少年は目覚める
ゴオオオオ!
黒い影が炎を操る。
民家が業火に包まれる。
人々が逃げ惑う。
炎に身を包まれ川に飛び込む人がいる。
目の前で自分の両肩を掴み、必死に何かを伝えようとしている男がいる。しかし、なにも聞こえない。
「……ア!」微かにそう聞こえた。
チ……!…イ…!チイア!!!
「ハッ!!!」ベッドから勢いよく起き上がる。
チュンチュン、チュン、チュン。窓の外で鳥がさえずる。
「夢…か。」
「チイア!早く支度しなさい!!!今日は大事な日だよ、遅刻する気かい!!!」
下から大声で怒鳴られる。
「やべっ、叔母さんだっ。」チイアはそう呟くと急いで着替え支度をした。
ダダダダダ!!勢いよく階段を急いで降り、テーブルにあったサンドイッチを咥え外に駆け出していく。
「叔母さんいってきます!」
「気を付けるんだよ」
バタン。朝の冷たい空気が肌に触れる。
「いい天気だ…、…ん?何だあれ?」
空を見上げると、黒い影が飛んでいる。
「鳥かな…、でもどこかで見たことあるような…。てかヤバい遅刻するぅ!」
家のある少し高い丘から街を眺め、チイアは街の中心にある城に向かって走り出す。
ここは、東の商業都市ホニンパンジャ。三方が山と海に面しており並大抵の戦力じゃ簡単に落とせない、いわゆる難攻不落の町である。
世界各地でリベリオルドを信仰している勢力が反乱を起こし、平和が崩れてしまったがホニンパンジャにはまだ平和が流れており、五種族が手を取り合い生活をしている。
「やっぱ、街は良いところだなぁ。賑やかでつまらなくならないっ!!!」
チイアは街の大通りの真ん中を走っている。通りの脇には色んな出店があり、悪魔族の男が珍しい鉱石を売っていたり、精霊族の女が他の種族には育てられないハーブや野菜などを売りさばいている。妖怪族の旅芸人がショーをしていたり、天使族の子供たちの音楽隊がそれを珍しそうに見ている。
「おい、チイア!!」
まもなく噴水に差し掛かるとき、誰かがチイアを呼んだ。
「あっ、ヤゴナじゃん!」
声の主はヤゴナという名前のチイアの友達だった。
「今日は珍しく遅刻してないんだなっ。お前が走ってるのを見て俺も遅刻したかと思って焦ったぜ。」
「はあっ!?いつもは無駄な時間を無くすためにギリギリまで寝てるんだよっ!」
「それ寝坊してるってことじゃん。」
「ぬぐっ…こ、細かいことは良いんだよ!ほらっ、急がないとお前も遅刻するぞ!」
「正論言われたからってそんないじけんなよ。」
2人は言葉を交わしながら城に向かう。しかし、
ドゴォォォォォォォン!!!
「!!」
城の方から音がした。砂ぼこりもまっている。
「何が起きたんだ…」
「とにかく行こう。」
2人は城に急いで到着した。そこで2人を待っていたのは、同じ年くらいの少年だった。
「ハアッ、ハアッ、くそっ。みんなここから離れるんだ!今すぐ!!」
少年は必死に叫ぶ。
「なんだぁ、アイツは?急に出てきたくせに逃げろだとぉ?」ヤゴナがそう怪しむ。すると、
「っ!おい、そこのお前っ!ワミカ•チイアだなっ!」
少年とチイアは初対面のはず、なのにどうしてチイアのことを知っているのか。
「俺とどこかで会いましたか…?」
「詳しい説明はあとだ!!」
少年はチイアの肩を掴み必死に伝える。
「この都市はもうすぐ地図から消える!!みんなを連れて今すぐ逃げろ!!!」
「……はぁぁぁ!?」




