第二話 顔
この話に特にオチはありません。
ただ、なぜか今でも覚えています。
小学三年生の頃に見た夢の話。
三十一歳になった今でも覚えている。
夢の中は真っ黒だった。
そこに白い顔だけが浮かんでいる。
目は黒かった。
口の中も黒かった。
人の顔だったと思う。
顔はゆっくりこっちに近付いてくる。
何も言わない。
ただ近付いてくる。
そして飲み込まれる。
そこで終わると思った。
でも終わらない。
気が付くとまた遠くに顔がある。
そしてまた近付いてくる。
飲み込まれる。
また最初に戻る。
そんな夢だった。
最初はゆっくりだったと思う。
でもどんどん速くなっていった。
顔が近付いてくる。
飲み込まれる。
戻る。
また近付いてくる。
飲み込まれる。
戻る。
それの繰り返し。
途中から夢だって分かっていた。
だから余計に嫌だった。
夢なんだから起きればいい。
でも起きられない。
終わればいい。
でも終わらない。
怖かった。
腹も立っていた。
なんでかは分からない。
ただ、もうやめてくれと思っていた。
そこで目が覚めた。
夜中だった。
昔から夜中に起きるとテレビをつける癖があった。
その日もそうだった。
テレビをつけた瞬間、骸骨が映った。
上半身だけだったと思う。
レントゲンみたいな感じだった。
かなりはっきり見えた。
でも今思うと、骸骨の方は別に怖くない。
覚えてはいる。
ただ、それだけだ。
その後も白い顔が出てくる夢は見た。
でも同じ夢は見ていない。
あれ一回だけだった。
生活が変わったわけでもない。
何かあったわけでもない。
普通にまた寝たと思う。
それなのに今でも覚えている。
なんでだろうなと思う。
顔が怖かったからかもしれない。
終わらなかったからかもしれない。
夢だと分かっていたのに何もできなかったからかもしれない。
よく分からない。
この話をすると、大体「ふーん」で終わる。
自分も逆の立場ならそう言うと思う。
ただ、もう一回見たいかと言われたら嫌だ。




