5. 塩キャラメルは幸せの味
テレビではちょうど早乙女さんのニュースをやっていた。それをマカロがじっと見つめていた。店の前で早乙女さん自身が取材に答え、お店が急に拡大して、管理が行き届いていなかったと、丁寧に頭を下げて謝っていた。
「そういえばマカロ、早乙女さんはどうなりそう?」
「今回の件で、保健所の人が調査に来たけど、店のケーキが食中毒の原因だとは特定されなかったみたい。ただ、保健所からいくつか指導が入ったから、テレビの仕事や雑誌のインタビューが流れちゃって――今まで通りテレビに出るのは難しいらしいの」
「せっかくノリがよくて、芸人みたいに面白かったのに、テレビで見られないのは残念だな」
ひなた兄ちゃんがぼそっと言った。
「でもね、でもね。昨日も夜遅くまで、試作品のケーキを作ってた。もう一度、お菓子作りに専念したいって張り切ってるの」
「へえ、『パティスリー・サオトメ』の新作のケーキも食べてみたいな」
ひなた兄ちゃんが言った。ひなた兄ちゃんが通っている医大でも流行っているんだそう。
「よかったね、マカロ」
「辞めてしまった店員さんの代わりに、毎日自分でお店に出て、食材の管理もしているわ。早乙女さんもつらい中、頑張っているから、わたくしも精一杯サポートしようと思う」
愛情を込めるって、かわいくおいしく作るだけじゃない。食べる人が病気にならないようにすることも、まごころなんだと、私は思った。
「そうだね。次はお菓子の精霊王が合格にしてくれるといいね。そういえば、あめめの試験は大丈夫そうなの?」
「ふふーん。あめめの試験はマカロと違って、完璧だよ。ママのお友達のお店『かもめ洋菓子店』に新しい魔法のアメ玉を置いてきたから」
あめめが、この前視察に行った『かもめ洋菓子店』のことを色々教えてくれた。海をテーマにお菓子を作っていて、塩クッキー以外に、塩キャラメルもおいしいらしい。
「店長さんが毎日仕入れから在庫の管理までちゃんとチェックして、味や品質が落ちないように気を付けているんだよ」
「そういえば、ママが最近は行列ができているって喜んでた。あめめのアメ玉のおかげかな?」
「ううん。塩クッキーがおいしいからだよ」
「じゃあ、私たち家族を全員笑顔にできればきっと合格だね」
「でも、パパとひなたがなあ。今日も疲れたって途中でへばってたし」
「仕方ないだろう。俺は運動嫌いだってあれだけ言っているのに」
「でも、あめめ、パパは体重が減ったって喜んでたよ。お酒減らしたおかげかも知れないけど」
「いろは、ほんと~!?」
あめめがうれしそうに叫ぶ。そこにママがおやつを持ってきた。噂をすれば『かもめ洋菓子店』の塩キャラメルだ。
「いろはも、あめめも頑張っているわね! マカロもはるとと遊んでくれて、ありがとう。おやつよ」
「わーい! ママありがとう」
キャラメルを頬張ると、優しい甘さが口いっぱいに広がって、みんなが笑顔になった。
「おいしいー!」
「キャラメルなら、食べかすをポスターの上にこぼさないでしょ?」
「ママ、賢い。よし! あめめ、色塗り頑張ろう!」
「おー!」
一つ一つ、臓器のイラストを描いて、ひなた兄ちゃんに確認しながらその説明も考えた。
それぞれの臓器の説明に加えて、誤飲や食中毒の説明も付けた。毎日少しずつ書いて、なんとかひなた兄ちゃんが卓球部の合宿に行く前に完成した。
「あめめのおかげで夏休みの宿題が一つ終わったよ! 本当にありがとう」
満面の笑みを浮かべて、あめめにお礼を言うと、あめめもうれしそうに笑った。
「やったー! いろははクリアだ」




