2. 塩クッキー
「……塩クッキーですか?」
マカロは本当においしいのかなって顔で、ママが渡したクッキーを受け取った。
マカロは『パティスリー・サオトメ』にアメ玉を置いてくるぐらいだから、きっとかわいくてキラキラしたお菓子が好きなんだろうな。マカロはとってもおしゃれさん。ワンピースにも、リボンがたくさんついている。ためらいながら一口塩クッキーを食べた。そして、目を丸くした。
「これ、とってもおいしいです」
私も一枚つまんで口に入れた。優しい味がする。ママが出してくれた紅茶に、よく合っておいしい。
「ママ、このクッキー、ついたくさん食べちゃうね」
「こら! いろは、食べ過ぎよ。もうすぐ夕飯なのに」
「あ!! いろはずるい! あめめも食べる!」
起きてきたあめめが、勢いよくクッキーに飛びついた。口の周りをクッキーだらけにして満足そう。
「あ! あめめ、起きたなら、羽を元に戻して」
「ああ、ごめん。忘れてた! 元に戻れ~!」
まったく、あめめは忘れっぽいんだから。あめめといつも通り笑っていると、マカロが次のクッキーをつかんだ。
「チョコレートもフルーツものっていないのに。……どうしてこんなにおいしいの?」
「このお店はママのお友達が出したお店だから、もちろんひいき目もあるんだけど、食材選びからレシピまで本当にこだわっているの。何度も何度も試行錯誤して、みんなに喜んでもらえるレシピにたどり着いたらしいわ」
「マカロ、お菓子は見た目じゃないってことだよ」
あめめが分かったような口を利く。
「確かに、お菓子をSNSで流行らせるためには、『パティスリー・サオトメ』みたいに、見た目のかわいさも大事だと思う。でも人に長く愛されるお菓子って、こういう一見目立たないけど、こだわって作られたお菓子だとママは思うな」
ひなた兄ちゃんも一枚頬張ると笑顔になった。そう言われてみると、何の変哲もないように見える塩クッキーが特別なものに見えてきた。
「そういえば早乙女さんも、昔は愛情を込めてお菓子を作っていたって、精霊王が言っていました」
「早乙女さん、最近テレビに出たり、本を出したり大忙しだったから、少し本業がおざなりだったのかもね。店を続けるには、もちろん知名度やお金も必要だけど、初心を忘れてはだめね」
「早乙女さんに原点を思い出してもらえるように、わたくしも頑張ります!」
「ふふふ。マカロ、その意気よ」
「ねえねえ、ママ」
あめめがママのブラウスの袖を引っ張った。
「どうしたの? あめめ」
「今度、あめめを塩クッキーのお店に連れて行って。そのパティシエさんにアメ玉を渡していいか、この目で確認したい」
「あ、確かにいいかも。私は喜んで彼女を推薦するわ。あめめもマカロも精霊試験にちゃんと合格して、一人前の精霊さんになれるといいわね」
ママがにっこりと笑った。




