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エルフは筋トレ本を拾った。 →聖書として崇めた。→筋力が上がった。  作者: 青桐
1章 筋肉エルフと少女勇者、時々、学者

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おっさんが現れた。

「すみません、ちょっとお話しを聴かせてもらえませんか?」


メロス達の背後から、男の声が響く。

3人が振り返ると、おっさんがいた。

30代後半くらいの、普通のおっさんだ。

桜は驚いたが、メロスとサマーは平然としている。

サマーはいたずらっぽく、おっさんに笑いかけた。


「あら、覗き見はもうやめたの?」


その言葉で、おっさんは情けないほど困った顔をする。


「そんな意地悪を言わないでくださいよ。

俺だって、したくてしている仕事じゃないんですから」


桜がおっさんを、変質者を見る目で見つめる。そしてメロス後ろに、少し身を隠した。


「ああ、可愛いお嬢さんに誤解されるのは辛いなぁ。

俺は、ジナードって者です。

勇者任命官をやってるんで、失礼ながら、勇者と思しき貴方達をつけさせてもらいました。

よろしければ、お二人の名前を聞かせてくれませんか?」


ジナードは、コメディアンのようにバダバタと動いて取り繕うと、キメ顔を作った。明らかに冴えない三枚目のような雰囲気だ。

桜が呆れ、メロスが警戒したように見つめていると、サマーの冷たい声が響いた。


「茶番はやめてくれる。

2人の名前くらい、もう知っているんでしょう?」


おっさんは頭をガシガシと掻いた。


「いやいや、自己紹介から始まるのが、大人の人間関係ってやつでしょうに。

ええ、ええ。知ってますよ。

調べましたから。

桜さんとメロスさんでしょ。

本当に、サマー先生には敵わないな。

まあ、しょうがないですね。

おい、お前も顔を見せろ」


「はい」


スッと仮面をつけた男が現れた。


「すいませんね。

こいつはシャイな奴で、俺の前でも仮面を取ってくれねぇんですわ。俺も顔を見たことがねぇんです。

あ、こいつの名前は、ツタンっていいます。サマー先生と会うのも初めてでしたよね」


仮面の男が軽く頭を下げる。

おっさんはニコニコと、3人を見ていた。


「それで?」


サマーが、おっさんを鋭く見つめる。


「えっ?」


「そのふざけた擬態をやめなさい。

わざわざ姿を見せた、その理由を聞いているの」


サマーのその言葉に、おっさんは情けない雰囲気を吹き飛ばし、凄みを見せた。


「そいつは、こっちのセリフですよ。

この通路はなんですか?

我々としても、監視だけで終わらせたかったんですよ。だが、エルフの兄さんは勇者としての条件を満たしている。

そのうえ、こんなことをやられると、出て来ざるを得ないでしょう」


ジナードは腰から銃を抜いた。

仮面の男はナイフを抜く。


「あら、新しい通路の発見よ?

貴方達にとっても喜ばしいことでしょ」


サマーがにこやかに笑った。

ジナードは同じくらいにこやかに笑って言葉を返す。


「貴方達がこのまま帰ってくれるなら、なおさら喜ばしいんですがね」


「嫌よ」


「でしょうね。

ならせめて、目的くらい教えてくれませんか?」


ジナードが尋ねる。


「ついてくればわかるわ。

どうせ、そのつもりで姿を見せたんでしょう?」


「やれやれ、つくづく面倒な人だ。

こっちの思惑はお見通しって訳ですか」


桜がサマーの裾を引っ張った。


|(あの、いいんですか? 迷宮)

|(それ以上は言っちゃあダメよ。あのおじさん、すごく耳がいいから。

……心配しなくても大丈夫。

それに、あのおじさんたちでも、弾除けくらいにはなるわ。

未知の場所だし、様子見に使える人材がいるのはいいことよ)


「俺は、貴方よりも若いんですがね。

おじさん呼ばわりは、やめてくれませんか?」


「ね? すごい地獄耳でしょ」


サマーが笑う。

桜はただ驚いている。


「それじゃあ、ジナード、貴方達が先に行ってくれる?」


ジナードはかぶりを振った。


「最初からそのつもりでしたね?」


「なんのことかしら?」


「おい、ツタン。

行くぞ」


「はい」


ジナードとツタンが歩き出した。

それに続いて、3人も歩き出す。


「あっ、言うのを忘れていたけど、この通路、塞がっていないでしょ。

もう私は何もしていないのに。

どう考えても、私たちを歓迎してくれる何かがいるから、気をつけて」


「嬉しくない情報をありがとうございますね。

最初から、何かあるのはわかってますよ。

サマー先生が絡んで起きたことで、いい記憶がないんでね」


ジナードが坂道になっている暗めの通路を、愚痴りながら歩く。

そして、通路を抜けると、だだっ広い広場が現れた。

そしてそこには、迷宮には似つかわしくない光景が広がっている。

ジナードが腰から銃のようなものを抜いて構えた。

仮面の男も、ナイフを抜く。

サマーも桜も身構え、メロスだけは自然体だった。

お読みいただきありがとうございます。

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