4. あめめは家族
お風呂から上がると、リビングにはカモメ型のクッキーと紅茶が用意されていた。
「このカモメの形のクッキー、サクサクでおいしいね! 塩味のクッキーって初めて食べた」
「塩クッキーらしいわよ。甘みが引き立つわよね」
「この前、商店街にできたお店?」
「そう。ママのお友達がついに自分の店をオープンさせたの! 『かもめ洋菓子店』っていうのよ。子どもの頃からお菓子屋さんになりたいって言っていたから、ママもうれしい」
「何枚でも食べられるね。あめめも、一枚どうぞ」
「ありがとう、いろは」
あめめは、泣きながら塩クッキーを頬張った。
「さっき、ひなた君から大体の話は聞いたわ。ひなた君にも今日保護者会だって言っていたんだけど、すっかり忘れてたみたい。だから、あめめ1人にはるとの面倒を見させて、ごめんなさいね」
「うん」
「でもアメ玉みたいな大きさのものは、はるとが簡単に口に入れちゃうから、近くに置いちゃだめなのよ」
「気を付ける」
あめめが申し訳なさそうに頭を下げた。
「あと、いろはもこういうことがあったら、自分たちで解決しようとしないで、必ずママに連絡してね。今回のは不可抗力みたいだけど」
「分かっている。すぐにママにメッセージする」
「これから、ママははるとを近くの小児科で診てもらってくるわ」
ママがはるとの方を見ながら言った。
「ママ~! おうちできた!」
ん? はるとの周りがキラキラしている。それにほんの少しだけはるとが浮き上がっている。
「たいへん! はるとが浮いている! もしかして、体の中で魔法のアメ玉が溶けたから、はるとも魔法が使えるようになったのかな?」
「ええっ! はるとが魔法を?」
「そうだ、ママ! 私たちもお菓子の国に行ってくる」
「お菓子の国?」
「あめめのふるさとだよ。お菓子の精霊王に、はるとの魔法のことも聞いてくる。あと、さっきのアメ玉は、精霊見習いの試験の道具だったんだって。試験で失格になると、あめめはもう人間の世界に来られなくなっちゃうの。だから精霊王に『あめめにもう一回チャンスをください』ってお願いしなくちゃいけない」
「そうね、はるとの体調は今のところ大丈夫そうだけど、魔法でいたずらされたら、ママも困っちゃう。それにあめめもうちの大事な家族だから、いなくなったらさみしいわ」
「ねえ、ママ。あめめもこの家にいてもいいの?」
「もちろんよ!」
「ママ、ありがとう!」
あめめがうれしそうに何度も頭を下げた。
「じゃあ、あめめと魔法のことは、いろはたちに任せたわよ」
「うん! 任せて!」
私たちは、ひなた兄ちゃんがお風呂から上がるのを待って、お菓子の国に向かうことにした。




