1. おうちに戻ってきた
目が覚めると、みんなリビングに並んで寝ていた。
「いろは、目が覚めた? 体調は大丈夫?」
「うん、平気」
「いきなりまたリビングに大穴が開いて、あなたたちが飛ばされてきたの。ひなたも目が覚めたのかしら?」
背中にはまだ羽が生えたままだ。隣で寝ていたひなた兄ちゃんが、むくりと起き上がった。
「少しくらくらするけど、大丈夫。おばさん、はるとの病院はどうだった?」
はるとは、積み木遊びに飽きたのか、ロボット同士を戦わせている。あれはゴーゴーライダーだ。
「小児科に行ったけど、ぴんぴんしているし、アメ玉も体の外に出ているなら、問題ないでしょうと言われたわ。念のため体調が悪そうだったら、また受診するようにって言われたわ」
「よかったな、はると」
ひなた兄ちゃんが、はるとの頭をなでた。
「びょういんきらい、おいしゃさんはもっときらい」
はるとはふくれっ面だ。
「ひなた兄ちゃん、すっかりはるとに嫌われているね」
「大丈夫! 俺ははるとに好かれるような医者になるから」
ひなた兄ちゃんが、ウィンクをした。あめめとマカロはまだ寝ている。ママが花柄のタオルのハンカチをかけてあげたのだろう。気持ちよさそうだ。ママが少し心配そうに聞いた。
「そういえば、あめめは大丈夫だった?」
「みんなで謝ったから、あめめはなんとか許してもらえたよ。魔法無しで私たち家族を笑顔にするっていうのが条件だけど」
「まあ! 私はあめめがはるとと遊んでくれるだけで、笑顔になっちゃうけど、家族全員の望みをかなえるのは難しいかもね。そういえば、このもう1人の精霊さんはどなた?」
「その子はマカロ。多分……あめめのお友達だよ。『パティスリー・サオトメ』に魔法のアメ玉を置いてきたんだけど、どうもあの店は衛生管理が杜撰らしくて、あめめと一緒に試験をやり直すことになったんだ」
「あら、あめめのお友達なら、仲良くしないとね」
「はるとの魔法は、しばらく残るらしくて、あめめと一緒に、その間はるとの面倒を見てくれるんだって。あとマカロは、早乙女さんがもう一度愛情を込めてお菓子を作れるようになるまで手伝うんだよ」
「――ここはどこ?」
私たちが話をしていると、マカロも起きてきた。マカロも突然人間界に飛ばされて、まだ状況を十分に飲み込めていないらしい。
「マカロ、こんにちは。我が家へようこそ。私はいろは」
とりあえず、挨拶してみる。さっきの感じだと、マカロはあめめと違って、少しプライドが高そうな精霊さんだけど大丈夫かな? 仲良くなれるかな?
「――わたくし、マカロと言います」
マカロがママと私にペコリと頭を下げた。意外と礼儀正しい。
「こんにちは、いろはのママよ」
「あなたは大人なのに、わたくしのことが見えるの?」
マカロが不思議そうにママを見た。
「どうしてかよく分からないけど、うちの家族はあなたたちのことが見えるわ。マカロはマカロンの精霊さんかしら? その髪飾りかわいいわね」
「マカロンの精霊見習いです。ありがとうございます。この髪飾り、気に入っているんです」
マカロンの髪飾りを指さして、マカロが少しうれしそうに言った。
「塩クッキーあるけど食べる? かしこまらなくていいわよ」




