メロスたちは最下層へ向かった。
「それじゃあ、行きましょう。
出てくる魔物は、メロス、あなたに全て倒してもらいたいのだけど、お願いできるかしら?
道を開くためにも、魔力はできる限り残して起きたいの」
目の前に現れたゴブリン3匹を見ながら、サマーが言う。
メロスはゴブリンを蹴り飛ばすと、他の2匹を巻き込んで肉塊に変えた。
「これでいいか?」
「ええ、ありがとう」
サマーは満足そうに頷いた。
「私はいいんですか?」
「ええ、魔力を温存しておいて」
「わかりました」
桜は若干不満そうに返事をした。
「あっ、今回は素材を取るとかは考えなくていいわ。まあその状態なら、魔石も粉々になってそうだけどね」
「そうか、ならば無意味に殺す必要はなかったか」
「メロスに任せるわ」
そして、まるで何事もなかったのように、3人は歩き出す。
「しかし気になったのだが、なぜサマー1人では、この迷宮を探索しなかったんだ?」
メロスが気まぐれに質問する。
「そう言われると、サマーさんならすぐにでも調べに行きそうな気がするんですけど」
桜も不思議そうに、サマーの答えを待つ。
「この迷宮、時々不自然なことが起きるよ」
サマーが迷宮の壁に触れながら、答えた。
「不自然?」
「最下層にいた時、前触れなく空間が曲がったの。
最下層にいるはずなのに、まるで私を誘い込むように、退路が塞がって、下への道が開いたわ。
明らかに危険な雰囲気だったから、空間魔法で逃げたけどね」
「そうか、だが意外だな。サマーなら喜んで下に行くイメージだったが 」
メロスが首を傾げた。
「私は冒険者じゃないから、無謀なことはしないわ
命あっての研究よ」
メロスを追いかけ回したとは思えない言葉に、桜が微妙な目を向けた。
「行っておくけど、桜ちゃん。
この世界には、いえ、どの世界にも上には上がいるわ。
私もかなり強い方だけど、勝てない人には勝てないのよ」
サマーが桜に諭すように言った。
「ええ、知ってます。
そこの筋肉エルフには、どんな手段を使ってもかすり傷1つ連れられなかったので」
桜はこの世界に来た直後こそ、『チート来た』と一瞬、調子に乗った。
しかしメロスがいたため、すぐに『ああ、本物のバグキャラだ……』と現実を理解した。
メロスがいたからこそ、桜は1年も訓練に費やしたのだ。
そして、絶対に勝てない相手がいることも理解している。
「そうね。
そういう意味では、桜ちゃんはラッキーだったわね。羨ましいくらい」
サマーが桜に笑いかけた。
そんなやりとりをしている間も、メロスは出てきた狼や角のあるウサギ、羽の生えた猿たちの意識だけを奪っている。
それを横目に見ながら、桜たちは会話を続けた。
「羨ましいって、どういう意味ですか?」
「そんなに深刻な話ではないわ。
ただ、桜ちゃんほど優しい出会いじゃなかっただけ。
私が勝てない相手と出会ったのは、この世界に来て20年経った頃だったわ」
「誰に、出会ったんですか?」
「任命官のナンバー3よ。彼に会った時、死を明確に感じたわ」
桜が唾を飲んで、話の続きを待つ。
それに気がつきながらも、サマーは黙って足を止めた。
「……さて、そろそろ30層目よ。
くだらないお喋りはやめましょう。
私が道を開くから、その間、私を守ってくれるかしら?」
「うむ、任せろ」
メロスが請け負う。
桜は不承不承で頷いた。
「始めるわ、何が出てくるかわからないから注意して」
サマーが壁に手を向ける。
すると壁に穴が空き、下へと続く坂道が現れた。
「メロス、何か気配は感じるかしら?」
サマーが聞く。
すると、メロスは首を振った。
「生き物の気配はないな。
しかし、サマーは空間魔法で把握できるのではないか?」
「残念だけど、空間が歪み過ぎているわ。
だから私にはわからないの。
ところで一応聞くけど、どれくらい深いかまでは、わからないわよね?」
サマーが僅かな期待を込めて、メロスに尋ねた。
「それよりも、大事なことがありそうだぞ」
「何かあったの、メロス?」
「生きていない気配はうじゃうじゃある。
ゾンビとやらが、団体で待っているようだ。
気をつけた方がいいだろう」
それを聞いてサマーが思案する。
「ゾンビ、ね。
桜ちゃん。
私が言った、出れなくなくって彷徨っている冒険者の話は覚えている?」
「ああ、そういえばそんなことを言ってましたね。
……まさか、本当の話なんですか?」
桜が少し顔を青くする。
生き物の解体は、メロスに習ったが、人間のゾンビなんて会いたくなかった。
「それは怪談話よ。だけどここは、能力の高い冒険者が、行方不明者になることの多い迷宮なのよ。
その理由がわかるかもね」
桜はめちゃくちゃ嫌そうな顔をする。
「その推測が当たらないことを願ってます」
「下で待っているのは、生前は名のある者たちだったと思うぞ。
少なくても、我らを追っていた4人組よりは、強い」
メロスが断言した。
「まあ、下りればわかることよ。
行きましょう」
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