察庁警備局公安課の協力者になってもらいます」
男はランクルのドアを開け、私達に降りるようジェスチャーで促しつつ、そう言った。
「んーなんでなの?」
華音がそう聞く。
すると、淀川が口を開いた。
「元々、旅団雇用の権限は警察庁にある。で、まぁ…呼ぶだけ呼んで、警視庁に渡してしまうと『手柄』が無くなるでしょう?日本全国の警察機関の頂点で指導をやってる警察庁サマは、やっぱり手柄を上げたという実績が大事。そんなところよ」
そして私達が降りた瞬間、パッとタバコを取り出し、吸い始めた。
「じゃあ、車停めてくるから」
男は苦笑した。
「まぁ…淀川さんの言うことは気にしないでください。行きましょうか」
そう言われたので、私と華音は男の後ろに続いた。
並んでみるとガタイの良さがよくわかる。
…こういう人達を顎で使えるのが警察庁なんだ…?




