2. 小さくなっちゃった
「あめめ、それを早く言え」
「だって、だって――」
あめめの目に涙が浮かぶ。
「うわーん」
あめめが泣いちゃった。でも、泣いている場合ではない。私はお姉ちゃんとして、はるとを助けなきゃ。
「ひなた兄ちゃん、急いではるとのおなかから、魔法のアメ玉を取り出さないと!」
「ああ、そうだな」
「おねえたん、おにいたん、おしろできた」
私たちの心配をよそに、はるとはご機嫌に積み木を積み上げていた。
「それであめめ、はるとがアメ玉を飲み込んだのはいつだ?」
ひなた兄ちゃんが努めて冷静に、あめめに聞いた。
「うぇーん。ひくっ。ついさっき。何かあってもすぐには魔法がこぼれないように、守りの魔法がかかっているから、まだ溶けてないと思う」
「いろは、保険証はどこだ? 病院に連れて行こう」
「病院?!」
「胃の中をカメラで探して、取ってもらうんだ。うちの医大に電話してみる」
「ひなた……。そ、それは難しいと思う」
あめめがシュンとしながら言った。
「どうして?」
「魔法のアメ玉は、あめめと一緒で大人には見えないの。だから病院のお医者さんには見えないと思う」
普通の大人たちには精霊の姿が見えない。でもうちの家族は、パパも、ママも、ひなた兄ちゃんも、あめめのことが見える。あめめ曰く、心が清らかで優しいかららしい。
「じゃあ、おしりから出てくるのを待つか。口から入った食べ物が体の外に出てくるまで1日以上かかるけど」
「……丸1日!? そんなにおなかの中にいたら溶けちゃうかも」
「じゃあ、俺たちはどうすればいいんだ?」
ひなた兄ちゃんが頭を抱えた。さすがに自分が通っている医大の先生たちに、見えないアメ玉を取ってきてくださいとは頼めないもんな。
あめめはもうパニックだ。「どうしよう」「どうしよう」と、ずっと言っている。
「ひなた兄ちゃん、はるとに吐き出させることはできないかな? のどの奥って押すと気持ち悪くなるよね」
「いや、いろはそれは絶対にだめだ。普通のアメ玉より大きいんだろう? 吐き出す時につまるかも知れない。すごく危険だ」
「そっか。まどろっこしいな」
そして、私は何の気なしに言った。
「――自分たちが小さくなって、おなかの中に入れば、簡単に取り出すことができるのに」
あめめが急にひらめいたという顔をした。
「できるよ! 小さくなればいいんでしょう?」
「えっ――?」
「あめめは、キャンディーの精霊。見習いでも魔法は得意なんだよ!」
急にあめめが胸を張る。とても嫌な予感がする。
「ねえ、あめめ。その魔法、本当に大丈夫? 元の大きさに戻れないとかない?」
「絶対に大丈夫! あめめ、魔法には自信があるんだ」
確かに、あめめは色々な魔法が使える。
――お茶を甘くする魔法
――何でもキャンディーに変えちゃう魔法
――そして綿あめの雲で空を飛ぶ魔法
だが、その使いどころがものすごく下手くそだ。
「つまり小さくなって、胃の中にあるアメ玉を回収するってこと……?」
ひなた兄ちゃんが極めて心配そうに聞いた。
「そう!」
「そんな作戦、上手くいくのかな?」
私は首をひねる。
「いや、もうちょっと現実的な案を考えよう」
ひなた兄ちゃんが頭を抱えていると、あめめが叫んだ。
「とにかく時間がないから、やってみようよ! ひなた! いろは! みーんなまとめて小さく小さくなあれ!」
「ちょっと待って、あめめ!」
あめめが手に持った杖を一振りすると、私たちは黄色の光に包まれた。
――ポンっ!
私たちはあめめの魔法で、あっという間に10円玉サイズになった。




