6. 精霊試験
夏休みの間、あめめはおっちょこちょいなのに、一枚もお皿を割らずに皿を洗った。ママが「とっても助かったわ、ありがとう」って言っていた。
パパとひなた兄ちゃんのランニングも上手くいった。パパはダイエットに成功して、3キログラム痩せた。ひなた兄ちゃんは、体力がついて、初めて卓球の大会で一勝を挙げた。どちらも快挙だ。
はるとも、毎日あめめとマカロに遊んでもらってニコニコだ。昔は犬猿の仲だったのに、あめめとマカロも少し仲良くなっている。
「今日はお菓子の精霊王にこの夏の成果を報告してくる! いろはもついてきてくれる?」
あめめが少し申し訳なさそうに言った。
「おっけー。あめめが頑張った証人としてついていくよ」
「やったー!」
あめめは、『かもめ洋菓子店』の塩クッキーと塩キャラメルを巾着袋に入れて担いだ。
「2人とも頑張ってね」
ママもあめめを励ましてくれた。
「うん! じゃあ行くよ、いろは」
また、あめめの後を追って、リビングの空間に開いた穴に飛び込む。羽をバタバタさせて、お菓子のお城までまっしぐらだ。門の前のチョコレートの衛兵さんに声をかけて、精霊王の謁見の間に通された。
「王様! あめめ、いろはたち家族を笑顔にして、『かもめ洋菓子店』にアメ玉を置いてきました」
王様に謁見したあめめが開口一番報告した。
「うむ」
「あめめは、この夏私たち家族のお手伝いを頑張りました。ママの代わりに皿洗いをして、パパとひなた兄ちゃんのランニングに付き合って、弟のはるとと遊んで、私の夏休みの宿題も手伝ってくれました」
私もあめめが頑張ったことを報告した。
「『かもめ洋菓子店』はまだオープンしたばかりのお店ですが、ママのお友達のパティシエさんが毎日自分で厨房に立って、こだわりのレシピを用い、丁寧な衛生管理のもとでお菓子を作っています。愛のあるパティシエだと思います」
あめめが、持っていた巾着袋からかもめの形の塩クッキーとキャラメルを取り出した。
「王様、ぜひ召し上がってください」
王様は、あめめが取り出したクッキーを一口食べた。口に含んだ瞬間に笑みがこぼれた。
「ほんのりとした塩味、それと小麦粉とバターの風味。すばらしい味じゃ」
次に王様がキャラメルを口に運んだ。
「上質な生クリームと砂糖が、時間をかけて練り上げられている。あめめ、この者が道を外さぬよう、アメ玉を置いた責任をしかと果たすのじゃぞ」
「はい」
「試験は合格じゃ。お前もこれで一人前のお菓子の精霊。人間界でこれからもお菓子が愛されるように、精進しなさい」
「王様、ありがとうございます! いろは、ありがとう。やったー」
「よかった! これであめめと離れ離れにならなくて済む!」
私は、あめめを思いっきり抱きしめた。
「では、あめめ。これを」
王様があめめに金色のキャンディーのバッジを渡した。
「あめめ、何それ?」
「これは一人前のキャンディーの精霊の証だよ、いろは」
あめめがにっこりしながら、あめめには少し大きなバッジを胸に付けた。バッジがきんきらきんに輝いた。
「あめめよ、お前は人の本質を見抜くのが上手い。分かっておると思うが、マカロも悪い子ではない。マカロが一人前の精霊になれるように、先輩の精霊として導き、手助けするのだぞ」
「王様! 分かりました」
「よろしい」
王様に深々と頭を下げてお礼をすると、私たちは王城をあとにした。




