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81(エイティーワン)  作者: 雨後乃筍
4章 逃避

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4−10 判決

「主文……」


「被告人を懲役三年とする。刑法第八十八条。外患援助の予備又は陰謀をした罪として」


 傍聴席に、声にならないざわめきが走った。何を言われているのか理解できなかった。


 三年!?


 懲役!?


 なんで!?


 検察側の求刑は八十一条だったのに!


 死刑だったはずなのに!


「理由、被告人は、二〇四二年八月一日、茨城県において……」


 頭の中で憶俊イージュンの声が甦った。


(8と1は、僕のラッキーナンバー……)


「…他国の軍人に騙されて、それと知らずに原子力発電所の事故を起こさせ、本国に対して軍事侵攻、日本に脅威をもたらす可能性を……」


 そんな……。


(ちょっと待ってて。最後にやることが……)


「…他国の工作員と逃亡を図り、証拠隠滅を画策したことは事実であり……」


 そんな……。


(世界のどこにいても81で日本に繋がる……)


「……なお、本件は執行猶予五年……」


 足がガクガクと震え、その場に崩れ落ちていた。


 そんな……。


 憶俊イージュンの言葉が頭をめぐる。


 そんな……。


 目から、涙が溢れていた。


 私、泣いている……?


 なんで……なんで……。


(二人の子供。絶対に可愛い……)


 憶俊イージュン……。


 床についた自分の手に、涙がボタボタと溢れる。


 憶俊イージュン……あなたって、最後まで私を……。


 私を……。


 私だけを……。


「……あは、あははははは」


 笑いたくもないのに、自分の笑い声を止めることができなかった。


 目から溢れる涙を止めることもできず。


 目に入るのは、無機質な床、私の手、そこに降りかかる水滴。


「あ、あはは、ははははは……」


 法廷に、笑い声が木霊していた。


 誰かに脇を支えられるまで、立つこともできずに。


 <つづく>


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