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あめめといろはのおなか大冒険~弟が飲み込んだ魔法のアメ玉を取り戻せ!~  作者: しぐまみゅう
第二章 消化管大冒険

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4. 小腸大玉転がし

 私たちは、小腸のピンク色の草原の上を、魔法のアメ玉を勢いよく転がしながら、走り始めた。


「うおぉ、カーブだ!」


「左に曲がるよ!」


 運動神経の悪いひなた兄ちゃんの代わりに、私がアメ玉の舵をとる。


「後ろから『蠕動運動』が来るぞ。転ばないように気を付けろ。わぁ!」


 言ったそばから、ひなた兄ちゃんがまた転んだ。


「ひ、ひなた兄ちゃん、大丈夫?」


 転んだ拍子にひなた兄ちゃんはアメ玉を勢いよく前に押し出した。そしてさらなるうねりが魔法のアメ玉を加速させた。どんどん流され、アメ玉だけ先を走る。


「魔法のアメ玉が先に行っちゃった。あめめ、追いかけなきゃ! ひなた兄ちゃん、私たちは先行くね」


「そうしてくれ。俺もすぐ追いつく」


 私は、ひなた兄ちゃんと違って、かけっこは速い方だ。あめめと一緒に、アメ玉を追いかける。さっきひなた兄ちゃんが、消化管は1本道だと言っていた。でも今アメ玉を見失ったら、また胃の中みたいに食べ物まみれになって、きっと探すのが大変だ。


 走って、走って、アメ玉を追いかける。あめめも羽をバタバタさせて、一生懸命にアメ玉を追いかける。


 やがて魔法のアメ玉がぬかるみに落ちて、そこで止まった。だいぶ水っぽいけど、あれは食べ物の塊かな。色々な消化液と混ざったせいか、茶色くなっている。変なにおいもする。


「くちゃい」


 あめめが鼻をつまんだ。


「この水まさか――」


「うんちかな?」


「さっきヒビも入ったし、このまま置いとくと溶けちゃうから、あめめ、とにかくアメ玉を外に出そう」


「……うん」


 あめめはちょっと嫌そう。私もうんちまみれは嫌だ。恐る恐る2人で、アメ玉を引きずり出そうとしたけど、私たちの力だけでは無理だった。


「いろは、あめめ、大丈夫か?――魔法のアメ玉はこの中か?」


「うん」


 私がうなずくと、また腸が動いて、アメ玉が茶色いぬかるみの中で一回転した。


「ねえねえ、ひなた兄ちゃん。あの茶色いの、もしかしてうんち?」


「ここは『小腸』だ。あれはまだうんちじゃない。食べ物が消化液でドロドロになって、『小腸』の壁から栄養が吸収されようとしている」


「確かに、うんちのにおいとは少し違うかも」


「うんちのにおいは、主に『大腸』にいる菌によって作られたものだからな」


「ふーん。そっか」


「ねえねえ、ひなた、アメ玉をぬかるみから出すのを手伝って。さっきいろはと持ち上げようとしたけど、無理だった」


 あめめが、魔法のアメ玉を指さしながら言った。


「そうだな……。俺といろはでこちら側から押すから、あめめがキャッチするっていうのはどうだ?」


「いい作戦。分かった!」


 あめめが羽をばたつかせながら、ぬかるみの向こう側に行った。


「いろはもいいか?」


「うん」


「じゃあ、押すぞ」


 ひなた兄ちゃんと私は、片足を茶色のぬかるみにつっこみながら、ぬかるみにはまったアメ玉を押し出す。


「いち、に、いち、に」


「いろは、あと一息だ」


「うん、ひなた兄ちゃん! あめめも準備できている?」


「こっちは準備万端!」


「いっせいのせい、パワー!」


 ひなた兄ちゃんの謎のかけ声とともに、魔法のアメ玉はぬかるみから飛び出し、それをあめめがキャッチした。


「あめめ、ナイスキャッチ!」


 アメ玉が無事、ぬかるみから押し出された後、ひなた兄ちゃんと私も、ぬかるみを避けつつ、魔法のアメ玉の方に移動した。


「あめめ、お待たせ!」


「ひなた、もう転ばないように、気を付けてよね」


 あめめがぷっくりほっぺたをふくらませた。


「悪い。悪い。でも俺は小さい頃から、徒競走はクラスでビリ、水泳は最後まで水に顔を付けられなかった。生まれつきそういう人間なんだ」


 ひなた兄ちゃんは悪びれない。むしろ運動神経が悪いことを誇るかのように胸を張った。


「ねえ、あめめ。ひなた兄ちゃんの運動神経がよくなる魔法はないの?」


「そんな都合のいい魔法ない!」


「そっかー、残念」


「よし、また運ぶぞ。ん? 魔法のアメ玉のヒビ割れ、さっきより大きくなっているな。腸壁を勢いよく転がったから、少しずつ消化されているのかも」


 ひなた兄ちゃんに言われて、ぬかるみで茶色くなったアメ玉をよく見ると、さっきの亀裂がより深く大きくなっている。そしてキラキラした粒子が漏れ出していた。


「あめめー! ヒビ割れから、なんかキラキラしたものが出てる」


「え!? いろは、ひなた、キラキラってどこ?」


「ほらここ!」


 あめめが飛んできて、ヒビ割れをのぞき込んだ。そして青ざめた。


「わあ、これ魔法の欠片だ。少しずつだけど、魔法がアメ玉の外に漏れ出している!」


 キラキラとした粉が、私の手を伝って、足元のピンクの絨毛に落ちた。


 絨毛の奥をのぞくと、赤い川が流れている。さっきのキラキラした魔法の粉が、小腸の壁をすり抜け、川に吸い込まれていくのが見えた。光の粉はそのまま赤い川に流されていった。


「あの赤いのは『血管』だ。消化されて小さくなった砂糖は、小腸から血液に取り込まれて、『肝臓』や体中に運ばれるんだ。こうやって食べ物は、俺たちの体の一部になる」


 ひなた兄ちゃんが解説してくれた。


「もしかして、魔法も小腸から吸収されちゃったってこと?」


 ひなた兄ちゃんが一拍置いて答えた。


「――魔法を込めたと言っても砂糖だからな。それは吸収されるんじゃないか」


 確かにひなた兄ちゃんの言う通りかも知れない。


「――ねえねえ、あめめ。はるとは人間だから、体の中で魔法があふれ出すと危ないんだよね」


「う、うん」


「さっき、吸収されちゃったけど」


 あめめがますます青ざめる。


「とにかく急いで、ここから出そう」


「そうだね」


 私たちは作戦を立て直して、大玉転がしを再開した。


 まず、あめめに先に行ってもらい、食べ物のぬかるみを魔法でどかしてもらう。相変わらず、ひなた兄ちゃんはとろくて、何度も何度も転んだけど、アメ玉だけ先に行ってしまった時は、前を飛ぶあめめがアメ玉を止めてくれた。役割分担のおかげで、すいすいとアメ玉を運ぶことができた。


 そして、ついにさっきの『幽門』みたいな出口が見えた。


「あれが小腸と大腸の境目、『回盲部』だ! もう少しで、大腸だ!」


 ひなた兄ちゃんが叫んだ。


「よし、みんなで持ち上げて、あの穴から出すぞ」


「いっせいのせい!」


 アメ玉を『回盲部』に押し当てて、ついに大腸に押し出した。それから1人ずつ、『回盲部』トンネルを通って、大腸に降り立った。

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